水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2012年度研究発表会
選択された号の論文の147件中1~50を表示しています
口頭発表
降水,降雪・融雪,雪氷 (9月26日9:40~11:10)
  • 吉田 翔
    セッションID: 1
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    短時間降雨予測(1時間以内)の予測精度向上のために、セル追跡アルゴリズムを用いた短時間降雨予測を行った。予測の初期値はXバンドマルチパラメータレーダの推定雨量と気象庁レーダ雨量の合成雨量とした。また、雨域の移動ベクトルは25mmh-1以上の降雨強度を持つ雨域に対してセル追跡アルゴリズムAITCCを用いて推定をした。予測の検証は1時間積算雨量を用いて行い、従来の領域全体を一定方向へ移流させた場合、初期値を維持させた場合とセル追跡をした場合の比較を行った。  観測された1時間積算雨量が25mmを超えるような強雨域が存在する時間帯に着目すると、従来の手法による予測ではこの強雨域の位置ずれが顕著であった。一方、本研究のセル追跡を用いた手法による予測ではこの位置ずれは小さく、より実測値に近い結果を得た。この結果の違いは、従来の手法では領域全体の平均的な移動ベクトルを推定するため、個々の雨域の移動を推定することができないことに起因する。特に本研究対象期間中は停滞性の強雨域が存在していたため、移動ベクトルの推定方法の違いが顕著であった。  以上のことより、セル追跡アルゴリズムを用いて個々の雨域の移動ベクトルを推定することで、単純に移流させる従来の手法と比べて、短時間降雨予測の精度向上が見られた。特に局所的に雨域が停滞する様な場合はこの成果が顕著であった。
  • 石田 信浩, 高田 望, 田中 裕介
    セッションID: 2
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    水平スケールが数百km以上の降水現象 (前線・低気圧に伴う雨など) と、 数km~数十kmの降水現象 (局地的大雨など) は、さまざまな異なった特徴を持つ。その中でも、移動特性の違いに着目して運動学的降雨予測手法の高度化を図った。従来よりも時空間的に高解像度なXバンドMPレーダーによる観測を用いて、ウェーブレット変換により、水平スケールが数十kmより大きい成分と小さい成分に分けることができた。分けたそれぞれの成分に対して、運動学的予測を行った。その結果、特に水平スケールの小さい成分の移動予測が改善し、予測誤差が小さくなって予測精度が向上した。
  • 西脇 隆太
    セッションID: 3
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    2008年7月の兵庫県都賀川での災害を皮切りに,近年我が国ではゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨が多く報告され,これによる災害が問題となっている.このゲリラ豪雨は時間スケールは1時間未満,空間スケールは約数kmと時間・空間共にスケールが非常に小さな現象なので,災害の軽減には1分1秒でも早い情報提供が重要になってくる.そこでこのような災害を監視のするために国土交通省は2010年にXバンドMPレーダ網を導入した.XバンドMPレーダは従来から行われてきた低仰角観測だけでなく立体観測も行っており,この観測結果を用いて地上で豪雨になるよりも早い時刻での降水セル(タマゴ)の探知及び3次元的な追跡が可能となった.しかし,探知したタマゴ全てが発達するわけではないので,探知したタマゴが豪雨をもたらす危険性があるかという判断を早期に行う必要がある.そこで本研究は,早期に探知したタマゴが発達するか否かをできる限り早期に判断することを目的とし,その危険性予知の指標として積乱雲の気流による渦に着目する.着目理由としては,積乱雲の形成に伴う上昇気流が存在すると水平渦が立ち上がり,積乱雲内に鉛直方向に軸を持つ鉛直渦が形成され,空気塊は回転しながら上昇していく.積乱雲の発達は断熱過程で,渦位は保存されるので,上昇気流によって引き伸ばされた空気塊は時に大きな渦度を生み出し,それによって周囲の水蒸気が積乱雲内に取り込まれ凝結する.そしてその時の熱エネルギーが上昇流の加速に大きく寄与している.以上のことから,渦度が大きいほど積乱雲は発達すると考えることができる.また,渦解析では,XバンドMPレーダから得られるドップラー風速を用いて降水セル内の大小2つの渦の渦度を推定した.1つは2km程度の直径を持つメソγ渦,もう一つは局所的な渦であるミクロ渦である.これら2つの渦とタマゴの危険性との関連を定性的に検討したところ,メソγ渦はタマゴの探知時刻から16分ほど遅れるもののメソγ渦が存在すれば必ず地上で豪雨がもたらされていることから確実な指標として有効性が示唆された.一方ミクロ渦はタマゴの探知時刻から約6分後にその存在が確認され,早期の予知としての有効性が示唆された.また,今後は解析事例を増やしさらに検討していくとともに,タマゴの早期探知,自動追跡との融合による一連のゲリラ豪雨予報システムの構築に取り組んでいく.
