水文・水資源学会研究発表会要旨集
第19回(2006年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
選択された号の論文の149件中1~50を表示しています
口頭発表
降水(8月29日,8:40 - 9:55)
  • 佐久間 良一, 田中 賢治, 相馬 一義, 池淵 周一
    セッションID: 1
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    将来の気候変動により起こる各地での水循環変動に対する対策をとるために、気候モデルを用いて予測しなければならない。しかし、モデルの再現精度には時間的・空間的な不確実性があるため、モデルのバイアス補正を常に一定の条件では行えないのが現状である。そこで本研究では、領域気象モデルによって再現された過去の降水分布を用い、その再現精度の不確実性が何によって生じるのかを、1イベント降水量に注目することにより検討した。まず、不確実性を表す指標の大きい地点を全国から30地点を選び、それぞれについてAMeDASとモデルの1イベント降水量を比較した。次に、不確実性の挙動をさらに詳しく検討するために、1イベント降水量を、降水の原因と考えられる降水プロセスごとに分類して比較した。その結果、全体的に台風による降水をモデルは再現しにくいことや、各地点によって再現しやすい降水プロセスやしにくい降水プロセスがあることがわかった。
  • 里村 大樹, 井芹 慶彦, 神野 健二, 河村 明
    セッションID: 2
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     近年の気候変動および異常気象の発生は,将来の水資源確保という観点からみて不安定な要因として懸念されている.これに伴い気候変動の定量的解析・予測及び水資源への影響評価は重要な課題となっている. 本研究では自己組織化マップ(SOM)を用いて4つの気候変動指標 (NPI,PDOI,SOI,DMI)の分類と,福岡の降水量・気温を加えた6変数での分類を行った.4指標のみで分類した場合はSOMにより生成されたマップ上に特徴的なパターンが現れており,各指標の分類精度も比較的良かった.6変数で分類を行ったマップ上では4指標のみで分類したときと比べると分類精度がやや下がり,性質がそれほど近くないデータが同グループに分類されていることもあった.しかし,特徴的なパターンもいくらか現れており特に,PDOIが小さくNPI,SOI,DMIが大きいというパターンにあるときは,福岡市月降水量は少雨傾向となっていた.
  • 脇水 健次, 真木 太一, 鈴木 義則, 吉越 恆, 西山 浩司, 遠峰 菊郎, 太田 友美, 児玉 なみ希, 福田 矩彦
    セッションID: 3
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     北部九州では、2005年夏から冬にかけて少雨傾向が続き、福岡市では、2005年の年降水量が1020mm(平年比0.64)で、観測史上3番目に少なかった。 そこで、2006年2月4日に液体炭酸を用いた人工降雨実験を長崎県壱岐島の東側海上で2回行った。この日は、冬型の気圧配置で、北北西の風が吹いていた。雲の厚さは、1000mと非常に薄く、自然でも人工でも降水現象は起こらないと考えられたが、液体炭酸法で降水現象を起こすことに成功した。
  • 森山 聡之, 疋田 誠
    セッションID: 4
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    筆者らは2003年7月に発生した熊本県の水俣土石流以来、土砂災害に対応した次世代型防災情報システムを構築中である1).2005年の9月5日に九州地方を通過した台風14号(以下T0514)は、鹿児島県と宮崎県に多くの被害をもたらした.台風時にはこのシステムは本稼働状態ではなかったが、レーダ雨量データは蓄積されていた.このデータを用いてT0514の豪雨により引き起こされた土石流の発生予測に有効であったかどうか検証を行い、土砂災害危険度マップが妥当な結果を示している
  • 深見 和彦, 今村 仁紀, 萩野 睦
    セッションID: 5
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     本研究では、2005年9月の台風14号豪雨について、流域で既往最大をはるかに超える連続降雨を記録した大淀川流域を対象として、DAD(Depth-Area-Duration:降雨強度〓雨域面積〓降雨継続時間)特性の解明を試みた。解析結果から読み取れる主要な点は以下の通り。_丸1_長時間雨量において最も極値的であり、その長時間雨量は桑原の想定した日本最大規模に相当していた。_丸2_桑原が示した日本最大規模に最も近いという意味での「極値的な」降雨は、流域中流部から北部近隣地帯に分布していた。_丸3_1?3時間では、東海豪雨、新潟・福井豪雨とほぼ同じレベルのDA関係であるが、12時間超では可能最大規模に近いDA関係となっている。但し、今回地上雨量ではなくレーダ雨量を用いていることに注意が必要である。本研究によりレーダ雨量計データのDAD解析への有効性を確認できたが、さらに多くの事例研究を積み重ねる必要がある。
  • 木口 雅司, 宮崎 真, 金 元植, 鼎 信次郎, 沖 大幹, 松本 淳, 里村 雄彦
    セッションID: 6
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    本研究では,タイ内陸部を中心にプレモンスーン期の陸面熱フラックスを,NCEP/NCAR客観再解析による風・水蒸気場・および潜熱・顕熱,降水量,熱フラックスの観測データ(Tak)を用いて解析した.モンスーンオンセット前の3月中旬からすでに潜熱フラックスが卓越し続けており陸面が湿っている.また2月中旬から潜熱フラックスが顕熱フラックスを上回る状態が時々現れる.潜熱フラックスが卓越している時期の合成図解析によると,中国南部からタイ内陸部,カンボジアにかけて潜熱フラックスが顕熱フラックスより大きい地域が広がり,インドシナ半島内陸部を中心とする上層のトラフが解析される.さらに可降水量がタイ内陸部を中心に増加しており,陸面からの潜熱フラックスによる大気の湿潤化への寄与が示唆された.インドやミャンマー内陸部ではモンスーンが開始するまで潜熱フラックスは増加せず,タイ内陸部と特性が異なる.
