四国山地南部に位置する森林流域で降雨流出時のNO3--N累加比負荷量の季節変動特性について検討した。高知県梼原町のモミ・ツガを主とする天然林に試験流域を設定した。2001?2005年の17降雨イベントで観測を行った。累加比流量と累加比負荷量の回帰直線(対数変換後)の切片に7-9月と4-6月で有意な違い(p<0.01)が認められた。流量加重平均濃度は概ね夏に高く,春に低い傾向が,表層土壌のNO3--N現存量は8月に多く,冬や春に少ない傾向が示された。春は林木による窒素吸収や梅雨による溶脱により現存量は少なく,夏は高温による硝化の活発化で現存量が多くなると考えられ,現存量が多い時は出水時のNO3--N濃度も高くなり,同程度の累加比流量の場合,累加比負荷量が多くなると推定される。以上より,本流域のNO3--N累加比負荷量はNO3--N現存量の季節変動にも影響されていることが示唆された。