  • 中 大輔
    セッションID: 4
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    積雪は春先に安定した水資源を供給する.一方,融雪出水の要因でもある.近年の地球温暖化は冬季の降雪を降雨に変え,冬期の流出量増加と春先の流出量減少が指摘されている.したがって,対象流域内における積雪を広域で把握するとともに,積雪の変動が河川流量に及ぼす影響を明らかにする必要がある.特に中国地方は暖地性積雪のため,湿雪である.そのため,積雪深ではなく,積雪深と積雪密度を考慮した積雪水量を正しく把握しなければならない.衛星データと積雪モデルを用いた積雪水量の広域推定手法が検討されている.積雪モデルは降雪モデルと融雪モデルで構成され,融雪モデルとして,Degree-Day法を適用した.しかしながら,中国地方は暖地性積雪であるため,積雪の日変化が大きく,日積雪水量の推定精度が十分でないことがわかっている.そこで,本研究では,次の3つを進め,積雪水量が冬期河川流量に及ぼす影響を解明する予定である.まず,①積雪モデルを改良し,積雪水量の推定精度を向上させる.次に,②改良した積雪モデルと衛星データを用いて,対象流域内の積雪水量の広域推定を行う.そして,③河川流量の観測結果と比較することで流域内の積雪水量の変化が冬期河川流量に及ぼす影響を把握する.本稿では,①の積雪モデルの精度向上に着目し,積雪モデルに関する先行研究をレビューし,降雪モデルと融雪モデルを整理するとともに,各モデルが中国地方に適用可能かどうかを検証することを目的とする.
  • 西原 照雅, 中津川 誠
    セッションID: 5
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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     積雪寒冷地の多目的ダムでは融雪水を貯留して夏季にかけての水需要を賄っており,毎年の積雪包蔵水量を精度良く推定することが重要である.著者らは,ダム流域の積雪深分布を精度良く推定するため,定山渓ダム流域において広範囲に実施された二時期の航空レーザ測量結果(無積雪期及び積雪期)を用いて,積雪深分布と地形(標高、傾斜、曲率、斜面方位)との関係を考察した.結果,森林内における積雪分布は,地形因子との関係が線形になる等,非常に安定した関係が得られることを解明した.そこで,この関係を基に,森林内における積雪深分布を簡易に推定する式を提案した.さらに,この式を用いてダム流域の積雪包蔵水量を推定する手法を構築している.
     本研究では,著者らが提案した手法の汎用性を検証するため,同手法を北海道内の6ダムに適用した.推定精度の検証は,融雪期の水収支との比較により行った.結果,6ダムのうち5ダムで,ダム管理の現場で採用している手法と比較し,精度が向上するもしくは同程度の精度が得られた.このことから,本手法に汎用性があることを確認した.
  • リュウ トン, 木内 豪, LEDEZMA Fabiola
    セッションID: 6
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    This study investigated annual and monthly glacier mass balances Tuni and Huayna Potosi glaciers in Bolivian Andes by hydrological method. Results suggest that hydrological method is sensitive to meteorological and hydrological data but reliable measurements enable it to carry out frequent and intensive analysis that clarify temporal and spatial glacier mass balances. Sublimation, evaporation, and evapotranspiration were also included and proved to be an important element in the water balance. 
地下水(9月26日11:20~12:50)
  • 石原 成幸, 河村 明, 天口 英雄, 高崎 忠勝, 川合 将文
    セッションID: 7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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     東京都土木技術支援・人材育成センターが設置する地下水観測井では,不圧・被圧地下水を問わず,東北地方太平洋沖地震(以下「東日本大震災」という)に伴う地下水位変動が東京地域で明瞭かつ広範囲に観測された.著者らは2011年3月1箇月における1時間地下水位データを用い,その明白な時系列変動特性を基に,3月11に発生した東日本大震災に伴う東京における不圧・被圧地下水の変動パターン特性を抽出・分類するとともに,その変動特性について考察を行った.
     本研究では,東日本大地震に伴う東京における被圧地下水位の変動パターン特性に基づいて分類されたパターンに対し,ストレーナ深度から変動要因について考察を行った.地下水位の低下傾向を示すパターンC-Dの変動傾向は,東京周辺の地盤変動状況等から,主に東日本大地震に伴う地殻の膨張に起因する圧力低下によるものと判断できる.一方,パターンC-Iに分類されたのは,1井を除きストレーナ深度が50mより浅い沖積層を対象とした観測井であり,N値10以下の砂層等の軟弱な地層構成が主体であることから,当該観測井の水位上昇の主な要因は,地層中の過剰間隙水圧の上昇によるものと推測できる.