蒸発散(8月29日,10:05 - 11:20)
  • 手計 太一, 平野 文昭, 加藤 拓磨, 山田 正
    セッションID: 7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    近年,水文水循環過程におけるパン蒸発計蒸発量の重要性が指摘されている(Peterson et al., 1995).世界各地におけるパン蒸発計蒸発量の長期データを利用した統計解析によって,同量が経年的に減少している地域があると報告されている.しかし,その要因のメカニズムは未だ明らかになっていなく,そもそも,パン蒸発計蒸発量の物理的な意味もはっきりとわかっていない.このような状況を鑑み,どのような気候因子がパン蒸発計蒸発量に影響を及ぼしているのかを明らかにするため,日本国内の気象データと既存の実験式,熱収支式を基に検討を行った.その結果,特に水温の影響は無視できない物理量であることを明らかにした.
  • 齊藤 誠, 浅沼 順, 宮田 明
    セッションID: 8
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    不安定条件下における大気〓植生間の物質交換において,数時間に渡る大規模スケールの変動に起因する熱・水蒸気輸送が及ぼす影響の有無,その領域での物理機構を理解するため,つくば市郊外の水稲単作田において顕熱と水蒸気の地表面フラックス観測を行った.地表面フラックスを2時間に渡って平均化するとメソスケール変動の影響を取り込むことが可能となり,メソスケールにおいても顕熱・水蒸気の鉛直輸送が確認された.メソスケールでのボーエン比は乱流スケールに比べて顕著に大きく,水田地帯よりも広域なスケールの地表面状態に起因する特性を示した.また,メソスケールでの顕熱・水蒸気フラックスは風向に強く依存した特性を示し,変動は風向によって明瞭に異なる傾向を示した.このため,観測されたメソスケール変動は実現象であると思われ,そこでの物質輸送が大気〓植生間の物質交換過程に影響を及ぼしているものと考えられる.
  • 山崎 剛, 加藤 京子, 桑田 孝, 中井 太郎, 朴 昊澤, 太田 岳史
    セッションID: 9
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    北方林および中緯度温帯林における現地観測の知見を基に,陸面モデルを用いて水・エネルギー循環に関して考察した.個葉スケールでのコンダクタンス測定より,Jarvis型のパラメータを決定した.各サイトのデータのみを用いた「見かけ」の応答特性と,全サイトのデータをプールして決めた1つのパラメータセットによって水・エネルギーフラックスの計算をしたところ,両者とも季節変化を再現できた.これより潜在的パラメータで広い範囲の森林のフラックス推定ができる可能性が示唆された.なぜ,ことなるパラメータセットで同様の推定が可能なのかを調べるため,一部のパラメータのみ変える実験をした.その結果,潜在的パラメータでは最大コンダクタンスと土壌水分抑制のパラメータの効果が相殺していることがわかった.
  • 山口 弘誠, 山下 隆男
    セッションID: 10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    台風発達におけるエネルギー供給源は,主に海面からの潜熱輸送による.その潜熱を 適切に推定することは,台風によってもたらされる降水量の正確な推定につながる. 一方で,海面からの潜熱輸送量は海面水温によって大きく変化する.そこで本研究で は,台風通過時の海面水温低下現象に着目し,海面水温の時間変化について検討し た.数値計算の結果,台風進路右側での水温低下が大きく計算された.その理由とし て,乱流混合の寄与が大きく,一方で,台風進路後方での湧昇流は台風通過後の水温 低下を時間的に持続させる働きがあると考えた.また,将来的には,台風の大気シミ ュレーションにおける海面からの潜熱フラックスの低下によって,台風発達の抑制効 果を考慮することで,降水量の正確な推定につながることを見据えている.
  • 浅沼 順
    セッションID: 11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    大口径シンチロメータを用いた広域顕熱フラックスの計測を報告する。2003年夏、モンゴル国ヘルレン川流域において行われた、RAISE(Raingelands Atmosphere-HydrosphereInteraction Study Experiment in NortheasternAsia)プロジェクト集中観測の一環として、大口径シンチロメータによる顕熱フラックス観測が行われた。平坦な草原上において、シンチロメータのパス長さを1100,1500,3000,4500mの4通りに変えて、計測を行った。渦相関法によって観測された顕熱フラックスとの比較では、パス長4500m以外はおおむね妥当な値が得られた。詳細な解析の結果、シンチロメータによるフラックス計測値は、そのフラックスソースエリア内の地表面被覆を反映したフラックス値であることが明らかになった。
  • 大上 博基, 賀 斌, 久米 崇, 高瀬 恵次
    セッションID: 12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    黄河流域における高度な水利用・管理の実現を最終目的として,河套潅区の蒸発散量を算定した.まず,潅漑畑地と耕作放棄地(非潅漑裸地)で微気象観測を行い,ボーエン比熱収支法による蒸発散量の測定を行った.また,バルク式で蒸発散量をモデル化する目的で群落抵抗を算出し,それを日射量および土壌水分でパラメタ化した.この群落抵抗モデルとバルク式から成る蒸発散モデルをSPACモデルに組み込み,各圃場の蒸発散量と土壌水分の鉛直分布の日変化を計算した.その結果,各圃場からの蒸発散量は精度よく再現できた.最後に,LANDSAT画像から河套潅区全体の土地利用マップを作成し,SPACモデルで計算した蒸発散量の日変化を潅区全体の日蒸発散分布に拡張した.
