主催: 水文・水資源学会
台風や停滞性の降雨,および近年多発している集中豪雨のような大規模な出水の際には,ダムから事前に放流を行うことで大きな治水効果を得ることができる.著者らは,従来から降雨流出機構の解明およびダム上・下流域の流出特性を用いてダムからの事前放流量を決定する手法を提案している.本論文は流域の洪水流出特性に着目し得られた知見を残流域からの流出量の推定及びダム貯水池操作に応用し,その治水・利水効果の定量的評価を行う事を目的とした.その結果現況のダム操作よりも早く洪水調節が可能になり,事前放流を行うことで洪水のピークを制御する事が可能になった.また,仮想的な大規模洪水が発生した場合でも,低減目標水位内(危険水位内)に抑えながら放流することが可能であるだけでなく,現行の操作通りの洪水調節を行った場合よりも大きな治水,利水効果を得られることがわかった.