     また,主要なパターンであるC-DIに属する観測井は,ストレーナ深度が50m~300mの範囲に分布し,同300m以深には存在せず,地下水上昇・復元を含むC-DIやC-DRの現象としては,水みちの変化や地盤の沈下等が考えられるが,さらにデータの解析に努め,要因を精査する予定である.
  • Elezabawy Ahmed Kamal, Hamaguchi Toshio, Sumi Tetsuya, Tanaka Kenji
    セッションID: 8
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    Water resources are not sufficiently available in arid areas, moreover, its distribution in space and time has been ever challenging to water managers. Groundwater availability shows mainly spatial variability in terms of quality and quantity due to the hydrogeologic setting boundary conditions and aquifer properties.
    Based on the highlights mentioned above, conjunctive use of surface water and groundwater considering surface and subsurface environments and an integrated management of the limited water resources are most critical for the development of the Nile Delta aquifer. Simulated water head was presented with current and future scenario of flow rate change under steady stat conditions
  • 山中 勤, 劉 亜平
    セッションID: 9
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    山地と平野の境界に位置する扇状地では、地下水と河川の間にダイナミックな相互作用が存在する。地下水資源と地表水資源とを統合的に管理するためには、そうした相互作用の実態を詳細に把握する必要がある。本研究では、地下水―河川相互作用の時空間構造を明らかにすることを目的として、那須扇状地全体を対象とした3次元地下水流動・同位体輸送シミュレーションを実施した。また、疑似トレーサーを導入し、降水・河川水・田面水の寄与率を推定した。その結果、蛇尾川によって涵養された地下水は、扇頂から扇央にかけての領域では左右両岸とも河道から2~3 kmの範囲に及んでいるが、扇央から扇端にかけては河道のごく近傍だけに限られていること、那珂川も同様に扇頂部では河道から2 km程度の範囲で顕著な涵養が生じているが、扇央・扇端部ではほとんど寄与していないこと、さらに箒川起源の地下水は扇頂・扇央で河道から約1 kmの範囲に達しているが、扇端ではやはり涵養に寄与していないことなどが明らかとなった。また、湿潤期と比較して乾燥期では河川からの涵養が卓越する領域がやや縮小し、田面水の寄与率は全体的に低下し、逆に降水の寄与率が増加する傾向が見出された。本手法による寄与率推定値とEnd Member Mixing Analysisによる推定結果を比較したところ、一部の例外を除いて両者の間には良好な一致が認められた。相対的に大きな誤差は、サブグリッドスケールの不均質性によってもたらされたと考えられる。以上の結果は、同位体トレーサーと数値シミュレーションを併用する本手法の有効性だけでなく、同位体情報のみを用いるより簡便なEMMAも地下水-河川相互作用の解析に有用であることを示唆する。しかしながら、EMMAは局地的な影響を検出しやすいのに対し、本手法は広域的な動態を把握するのに適している。加えて、本手法では季節変動が考慮でき、かつ地下水涵養フラックスの絶対量が把握できるという点でさらに優れていると言える。
  • Nguyen Thanh Thuy, Kawamura Akira, Amaguchi Hideo, Nakagawa Naoko
    セッションID: 10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    Understanding the interactions between surface water and groundwater is critical for effective water resource management. This study is the first attempt to determine the spatio-temporal patterns of the interactions between the Red River and the PCA in Hanoi, Vietnam. In this study, an integrated surface-groundwater model was developed by coupling two commercial modeling packages: MIKE 11 and MODFLOW. The results revealed that there was very high correlation between the river water levels and PCA groundwater levels. The correlation was found decreasing not only with the distance from the river but also from the upstream to downstream along the river.
  • 浜口 俊雄, 角 哲也, カマル アフメド
    セッションID: 11
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    本研究は,定常状態での塩水くさびの理論展開で帯水層内の塩水侵入の影響特性の検討を行う.その際,先の特性把握が主眼であるため,理論展開する上で塩水の分散拡散がなく淡塩境界面が明確な状態を仮定しながら,淡塩境界面の形状を表す式の誘導を行う.そこでは平面地下水モデルに用いられるデュプイの準一様流仮定と定常の塩水侵入に用いられるガイベン・ヘルツベルグの関係式を利用している.帯水層淡水部に着目し,定常流の流動式を立て,海岸線位置からの考察位置までの距離と,考察位置での海面と淡塩境界面間の距離の関係式を理論的に導出した.しかしながら同式では海岸位置での淡水開口深がゼロになったため,鉛直流動も配慮したかたちで補正した.最後に,理論式から地下水淡水流量による塩水くさびの変動を調べた上で,一様一定の降雨による一様一定の地下水涵養があったときの同変動も検討したところ,流量ならびに地下水涵養量が増えれば塩水くさびは後退縮小し,減れば塩水くさびは前進発達することが式から証明された.