森林水文(8月29日,14:40 - 16:10)
  • 小杉 賢一朗
    セッションID: 13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    森林の水源涵養機能が社会的に大いに注目される中,その役割を科学的に解明することが重要な課題となっている。森林の水源涵養機能は,森林土壌によって発揮されるといわれている。その一方で,山地河川の流出特性は基本的に基岩地質によって決まっていることが,確かめられている。このことから,不透水性の基盤面を仮定し土層のみに着目した飽和・不飽和浸透流解析では,森林の水源涵養機能を必ずしも適切に評価できていないと考えられる。本研究では,透水性基岩を有する斜面における雨水の浸透・流出プロセスを検討し,森林の水源涵養機能に関して土層と基岩が果たしている役割を解明することを目的とした。結果として,基岩の浸透能が全く同じであっても,土層厚が変化することによって,雨水が基岩底面流,飽和側方流,地表面流に配分される比率が大きく変化することがわかった。これは土層が,バッファーの役割を果たしているためと考えられる。
  • 田中丸 治哉, 竹内 稔, 多田 明夫
    セッションID: 14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    本研究では、全国13地区の農地造成流域とそれに近接する山林流域の水文観測資料(農林水産省)を対象として、直接流出量の推定に広く用いられているCN(Curve Number)法を適用し、各流域の直接流出特性をCN値によって表すとともに、CN値と各流域において実施されている冠水型浸入能試験の結果を対比し、直接流出特性と流域表層土壌の浸入能との関係について考察した。その結果、13地区のうち10地区で、山林流域の方が農地造成流域よりもCN値が小さくなる(直接流出量が小さくなる)こと、農地造成流域と山林流域のいずれにおいても、流域表層土壌の浸入能が大きいほど、洪水時の総直接流出量が小さくなる傾向がある程度は見られるが、浸入能-直接流出量関係のばらつきはかなり大きく、浸入能に基づいて直接流出量の変化の程度を定量的に見積もることはかなり難しいことが分かった。
  • 清水 美代
    セッションID: 15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     日本は水資源の多くを山地河川流域に依存しており、特に積雪地域でその重要度は高く、水資源の開発・管理は的確に行わなければならない。そのためには、河川の長期的な水文解析を行い、流出特性を正確に把握する必要がある。本研究では、安藤らの長期流出解析モデルを用い、基本的な水文データよりパラメーターを算定し、融雪を考慮した長期流出解析を行い、その傾向を再現した。群馬県川場村に位置し、冬季には上流部で積雪が2_m_以上となる桜川を対象流域とした。
     その結果、積雪・融雪の影響を考慮しない時には流出量の相関が極めて低かったが、考慮するとよい相関が得られ、精度の高い解析を行うことができた。また、2000年から2005年までの5年間の流出解析の結果より、流域における水収支も明らかとなった。
  • 岩田 拓記, 浅沼 順, 大谷 義一, 溝口 康子, 安田 幸生
    セッションID: 16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    森林キャノピー直上での乱流構造を調べるために,複数高度で風速,気温,水蒸気濃度,二酸化炭素濃度の観測を行った.以下では,観測の概要を記す.観測サイトは森林総研フラックスネットサイトのひとつである富士吉田試験地のアカマツ林である.比較的一様なキャノピーで,平均高さは21mである.超音波風速温度計を5高度,オープンパス型赤外線ガス分析器を3高度に設置した.設置高度は18.9mから32.2mの範囲である.同時に,気温,相対湿度,二酸化炭素濃度の平均値プロファイルも8高度で観測した.プロファイル観測は地上3.4mから31.4mの範囲である.
  • 藤本 将光, 谷 誠, 大手 信人
    セッションID: 17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    本研究では,流域を構成する基本的な地形単位である谷頭部斜面と谷壁斜面,それらを含む2?5次谷流域における観測結果を比較し,流域スケールと流出特性の関係を把握することを目的とした.観測の結果,基底流出時において,谷頭部斜面の流出量は,5次谷流域に比べて大きく,また,谷壁斜面は小さい傾向を示した.また, 2?5次谷流域の流出特性に差は認められなかった.この結果とSiO2濃度の空間分布の結果を併せて考えると,基底流出時の流出特性には,基岩を通過した水(岩盤地下水)が重要な役割を果たしていることが明らかになった.洪水流出時には,谷頭部斜面,谷壁斜面の降雨流出応答は降雨の規模によって異なり,また,2?5次谷流域の流出応答に影響を与えていることが示された.一方,2?5次谷流域では,流出特性に差が見られず,斜面地形の影響が平均化されていることが示唆された.
