2025 年 24 巻 4 号 p. 224-228
遺伝性大腸癌では,遺伝学的検査によって診断が確定される疾患と,臨床基準によって診断が可能な疾患がある.遺伝学的検査は,腫瘍の発生の有無にかかわらず,本人の遺伝性腫瘍症候群が遺伝学的に確定でき,本人の定期的な経過観察に役立てることができるとともに,未発症血縁者における適切な診断・医学的管理に役立てることができる. 平成18(2006)年度診療報酬改定にてマイクロサテライト不安定性検査が保険収載され,遺伝性大腸癌の一つであるLynch症候群のスクリーニング検査として利用されてきた.近年では薬物治療選択を目的とした検査の適用に拡大されている.国内では遺伝性大腸癌の遺伝学的検査は保険収載されていないが,特定の遺伝性大腸癌の遺伝学的検査に加えて,遺伝性腫瘍症候群に対する多遺伝子パネル検査(MGPT)を提供する検査会社も増えてきている.MGPTを含む従来の遺伝学的検査では診断できない遺伝性腫瘍症候群があることが研究的解析により報告されており,偽陰性や病的意義不明バリアント等の課題には留意が必要である.