  • 國分 邦紀
    セッションID: 12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    多摩丘陵地内の谷埋め盛土地盤内に造られた道路面で、大雨の後しばしば湧水が路盤内から吹き出して路面を流下し道路交通に支障となるため、原因究明と出水対策のため調査を行った。この報告は、対象地において地下水位の長期連続観測を行い、明らかになった水文学的特徴について紹介する。
土壌水分移動,流出(9月26日14:00~15:45)
  • 広瀬 望
    セッションID: 13
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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  • 木下 孝介, 岡 泰道
    セッションID: 14
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    都市内ではヒートアイランド対策の一環として,さまざまな人工被覆改善が進められている.この中でも筆者らは人工植栽基盤上の給水制御技術に注目し,芝生植栽の維持管理手法について数値シミュレーションを用いて検討してきた.今後,排水機能や貯留機能が異なるシステムへの適用を念頭に入れており,解析結果の妥当性やパラメータの設定方法を検討する課題がある.そこで,本研究では屋上緑化ならびに都市内緑地における観測データを用いて,考案した1次元土壌-植物-大気連続体モデルの潅水による熱環境緩和効果の再現性を図ることを試みた.土壌-植物-大気連続体モデルは,大気モデル,地表面モデル,土壌モデルから構成される.大気モデルでは,気象データ(全天日射量,大気放射量,気温,相対湿度,風速)を入力値として入射放射量が決定される.地表面モデルはバルク式と並列源モデルによる熱収支式が組み合わされ,土壌モデルにはRichards式と熱輸送方程式を適用している.なお,本モデルでは,任意の気象条件下での植物の要求水量と土壌水分量のバランスにより,蒸散量が減少する過程を根による吸水モデルで表現している.観測データは,2011年8月8日~8月17日に都立日比谷公園(東京都千代田区)内の第二花壇で実施した暑熱環境ならびに熱収支結果,ならびに東京都環境科学研究所よりご提供いただいた建物屋上(東京都江東区)での地表面温度や放射収支等の諸計測結果である.測定値ならびに文献値からモデルパラメータを設定した.特に蒸発散量を支配する交換速度や蒸発効率については不確実性が高いため,定数として扱った.都市内緑地(日比谷公園)では観測値と解析値は符合する結果となったが,潅水区と非潅水区の地表面温度にはほとんど相違がないため,土壌下方からの水分供給により顕著な蒸発散量の低下が生じていないことが考えられた.一方,屋上緑化では高頻度な潅水により,潅水の有無による観測値の地表面温度差は最大約5℃に達している.なお,潅水区においては良好な再現性が確認できたが,非潅水区では潅水区と同程度の地表面温度が算定された.この要因としては,表面流出が過小に評価されたことが挙げられ,保水型の非潅水区に対しては高水分領域への適用性が課題として残る形となった.今後は,さまざまな仕組みを想定して,給水制御システムの合理化を図る予定である.
  • 陸 旻皎, 広田 洸平
    セッションID: 15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    流出解析において、土壌中の水分移動を表現するにはRichards式を解く必要がある。しかしRichards式は強い非線形性を有するため、その数値計算に膨大な計算量が必要で、分布型水文モデルにRichards式の数値解法を組み込むことは困難である。本研究では簡略化した土壌浸透モデルを目指し、まず土壌内の水分再分布に考察を加え、その数値化を試みる。
  • 田中 拓馬, 田中 賢治, 浜口 俊雄, 小尻 利治
    セッションID: 16
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    本研究は,土砂に付着した放射性物質の中でも土壌粒子との結合力が強く,半減期も長いセシウムに着目し,土砂の流動状態を予測することで土砂に付着しているセシウムの動態を考慮できる土砂輸送モデルの提案を行うものである.掃流砂と浮遊砂の輸送モデルを,従来からある分布型流出モデルHydro-BEAM1)に組み込むことで,広域分布型土砂輸送モデルを開発した.加えて,土砂輸送モデルから得られた土砂輸送量から,付着したセシウムの動態を解析する.通常の土砂とセシウムが付着した土砂を別のカテゴリーで追跡することで,放射性物質の影響を表現した.また,混合粒径であることを単一粒径のモデル式で表現するために,粒径でも5段階にカテゴリー分けを行った. 対象流域は,福島原子力発電所の近くであり,放射性物質の問題が懸念されている阿武隈川とした.