  • 村上 茂樹
    セッションID: 18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     一つの降雨イベントにおいて時間樹冠遮断量は降雨強度(時間雨量)に比例して増加することが報告されている。これは樹冠遮断が樹冠表面からの蒸発よりも、主に雨滴飛沫蒸発によって生じているためと考えられる。本研究では、新たに構築した樹冠遮断モデル(降雨強度依存モデル)と既存のモデル(熱収支モデル、Gashモデル)とを用いて、樹冠遮断の降雨強度依存性と雨滴飛沫蒸発について考察すると同時に、モデル相互間の関係について検討した。降雨強度依存モデルとGashモデルはいずれも計算値と測定値がよく一致した。さらに、両モデルは等価であることが示された。熱収支モデルでは計算値が測定値の1/3にしかならなかった。熱収支モデルの計算値が測定値と比べて過小となったのは、降雨強度依存性(雨滴飛沫蒸発)が考慮されていないためであり、このことから樹冠遮断の2/3は雨滴飛沫蒸発によるものと推測された。
  • 田中 延亮, 鈴木 雅一
    セッションID: 19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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気候変動・地球環境(8月29日,16:20 - 17:35)
  • 萬 和明, 田中 賢治, 池淵 周一
    セッションID: 20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    今世紀は水の世紀といわれ,地球規模の水資源問題に注目が集まっており,その解決には農業用水,特に灌漑要求水量の把握が不可欠である.筆者らは,灌漑の効果を考慮できる陸面過程モデルSiBUC (Simple Biosphere including UrbanCanopy) を用いて全球土壌水分プロジェクトに参加し,灌漑要求水量を含む全球陸面水文諸量を算出している.本研究では,灌漑要求水量の年々変動特性を明らかにするため,得られた陸面再解析データを活用し,灌漑要求水量と降水量,NDVIと降水量の年々変動の相関分析をそれぞれ実施した.2つの相関分析の結果から灌漑能力に関する情報を抽出しうることが明らかとなった.さらに,現在の気象変動に対して農業システムの耐性・脆弱性をその強弱も含めて判断しうることが示された.これは,NDVIを単独ではなく,モデル出力と組み合わせることではじめて得られた成果である.
  • 花崎 直太, 鼎 信次郎, 沖 大幹
    セッションID: 21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    地球温暖化により世界の水資源に顕著な影響が出るのではないかと懸念されている。この影響を評価するには降水パターンの変化といった水の供給側の変化に加えて、乾燥化(湿潤化)に適応するための灌漑の増加(減少)といった水の利用側の変化も同時に考慮する必要がある。また水の需給には大きな季節変化があることから年単位以下の時間スケールでの評価が重要である。これまでにも温暖化の水資源への影響を定量的に評価する試みが数多く行われてきたが、水需給の表現が不十分であったり、季節変化を無視していたりする問題があった。そこで詳細な水需給過程が表現できる花崎ら(2006)による全球統合水資源モデルと高解像度の温暖化予測気象データ(K1データ)を利用することにより、温暖化時の水資源評価を試みる。
  • 犬塚 俊之, 花崎 直太, 鼎 信次郎, 沖 大幹
    セッションID: 22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    水資源に対する地球温暖化の影響予測のために、農業用水を時間的・空間的に高解像度で推定する必要がある。また近年、水資源利用における天水の重要性が指摘されており、灌漑水に対して天水の寄与分がどの程度なのかを知ることは重要である。そこで、農業プロセスモデルSWIMを用いて、2001年のGCMによる気象予測データを入力値とする必要水量の推定を全球グリッドベースで行った。灌漑用水を必要なだけ与えた場合と、天水のみで栽培した場合の二通りのシミュレーションを行い、両者における栽培期間中の農地からの蒸発散量を比較して、天水と灌漑必要水の構成割合を求めた。さらに、地球温暖化が生じた場合におけるこれらの値の変化を、2050年と2100年の気象予測データを用いて推定した。この結果、地域によって変動のしかたが異なる様子が明らかになった。今後は、実測値との比較などを行い、精度について検証してゆくことが課題となる。
  • 甲山 治, 塚田 祐王政, 大石 哲, 砂田 憲吾
    セッションID: 23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    大規模灌漑によってアラル海が干上がった中央アジアのアムダリア・シルダリア流域は,20 世紀最大の環境破壊の一つに挙げられる.また年平均気温の上昇,過剰灌漑がもたらした塩類集積や過放牧による牧草地の衰退など,多くの問題が存在する.本研究では流域水循環の把握に向けて,長期衛星データを用いた対象流域における土地被覆とその変動傾向に関する解析および現地調査を行った.
  • 増冨 祐司, 乾 祐介, 高橋 潔, 松岡 譲
    セッションID: 24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    世界流域データベース(Global Basins Database: GBDB)を開発した。GBDBは流域を一定の規則で分割した単位流域から成る流域界データと、そこに格納されている属性情報からなる。ひとつの単位流域はPfafstetter Codeで識別され、それぞれに、地理情報、地形情報、社会情報が格納されている。GBDBの流域界データはDEMから作成した。まず、DEMに自然窪地の同定を行った後、”Stream Burning”と”Ridge Fencing”の手法を適用して修正を行い流域界データを作成した。”Stream Burning”に使用する河道データ、”Ridge Fencing”に使用する流域界データは、収集したデータ、地図、流域図を参照して修正したものを用いた。作成した流域界データを収集した流域界データと比較し、また流量観測所において計算した上流流域面積と記載されている上流流流域面積を比較した。これらの2つの比較の結果よりGBDBの流域界データはHYDRO1kの流域界データより格段に精度の向上が見られた。
  • 鈴木 和良, 大畑 哲夫, 窪田 順平, ブグリンスキー バレリー
    セッションID: 25
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    レナ川上流部の山岳タイガ域での水・エネルギー循環の研究は、ロシア国立水文研究所によって1975年から1985年まで集中的に行われている。地球観測フロンティア研究システムは、同地域のロシア国立水文研究所の試験流域であったモゴット流域で、ロシア国立水文研究所と共同観測を2000年8月より2002年6月まで行った。南部の山岳タイガ域の特徴は、夏期の降水量が多い点である。また、レナ川流域の他の地域同様に、積雪期間が1年の半分以上に達する。さらに,流域には永久凍土が存在し,河川は冬季には完全に凍結する。この様な積雪冬季が長く続き,永久凍土が存在する地域での水・エネルギー・炭素循環に関する研究は少なく,特にシベリアにおける研究はまれである.本報告では、南部山岳タイガ地域の小流域での水・エネルギー・炭素循環の解明を目的として観測並びに解析を行った結果について報告する.
