水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2012年度研究発表会
セッションID: P76
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気候変動・地球環境
ROI法を用いた確率降水量の将来変化の推定
*木島 梨沙子
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抄録

温暖化による気候変化に伴い極端降水量が変化することが指摘されており、将来的な確率降水量の変化の評価は、河川計画だけでなく降雨災害のリスク評価のために非常に重要である。空間的に密な高精度の情報が必要とされる一方で、全球気候モデル(GCM: Global Climate Model)を用いる将来変化予測は、地域的なスケールや各メッシュでは、その出力結果にばらつきが大きい。とくに極値統計量は、多くのGCMの場合に出力年数が約30年程度と限られているため、標本誤差が大きく、信頼性の高い将来変化の推定が困難である。 水文頻度解析では、確率降水量推定の際の分布関数のパラメータ推定には、小標本の場合、地域化を行い他地点の情報も用いる地域頻度解析がよく行われる(Burn, 1990)。これは、長いリターンピリオドを持つ確率降水量を推定する場合、分布関数のテイルに対して効く高次のモーメントを精度よく推定する必要があるが、高次のモーメントは小標本では誤差が大きいためである。一方、温暖化時における極値統計量の将来変化を評価する際に、空間プーリングを行うことが多いが、こちらは主に平滑化の意味で用いられる(Kendon et al., 2008)。どちらも小標本に起因した標本誤差による影響を除くことを目的としている。地域化や平滑化をする際に重要になるのは、プーリングによりより精度の高い情報が抽出されること、と同時にその地点の局所性を保存していることである。 そこで本研究では、確率降水量の将来変化の推定にあたり、上記の条件を満たす効果的な空間プーリング手法を検討する。また気象現象の空間スケールに着目し、どの空間スケールでプーリングを行えば温暖化の影響として信頼性の高い将来変化の空間分布が得られるかも併せて検討する。

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© 2012 水文・水資源学会
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