  • ユ ワンシク, 山口 弘誠, 中北 英一, 斉藤 和雄, 瀬古 弘, 折口 征二
    セッションID: 17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    本研究の目的は、高解像度のアンサンブル降水予測情報を用いて、アンサンブル流量予測を行うことである。2km解像度の雲解像モデルとデータ同化手法LETKFを用いてアンサンブル降水予測情報を作成し、分布型流出モデルへの入力値として用いてアンサンブル流量予測をおこなう。対象事例を2011年の台風12号とした。実際には近畿半島南東部で9月4日に強雨をもたらしたにもかかわらず、決定論的予測では台風の北進のスピードが速く降水域が海洋上にずれていたが、11メンバーのうち3メンバーにおいては紀伊半島での大雨が予測されており、このアンサンブル情報が極めて有効であることがわかった。
  • 高崎 忠勝, 河村 明, 天口 英雄, 石原 成幸
    セッションID: 18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    短期間の河川改修が困難である都市中小河川においては浸水被害の軽減に向けて実時間洪水予測は有効な手法だと考えられる.著者らは都市中小河川の実時間洪水予測に適した集中型概念モデルであるUSFモデル(Urban Storage Function model)を提案し,実流域おいてその適用性を検証している.本研究では,カルマンフィルターを用いたUSFモデルにより神田川上流域における2007年7月29日の集中豪雨時の洪水流出計算を行い,本手法の予測特性を検討した.河川流出量の計算においては,降雨開始時から1分毎に観測流出量を参照し,パラメータの値を更新しながら5分後までの予測計算を行った.計算の結果,オフライン同定で得られたパラメータによる河川流出量に対してカルマンフィルターを用いることにより短時間の予測精度について改善が期待できることを確認した.
  • 田中丸 治哉, 多田 明夫
    セッションID: 19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    本研究の目的は,流出モデル定数の最適化に多目的計画法を適用して,高水と低水の再現性,水量と水質の再現性など複数の目的を両立させたモデル定数を得ることである.本報告では,多目的最適化手法の一つである妥協計画法を近畿地方の3ダム流域に適用して,高水と低水の再現性を両立させたタンクモデル定数の多目的最適化を試みるとともに,加重和最小化法によって求めたパレート最適解との比較から,得られた妥協解の性質に関して考察した.誤差評価関数には,主に高水の再現性を表現する平均二乗誤差平方根(RMSE)と主に低水の再現性を表現する平均相対二乗誤差平方根(RR)を採用した.目的関数空間にプロットしたパレート最適解によれば,RMSEを小さくしていくと途中からRRが急に大きくなり,逆にRRを小さくしていくと途中からRMSEが急に大きくなっていた.この結果は,高水(低水)の再現性を特に重視した最適化を行うと,低水(高水)の再現性が著しく低下することを示している.一方,妥協計画法を適用して求めた妥協解によれば,高水,低水ともに最良の再現性ではないが,それぞれ最良に近い再現性が得られており,妥協計画法によって,高水と低水の再現性をほぼ両立させたタンクモデル定数が得られることが示された.
水質水文(9月27日9:50~10:50)
  • 森 麻祐子
    セッションID: 20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    近年、琵琶湖北湖の湖底近傍において栄養塩濃度の上昇と溶存酸素濃度の低下が観測されている。この原因として、例年厳冬期に生じる全層混合の弱体化が考えられ、現在このメカニズムの解明が急務となっている。そこで本研究では植物プランクトン、動物プランクトン、有機態/無機態窒素、有機態/無機態リン、溶存酸素、SS性/溶解性CODの9つの構成要素を含む3次元水質モデルの開発を行った。各構成要素は化学的・生物的過程による変化と移流・拡散による影響を受け、時間変化する。計算期間は2007年の1年間とする。物質によっては観測値との差が生じたものもあるが、季節変動などはおおむね良く再現できた。また、IPCCにおけるA1Bシナリオを仮定し、2050年~2054年の水質の変化を予測した。湖底における溶存酸素の低下や栄養塩濃度の上昇といった地球温暖化が水質に与える影響をシミュレーションによって評価することができた。今後はこのモデルに生物多様性を考慮し、より詳細なモデルへと発展させていく。
  • 早瀬 吉雄
    セッションID: 21
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    国交省水文水質データベースで毎月全窒素を分析している河川の上流域を対象に,低水時における窒素の流出機構と比負荷量について比較・検討を行った。山岳のある積雪流域河川では,融雪初期の凍結融解現象により高濃度で流量が少なく,その後,多量の低濃度のざらめ雪の雪解け水による腐葉有機物の掃流,土壌中に蓄積された窒素分の希釈流出によって低濃度化し流量が多い。このため積雪流域河川は,夏季に清流となる。
  • 栗林 由佳
    セッションID: 22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    懸濁物質(suspended solids, SS)の流出は,土砂の流亡や,SSに吸着したリン等の栄養塩類の流出でもある.このためSS流出負荷量の精度良い把握が水環境の保全の観点からも大切である.一般に,自然河川のSS濃度は低水時に低く,洪水・増水時に高い値を示す.大きな負荷量の値を示す洪水時のデータは,発生頻度こそ低いものの全流出負荷量中で高い割合を占める.この結果,通常の定期的な採水法(定期サンプリング)では洪水時のデータを十分に含むことができず,全体の流出負荷量の算出の観点からは低水側に偏ったサンプルを含むことになる.そのために,定期サンプリングによるデータ(標本集団)から推定される流出負荷量の値は著しく偏った推定値または過小な推定値となることが予想される.このような問題を改善するために,降雨出水時などの流量増大時のデータも適切に収集することのできるサンプリング方法が必要である.そのようなサンプリング法の一つに,負荷量の大きさに比例してサンプリングを行うSALT(Selection At List Time)サンプリング法(Thomas, 1985)がある(以下SALT法).本報告では,SSの流出負荷量の精度良い推定法を確立することを目的として,山林小流域からのSSの流出負荷量の推定にSALT法を適用し,その有効性を検証した.さらに,あわせてSALT法に基づいて負荷量推定法の改良を行った.この結果,SSの流出負荷量の精度良い推定法の確立にまでは到らなかったものの,SALTサンプリング法での負荷量推定式によりパラメータの多いモデルを導入することで,Thomasにより提案されている手法よりも,適切な負荷量の推定が行えるようになった.