流出(8月30日,8:40 - 10:20)
  • 井本 昂志, 大出 真理子, 浜口 俊雄, 小尻 利治
    セッションID: 26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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    現在,人口増加や生活水準の向上により,水問題が深刻化している.また,地球温暖化による,水資源,流域環境への影響が懸念される.限りある水資源を有効活用するためには,流域単位での水資源,流域環境の総合的な管理が不可欠である.一方,近年,全世界的に地理情報システムが発達し,大循環モデル(GCM)による気候の将来予測精度が向上してきている.本研究では,GCM出力値を利用し,異なる3流域に分布型流出モデルを適用することで,地球温暖化による流域水資源分布への影響の推定と比較を行った.なお,解析期間は再現期間(1979-2000)・将来予測期間(2079-2100)とし,GCMはIPCC のSRES A2 シナリオに基づいた気象庁の全球大気海洋結合モデル(CGCM2)を用いた.その結果,温暖化の影響により日本における降水量・河川流量の季節較差が拡大することが示唆され,流域管理がより困難になると懸念される.
  • 塚本 賢明, 中村 徹立, 野仲 典理, 水草 浩一
    セッションID: 27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     近年、自然環境や社会環境の変化に伴い記録的な集中豪雨が多く、全国各地で洪水が頻発している。また雨量や水位・流量等の洪水実績資料を基にした経験則に基づく洪水予測システムは、過去に経験したことがない洪水が発生した時に十分に機能・対応できなくなる恐れがある。
     そこで、本研究では気候変動へ柔軟に対応するための洪水予測手法の検討を試みた。具体的には、降雨予測の不確実性が降雨の強弱の度合いに依存すると仮定し、降雨の強弱の度合いを流域内の降雨量の空間的なばらつき(標準偏差)で表現することにより、予測水位を確率表現した洪水予測手法を考案した。この手法は洪水予測の空振り、見逃しを防ぐ柔軟な対応策の1つとして有効である。
     なお更なる精度向上のためには、今後は予測雨量の時系列変化(波形)にも着目する必要がある。
  • 高崎 忠勝, 河村 明, 天口 英雄
    セッションID: 28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
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     貯留関数法は降雨流出現象の非線形性を簡単な構造式で表現でき比較的計算が簡便なことから,水害被害軽減に向けたソフト対策である水位予測に適した解析手法であると考えられる.二価関数による貯留関数法は大きな流域を有する河川の洪水流出を良好に再現することが報告されている. 本報は高度に市街化された都市小流域における二価関数による貯留関数法の適用性について検討したものである. 神田川上流域を対象に近年の洪水時の観測データを用いて二価関数による貯留関数法のパラメータを大域的探索法であるSCE-UA法を用いて同定した.得られたパラメータを用いて再現計算を行ったところ1種類のパラメータの組み合わせで複数の洪水における流出を概ね再現できたことから市街化が進行した小流域においても二価関数による貯留関数が有用であることを確認した.
  • 呉 修一, 下坂 将史, 江花 亮, 山田 正
    セッションID: 29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    著者らは,降雨流出機構の解明および洪水予測手法の確立を目的とし,物理的観点に立脚した降雨流出計算手法の提案を行っている.本論文は,降雨流出における流域特性やスケールに応じた河道の効果の定量的評価を目的とし,河道部における洪水追跡計算として不定流計算を行うことにより,河道部における不定流計算の必要性に関して流域特性の観点から述べたものである. 斜面における降雨流出計算および河道部における不定流計算を行うことにより,降雨流出における河道の効果と,到達時間の関係に関して述べたものである.河道の効果が降雨流出に影響を与えるのは斜面と河道の到達時間の比が1対5以下であり,河道部の流れの流速が斜面における流れの流速を無視できるほど早いときに河道効果は小さく降雨流出に与える影響は小さいことがわかった.
  • 浜口 俊雄, 小尻 利治, 池田 恭彬
    セッションID: 30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,分布型流出モデルのHydrogeo-BEAMにおける地中部に相当する不飽和帯や帯水層での水分挙動を物理モデルまたは土壌特性に沿ったモデルで表現することにより,水量のみ等価だった表流水や地下水のモデルがその挙動も実際に近いかたちになり,現実に則した水文シミュレーションが可能となった.その結果,表流水と地下水の挙動にも不飽和流を介して連携的な関係を持たせることにも成功し,平面だけでなく地下にも広がりのある水資源分布を評価できるモデルのHydrgeo-BEAMを構築できた.本稿では当該モデルを尻別川流域に対して適用したところ,飽和透水係数の設定値の不具合から基底流出にまだ問題があるものの,表流水量の空間分布ばかりでなく,不飽和帯の水分分布や地下水位分布も容易に同時算出できることを確認し,そのモデルの有効性を検証できた.
