主催: 水文・水資源学会
四万十川源流部(高知県梼原町)のモミ・ツガ天然林流域で,年雨量,年流出水量と主要溶存物質の年流出量の関係について明らかにした。SO4,Cl,Na,K,Ca,Mg,SiはL-Q法で算定可能であったが,NO3-Nについては一降雨の流出水量と降雨前NO3-N濃度を変数とする重回帰式を作成した。NO3-Nを除く物質の年流出量は水量に比例した。物質流出量の水量依存を指摘した既存の報告の年雨量を超える年雨量2000~4500mmの範囲でも水量依存が成立することを示した。一方,NO3-N年流出量は水量に依存しないことがわかった。水量の多い環境下でN流出量が増えないのは大雨時のNO3-N流出量の増加が頭打ちになるためである。この要因として流域内のNプール量が少なくNO3-Nが枯渇しやすい,地表に達した雨水は集中して流れ土壌水と十分混合しないまま渓流へ流出する等が考えられる。