  • 勝 駿宇, 近藤 明, シュレスター クンダン, 井上 義雄
    セッションID: 23
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    閉鎖水域である琵琶湖及び河川の富栄養化が引き起こす河川水質汚染が環境問題となっている。河川水が流れ込むダムは人の生活に欠かすことのできない飲用水を供給しているため、河川水質の悪化は大きな社会問題につながる恐れがある。我々はこの問題解決に向けて琶湖・淀川流域の水質改善を考えるために河川水質モデルを開発している。本研究では、ダムでの観測データを用いることなく河川水質を予測できるようにモデルの改良を実施した。 淀川流域には琵琶湖流域、宇治川流域、桂川流域、木津川流域、淀川下流流域が存在する。この流域内には天ケ瀬、日吉、高山、布目、一庫の主要な5つの主要なダムが存在する。 水文モデルは、平面的には流域を1km×1kmメッシュに分割し、鉛直的にはA~D層からなる4段の層を設置して、流域特性を3次元的に表現している。地表面およびA層については畑地、山林、市街地、水田、水域の土地利用別に分類する。各層が飽和水深に達した場合、溢水量は上層に復帰流として回帰する。 河川水質モデルは、河川水濃度と河川底泥層の蓄積量に関しての物質保存式から成る。河川水濃度保存式では、SSの沈降、再浮上、横流入を考慮した。横流入はLQ式を用いた。 従来の河川水文・水質モデルは、流域内の5つのダムからの放出流量及びSS濃度を観測値で与えているため、系全体の物質収支を満足しない問題点が存在していた。複雑なダム水位管理を、洪水期と非洪水期のダム水位を維持するようにダムからの放出流量を算定する簡易なダムモデルを開発した。また、SS濃度はダムへ流入するSSがダム内で完全混合すると仮定して、ダム内のSS濃度を算定した。  流域内の5つのダム水位の実測値と計算値の比較した結果、ダム水位は概ねダムモデルで再現できた。ただし、高山ダムと一庫ダムでは、全体的に過小評価となった。 流域内の5つのダムのSS濃度の実測値と計算値を比較した。全体的に実測値に比べて計算値は過小評価する傾向となった。 ダム内のSS濃度が過小評価されている原因は、ダム流入のSS濃度が低いことが挙げられる。LQ式を検討することでSS濃度を改善する予定である。また、ダム内濃度の計算では完全混合を仮定しているが、夏季に形成される温度成層の影響も考慮する予定である。
都市水文,水文統計,極値現象(9月27日11:00~12:00)
  • 橋本 健, 細川 達也, 矢島 啓
    セッションID: 24
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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     本研究は,河川計画においても津波対策におけるL2レベルに相当する外力を可能最大降水量と捉え,既往算定手法の問題点を指摘し,日本の河川流域において適切な評価等を考慮した可能最大降水量の算定を,湿度の最大化の精度向上と日本の河川流域の地形条件,洪水要因を考慮した降雨の最大化を試みたものである.
     湿度の最大化による可能最大降水量の算定は,豪雨時の可降水量と過去に発生した湿度最大となる時点の湿度の最大化雨量との比率を掛け合わせるという,WMOの基本的な考え方を用い,豪雨の発生時間内のメソ客観解析データの各気層の比湿を鉛直積分して求め,下層は湿潤であっても中層が乾燥しているなどの分布を評価した. 