  • 工藤 亮治, 永井 明博, 近森 秀高
    セッションID: 31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年、健全な水循環が問題視されているが、この問題の解決のためには流域内の水循環を定量的に表現する必要がある。本研究では岡山県北部の小阪部川ダム流域を対象に、山地からの流出量の計算に流出解析モデル、河道内の流れに水理モデル、地下水に2次元不圧地下水流モデルを適用し、これらの手法を統合した流域水循環モデルの構築を行った。流出解析モデルには長短期流出両用モデルを、河道内の流れには不定流解析を用いた。その結果、このモデルを用いることにより各地点の河川流量、河川水位、地下水位を同時に求めることができ、流域内の水循環を定量的に表現できるようになった。また、小阪部川ダム貯水池の流入量も精度よく再現できた。今回地下水のデータを入手できなかったため、地下水流動解析に関してはシミュレーション的に行ったが、今後地下水の実測値のある流域でこのモデルを適用することにより、更にモデルの適応性の検討を行う必要がある。
  • 藤村 和正, 佐藤 亨明, 町田 聖文
    セッションID: 32
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、冬期に降水量が十分に得られない流域においての日単位の長期流出解析であり、寒冷地である北海道・東北地方の5つのダム流域(岩尾内ダム,漁川ダム,定山渓ダム,浅瀬石川ダム,玉川ダムの各流域)を対象とした。対象期間は2002年6月から2006年4月までの約4年間である。解析にはGISが活用できるように改良された安藤等の水循環モデルを用いた。冬期は観測資料が十分ではないが、ダム地点の降水量データは良好であったため、それをもとに仮定した標高-降水量関係から流域平均降水量を推定した。GISメッシュは100mとし、降水量の他、積雪・融雪計算をしている。流出特性として一雨雨量-直接流出高の関係や地下水流出の減水定数等を表し、それらの値をパラメータとして用いた。解析の結果、岩尾内流域では冬期の降水量データは全て不良であったためモデルの再現性は十分でなかったが、他の4ダム流域では良好な再現性が示された。
  • 和田 健太郎, 野原 大督, 小尻 利治
    セッションID: 33
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
     本研究ではAI手法を用いて長期流況の予測を行った。また予測誤差を考慮することにより,より高い精度での長期流況予測手法を確立することを図った。
     具体的には、遺伝的プログラミング(GP)を用いて構造推定したニューラルネットワーク(ANN)をGPNNとして長期流況予測を行い,その結果をANN,GPによる予測結果と比較した。またローカルリニアモデル(LLM)を用いた誤差推定によってGPNNをより良いモデルにすることを目指した。結果としては、誤差推定においては良い結果を得ることはできなかったが、流入量予測においてはGPNNの精度が最も良いという成果が得られ,GPモデルによる構造推定の効果が現れた。
流域水管理・開発(8月30日,14:10 - 15:50)
  • 新井 裕子, 鼎 信次郎, 沖 大幹
    セッションID: 34
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    2005年はチェンマイにおいて40-50年来の規模の洪水が5回発生し、同地域に甚大な被害をもたらした。筆者らは当洪水および洪水予警報システムを調査するため、2005年11月から1ヶ月間チェンマイにて現地調査を行った。同洪水による浸水地域は、人工堤防がないため地形にほぼ対応しており、河川水位から浸水被害が予測できることが分かった。また絶対的な観測所数の不足は見られず、水位相関法を用いた予測は高い相関を示していた。しかし一方で、リアルタイムデータを得ていないためデータ報告の谷間に水位上昇した場合に予警報が遅れるなどの問題点を抱えることが明らかになった。さらに、洪水警報発令権のある内務省管轄機関はタイ王立灌漑局やタイ気象局から情報を受け取るという立場にあるため発令判断能力は乏しく、後者にとって機関内での洪水予測の優先度は低いために予算や人員を割けない等の問題点も見られた。
  • 辻之内 和基
    セッションID: 35
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    地球規模の温暖化、気候変動、人口増加により、水問題は、緊急に解決しなければならない最重要問題として、いまや世界で認識されている。水問題解決の取り組みの一環として、3回の地球観測サミットの結果を受け、複数システムからなる統合的な地球観測システム(GEOSS)の構築が実現に向けて推し進められている。本研究では、グリッドベースに改良した分布型流出モデルであるGBHM(Geomorphologic-Based Hydrological Model)を用いてメジェルダ川流域の洪水流出解析を行った。そして、衛星雨量情報は実流域を再現できるのかを検証し、また、ダム操作モデルを加えることは実流域をより良く再現するのに有用であるのか検証を行った。
  • 丹治 肇, 桐 博英, 林 彦宏
    セッションID: 36
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    メコン・デルタの作付けパターンの変遷の文献レビューを行い、簡単な作付けパターンモデルを作成した。デルタでは1990年代以降、防潮樋門と水路の建設を行う淡水化事業が拡大してきた。その結果、従来の上流は塩水遡上の影響が強く、下流は小さいパターンが崩れている。下流でも三期作が拡大している。一方、水田からエビ池への転換も拡大している。この変化は、農家の経済的な利益と所得階層で説明できる。しかし、利益の高い作付けパターンほど、病気や塩害のリスクが高いので、リスク評価がモデル作成上の問題点である。
