遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
9年間で5重癌(子宮体癌,卵巣癌,腎癌,大腸癌,乳癌)を認めた1例
姜真 以乃岡田 真由美梅村 周平菅沼 寛明冨田 斐月香小梶 正人古井 達人古井 憲作山田 友梨花諸井 條太郎甲木 聡梅村 康太
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 25 巻 1 号 p. 16-19

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抄録

 同一人物に2つ以上のがんが同時性または異時性に発生するものを多重癌と定義し,まれであるが報告数は増加している.今回,子宮体癌・卵巣癌の重複癌の経過観察中に,腎癌,大腸癌,乳癌を発症した症例を経験した.症例は75歳女性で,64歳時に子宮体癌の診断で手術を行い,術後病理検査で子宮体癌と卵巣癌の重複癌と診断された.初回手術から約5年後に腎臓癌,7年後に大腸癌,8年後に乳癌と診断された.遺伝性腫瘍症候群の可能性を考慮し,Lynch症候群の補助診断目的にミスマッチ修復蛋白質の免疫染色検査を,遺伝性乳癌卵巣癌診断目的に生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子検査を行ったがどちらも陰性であった.遺伝性腫瘍多遺伝子パネル検査を提案したが費用の面で施行できなかった.多重癌患者では遺伝性腫瘍症候群の原因遺伝子に生殖細胞系列病的バリアントを検出する割合が高く,臨床遺伝部門が中心となり横断的な診療を意識する必要がある.

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© 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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