     可降水量と湿度の最大値は,降雨継続時間毎に湿度の最大化率を求めた.湿度の最大化に用いた気象官署は,豪雨時の風向を交流して水分の流入方向として,基準地点八斗島上流域に北東から流入する風向がどの豪雨でも最大雨量時には卓越しているため,前橋と宇都宮観測所の平均値の最大値を用いた. 以上の方法により算定した可能最大降水量は,実績雨量の概ね1.7~2.3倍,最大3.7倍の雨量となった.利根川流域において既往最大3日雨量であるカスリン台風の318mmに対して,湿度の最大化のみで3降雨が318mm以上となり,最大1.37倍の434mmの雨量が発生しうる結果となった.これは,従来のWMOによる方法が本研究のメソ客観解析データを用いて各気層の比湿を用いた場合に比べて過大となっているためであり,湿度の最大化を考慮した降雨増加率は小さめに算定される傾向にある.このため,従来のWMOの方法は可能最大降水量としては小さめに算定される傾向にあり,本研究で用いた可降水量の実態を精度良く把握する手法が有効であると評価した.
     利根川八斗島上流域において,台風時の流域平均雨量に影響を及ぼすと考えられる要因について相関分析を行い,基準地点(八斗島)からの距離,中心気圧,風速などを主要因であると把握した.この結果から,基準点からの距離が大きく,必ずしも流域平均雨量としては上位となっていない台風について,これまでに流域に最も近づいた台風経路で移動した場合には,雨量が増加することが推定され,このような実績雨量の最大化も踏まえて可能最大降水量の算定を行う必要があることを示した.
  • 近森 秀高
    セッションID: 25
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    ある閾値を超過するデータを対象とした極値理論であるPOT理論に基づいて,1981年から2010年の30年間に全国21地点において観測された日雨量データから確率日雨量を推定し,年最大値を対象とした従来の年最大値法による推定結果と比較して,POT理論による推定値の特性を調べた。POT理論の適用に必要な閾値を年最大日雨量の統計値を用いて標準化し,全21地点における閾値と確率日雨量の関係を総合的に検討した結果,POT法により推定した確率日雨量は,年最大値法による推定値とほぼ同程度の値をとっているが,対象期間中の上位の日雨量がそれより下位の値に比べて際立って大きい地点では,大きく異なる場合も見られた。
  • 葛葉 泰久
    セッションID: 26
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    我が国の気象観測点のうち,100年分以上の年最大日降水量データが保存されている51地点について,SLSCを適合度評価に用いて,確率分布を求めた.そこでは,日本であまり使われてこなかったKappa分布,Wakeby 分布,Levy分布を含めて14個の分布形を用いた.結果として,パラメータの多いWakeby分布やKapp分布,特にデータを対数処理した分布形が選定されることが多かった.彦根の第1位のデータにように,極端な異常値とされてきたデータについても,これらの分布形を使えば,常識の範囲内の再現期間の値が算定された.
  • 尹 星心, 裵 德孝, 中北 英一
    セッションID: 27
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年、都市部では局所的な集中豪雨の発生と都市洪水のリスクが増加しており、都市洪水は降雨が発生した直後、突然に発生するという特徴がある。そのため、避難のための即座の判断基準となり得るflow nomographを開発した。降雨のシナリオを想定し、降雨量と流量と水位の関係からflow nomographを作成した。対象流域を韓国の清渓川として開発した手法を評価した結果、10の豪雨事例に関して88%以上の適切な効果を得ることができた。今後、2008年に災害が発生した神戸市都賀川におけるflow nomographを国土交通省XバンドMPレーダを用いて開発していく。
研究グループ報告(9月27日15:30~16:30)
流域水管理・開発(9月28日9:15~10:15)
  • 今村 公洋, 浜口 俊雄, 田中 賢治, 小尻 利治
    セッションID: 28
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    今日,様々な流出モデルが提案されているが,必ずしも流出現象を完全に捉えることができるとは言えない.このため,解析され出力された流量と真の流量とに差が生じ,想定外の流量により洪水などの被害が起こり得る.この差が生じる原因の一つが流出モデルパラメータの不確定性である.そこで本研究では流出モデルパラメータの不確定性を考慮した洪水リスクを考えた.つまり,流出モデルパラメータの値を確率密度関数として幅を持たせることで,真の流量を確率密度関数として幅をもった値とし,洪水リスク評価を行った.実流域として福島県,宮城県,山形県を流れる阿武隈川で検証を行った.使用した入力データは,2002年7月の阿武隈川流域での降雨を計画降雨に引き延ばして利用した.また,パラメータは透水係数が不確定な値であり,その他のパラメータは真値であると仮定し解析を行った. 本研究では流出モデルとして,分布型流出モデルHydro-BEAMを用いた.