  • 増本 隆夫, 吉田 武郎, 久保田 富次郎
    セッションID: 37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    用排水路を含めた水田域の持つ洪水防止機能の評価法についてはいくつかの検討が行われてきたが,それを経済的に評価する試みはいまだなされていない。そこで,水田域が持つ洪水貯留能力を遊水地の貯水量で代替評価するために,まず評価の前提となる遊水地と水田域の洪水時の貯留及び流出パターンの比較を行った。さらに,計画洪水時における水田域の洪水防止機能を遊水地で代替する経済評価法を定式化した。
  • 許士 達広, 田中 圭一, 横井 潤
    セッションID: 38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    利水運用の最適化のためには、節水率等の渇水の量と渇水被害額との関係の把握が不可欠であるが、実際の渇水時にそれに対応した実用的な調査は行われておらず、最適運用の実現を困難にしている。本研究は近年の最大の渇水である平成6年度の渇水時に行われた利水経済調査から、節水率と被害額の概略の関係を推定し、確率確保容量の節水曲線を用いて渇水被害額の算出と渇水時のダムの最適運用方法を示すものである。
  • 稲葉 薫, 登坂 博行
    セッションID: 39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    地上および地下における熱・水循環系の統合モデルを構築した。このモデルは地表面および地下の水理情報・熱的パラメータを基に構築され、気象条件(雨雪量、風速、日照時間、湿度、気温)を入力とし、地表面および地下の水分量、圧力、温度の変化を出力とする。このモデルにより地上および地下の状態量を考慮した広域の蒸発散量分布等が推定できる他、地下への涵養量/地下からの流出量の分布なども推定可能である。現在、モデルの妥当性および実用性を評価するための検証作業を現在実施中であり、ここではモデルの概要と検証の一部を紹介する。
  • 下坂 将史, 呉 修一, 戸谷 英雄, 山田 正
    セッションID: 40
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    台風や停滞性の降雨,および近年多発している集中豪雨のような大規模な出水の際には,ダムから事前に放流を行うことで大きな治水効果を得ることができる.著者らは,従来から降雨流出機構の解明およびダム上・下流域の流出特性を用いてダムからの事前放流量を決定する手法を提案している.本論文は流域の洪水流出特性に着目し得られた知見を残流域からの流出量の推定及びダム貯水池操作に応用し,その治水・利水効果の定量的評価を行う事を目的とした.その結果現況のダム操作よりも早く洪水調節が可能になり,事前放流を行うことで洪水のピークを制御する事が可能になった.また,仮想的な大規模洪水が発生した場合でも,低減目標水位内(危険水位内)に抑えながら放流することが可能であるだけでなく,現行の操作通りの洪水調節を行った場合よりも大きな治水,利水効果を得られることがわかった.
  • 山本 隆広, 陸 旻皎
    セッションID: 41
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    平成16年新潟・福島豪雨と福井豪雨による水災害では短時間集中型の降雨によって洪水到達時間の短い中小河川で洪水氾濫が発生し,流域の大きさに合った計画降雨継続時間を用いる必要性が指摘された.本研究では比較的に流域面積の小さい1級河川土器川祓川橋上流域(106.8km2)を対象とし,計画降雨継続時間が基本高水流量算定に与える影響を調べた.計画規模のハイエトグラフはランダムカスケードモデルにより確率的に発生させた.その結果,本解析ではカバー率50%程度の基本高水流量は計画降雨継続時間の影響をあまり受けないことを示した.一方,非常に高いカバー率の基本高水流量は計画降雨継続時間が長くなると大きくなる.
水資源・水環境政策/水環境経済学・水環境社会学】(8月30日,16:00 - 17:30)
  • 蔵治 光一郎
    セッションID: 42
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    全国の河川で基本高水が過大ではないかという疑念が住民から提起され、河川計画の策定を巡るコンフリクトの原因の一つとなっている。本研究は、全国の一級河川における基本高水が歴史的にどのように変化し、既往最大洪水と比較として現在どのような値になっているのかを知ることを目的とし、河川整備基本方針、国土調査法に基づく主要水系調査書等により、全国109一級河川の最下流基準点における基本高水ピーク流量と計画高水流量の経年変化データを得た。基本高水は過去61年間一貫して引上げられ、上げ方は一定ではなく不規則であり、洪水の発生頻度とは対応していない。既往最大洪水との比較より、現在の基本高水が過大に設定されている可能性が高い水系が存在することがわかった。このような水系で河川整備基本方針や河川整備計画を策定するには、基本高水の数値の妥当性が住民や自治体に対して科学的にわかりやすく説明される必要がある。
  • 町田 宗一郎, 風間 聡, 沢本 正樹
    セッションID: 43
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    洪水氾濫に伴う被害を予測する手法は数多く存在する.その集大成として治水経済調査マニュアルが作成されている.この治水経済調査マニュアルは,被害額の算出を様々な算定項目により考察している.しかし,その複雑性ゆえ,分布的な解析に適しておらず,地域間の比較および評価ができない.そこで,本研究では,浸水被害における様々な算定項目に対して議論可能である浸水被害算定モデルと分布的な解析が可能である洪水氾濫モデルを組み合わせ,日本全土に適用可能な被害額の分布型算定モデルの作成を目的とする.
  • 大原 健治, 村上 雅博
    セッションID: 44
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    2000年にセネガルのダカールで行われた「世界教育フォーラム」において採択された目標の一つである「2015年までの初等教育の完全実施」に向けて、各国及び国際機関、国際協力機関等が活動しているが、現在、達成には難しい状況にある。特にサブ・サハラ地域は最も困難な状況にあり、就学率は約60_%_となっている。
    また、冷戦後、グローバル化の急速な進展による、武器や薬物の密輸、感染症などの拡散の問題や、冷戦構造の崩壊による、人種・民族、宗教などを要因とする紛争及びそれに伴う、難民・国内避難民・対人地雷・小型武器などの問題が発生しており、初等教育の完全実施に向けた安全な教育環境の確保すら難しい状況も発生している。本研究では、その中でも、平和と開発の持続的発展に重要な位置を占める難民への初等教育、特に就学率の向上について水をエントリー・ポイントとして検討を行った。
  • アブドレイム バトル, 城戸 由能, 川久保 愛太, 中北 英一
    セッションID: 45
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    新疆ウイグル自治区は典型的な乾燥地域であり、水資源が乏しく、生態環境も脆弱である。中国中央政府の西部大開発による経済発展と移民人口の爆発的な増加に伴い、この地域の水資源環境は急速に悪化しており、水質汚染防止と水資源賦損量の確保は緊急の課題となっている。 本論文では、新疆ウイグル自治区南部のタクラマカン砂漠の北を流れるタリム河流域を対象として、これまでに行われてきた複数の調査資料を収集・整理し、タリム河の水量・水質環境の現況を分析するとともに、今後の水利用増大に伴う水資源環境の変化に対応した対策の検討をおこなう。
  • 高 玲, 大瀧 雅寛
    セッションID: 46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    現在、水を取り巻く厳しい状況は変わっていない。先進国の都市水使用量はほぼ安定期に入っているが、急激な都市化とともに、発展途上国の都市用水需用も急増すると考えられる。本研究は先進国として日本および米国、また発展途上国として中国の各年のデータを取り上げ、増加期と安定期において都市用水使用量が経済、気候、人口などの指標相関関係があるかを調べた。分析の結果、同様な安定期に入っている日本とアメリカの水使用量の決定因子が異なることなどが分かった、これによって、今後の中国国内の都市水使用量の分布を予測には、米国の気候因子の影響を参考にすることができると示唆された。
  • 大泉 伝, 山敷 庸亮
    セッションID: 47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    世界で類を見ない下水の再利用プロジェクトであるシンガポールのNeWater技術を東京に導入した場合について経済的評価を行い、首都圏の上水供給において再利用水を用いる可能性について述べる。NeWaterは下水処理した水に膜処理技術を用いて再利用するプロセスである。処理水は貯水や電子部品洗浄、ビルの空調に用いられる。シンガポールは1日に136万m³/日の水需要がある。国内でまかなえるのは約50%に当たる68万m³/日であり、残り50% はマレーシアから購入している。シンガポールは将来の需要増加分をNeWaterなどで供給し、段階的にNeWaterを含める水政策によって完全な自給を目指している。本研究は世界で大きな問題になっている水不足に対して、NeWaterが果たせる役割について評価を行うものであり、第一歩として世界最大の都市圏である東京圏におけるプラント導入可能性について経済的評価を行った。
  • 山田 智子, 大瀧 雅寛
    セッションID: 48
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年世界的に工業化が進んでいる.地球上に存在する利用可能な水は有限であり,特に今後も需要が増えると思われる工業用水を質的な面と量的な面で適切に利用,管理していかなければならない.工業用水使用量は国単位で計測されたデータは存在するが,さらに細分化した地域レベルでの使用量は把握されていない場合が多い.本研究では工業用水使用量の国内分布データが不足している国々においてその分布を予測し,今後の水資源保全や水利用計画に役立てることを目的としている.そこで,まず工業用水使用量分布データの揃っている地域において,使用量が何に影響され,決定されるのかその決定因子を探るために,工業用水使用量の分布および説明変数の解析を行った.また,結果をもとにグローバルな工業用水使用分布を把握するための限界メッシュサイズに関して考察した.
河川・湖沼(8月31日,8:40 - 10:10)
  • 原山 和也, 小尻 利治, 須田 日出男
    セッションID: 49
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    TCBM(事例ベースモデルTopological Case-Based Modeling)を用いたオンラインの河川流量予測は,過去に起きた流量変動の事例をデータベースに蓄え,現在と過去の現象の類似性を検証することでパターンを発見し,数時間先の河川流量を予測するシステムである.河川流量予測を行う場合,降水量予報値は重要なパラメ_-_タである.その予報値について,気象庁は降水の有無の的中率は公表しているものの,降水量の定量的な精度を開示しておらず,利用者の感覚による意見として,予報値は誤差が多いと言われることがある.そこで本報では,まずTCBMを用いた河川流量予測を示し,次に降水量の予報値と観測値の比較,最後に河川流量予測のための降水量予報値の利用事例を示す.
  • 上原 浩, 湯浅 岳史, 吉田 正彦, 稲垣 仁根, 竹下 伸一, 佐藤 祐一, 今城 貴弘
    セッションID: 50
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
     閉鎖性水域の水質改善やその流入河川の水量回復、水質改善には、流域の水循環の視点で現状・課題を捉え、対策を講じていく必要がある。そこで、本研究では流域の水循環健全化に資するため、流域の水循環を再現し、水循環健全化の対策効果を予測することができるモデルを構築した。さらに、構築したモデルを千葉県印旛沼流域に適用し、モデルの再現性と有効性を確認した。 構築した流域水循環モデルは、流域を正方メッシュに分割する分布物理型のモデルとした。降雨をインプットデータとし、地表面での降雨の分配_から_地下水流_から_地表流_から_河道流といった流域での水の挙動に関する物理現象を解析する各サブモデルを統合することによって流域全体の現象を解析する。 構築したモデルの再現性、有効性を確認するために、千葉県印旛沼流域に適用した。河川流量の実測値を検証データとして、計算値と比較することにより、モデルの再現性を検証し、良好に再現できることを確認した。
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