  • 土屋 十圀
    セッションID: 29
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
       近年,地球温暖化対策から国内の豊かな水資源を利用する純国産エネルギーとして,新たな観点から水力発電は見直されその役割が期待されてきた.本研究は,多目的ダムである草木ダムの操作規則を見直し,有効的に発電量を増加させることの出来る手法を検討することを目的とする.すなわち,草木ダムの洪水放流時に発生する無効放流の低減を図り,ダム直下の東発電所で発電される発電量を増加させる有効な方法を検討する.草木ダム管理の水文データを基に新しい放流方法のシミュレーションを行い,発電量を定量化することを目的とする.また,大規模豪雨での事前放流による発電量の検討から治水的にも効果を発揮することを検討した.その結果,Base flow事前放流方式は操作規則を大きく変更することなく発電量を増加させる. 流入量ピーク時から,ずらし時間を多くとるほど発電量は増加する.事前放流は無効放流量が減少し,発電量が増加するだけでなく,治水に関しても洪水前に水位を下げることが出来るので有効な方法であると考えられる.
  • Gilbuena Romeo Jr., Kawamura Akira, Medina Reynaldo, Amaguchi Hideo, N ...
    セッションID: 30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    The evaluation of environmental impacts is often summarized in the form of an environmental impact assessment (EIA) study. The common practice of EIA in the Philippines is generally qualitative and lacks clear methodology in evaluating multi-criteria systems, thus, this study proposes the use of the rapid impact assessment matrix technique to systematically and quantitatively evaluate the impacts of structural flood mitigation measures (SFMM) in Metro Manila. Based on the results, the SFMM will likely bring both significant positive and significant negative changes. This study provides a clear view of the impacts associated with the implementation of SFMM projects. 
  • 皆川 裕樹, 増本 隆夫
    セッションID: 31
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動の影響により豪雨規模の強大化が予想され、特に排水が困難な低平地域においては将来的に洪水や農地湛水等の被害リスク増加が懸念される。対応策の検討に向けて、これらの影響を定量的に評価することが重要である。一方、実際の豪雨被害の発生リスクやその度合いには、雨量とともに降雨波形の違いも密接に関係すると考えられる。そこで、解析の入力豪雨について様々な内部波形パターンを想定することで、被害の発生リスクの変化を定量的に評価した。本手順では、影響を評価するために構築した排水モデルに、模擬発生法によって作成した様々な降雨波形を持つ豪雨を入力することで影響を評価する。現在と将来の総雨量値は、これまでの成果より220 mm/3dおよび270 mm/3dと仮定した。それぞれの雨量値について、総雨量は一定で降雨波形の異なるデータを300パターン模擬発生させ、そのすべてを入力し解析を行った。得られる300個の解析結果のうち水位がある基準を超える割合を抽出し、その雨量に対する被害の発生リスクとして評価する。これを現在と将来で比較することにより、気候変動による影響を評価した。対象地区内の排水が集中する潟のピーク水位に注目すると、将来は現在と比較し大きな水位の出現頻度が増加しており、同地点で規定されている氾濫危険水位を超過する確率は現在で17%であるのに対し将来では32%と、15%のリスク増加となった。また、水稲の減収に関連する水田の湛水時間(30cm以上)を指標として農地被害の発生リスクを評価した。各水田の平均湛水時間を比較した結果、雨量の増加に対して脆弱な水田地区が推定でき、特に潟周辺や干拓により造成された低標高部の水田において湛水時間の増加が予測された。 このように、模擬発生法を活用することで様々な降雨パターンを想定でき、内部波形に注目した低平地排水への気候変動影響評価が可能となった。今後は、排水計画の見直しも視野に入れ、想定される対応策の検討とその効果を具体的に評価することが課題となる。
特別セッション【タイ洪水】(9月28日10:25~11:40)
  • 中村 晋一郎, 西島 亜佐子, 小森 大輔, 木口 雅司, 梯 滋郎, マテオ チェリー, 岡根谷 実里, 沖 大幹
    セッションID: 32
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2011年5月から10月にかけての降雨の影響により,タイ国Chao Phrayaチャオプラヤ川において大規模な洪水が発生した.これにより死者・行方不明者816名,被害および損失額は約1.兆425兆3600億バーツBaht(約3.75兆円)と甚大な被害が発生した1).今回の洪水では,多くの市民が自宅や職場の浸水によって被災した.市民がいかなる水害対応を行ったのか,また今回の水害をどのように認識しているのかを明らかにすることは,今後の防災計画,治水計画を考える上で必須である.筆者らは,2011年11月4日から同9日にかけて現地調査を実施し,市民の水害対応及び水害認識に関するヒアリングを行った.   調査は,被害が甚大であったChao Phraya川中流部に位置するChainatから下流部Bangkokのエリアを対象とし, 142名から回答を得た.   被験者のうちほぼ半数が自宅の浸水被害を受けており.その浸水深は「1m未満」が35%を占め,1階部分の天井高に当たる3m未満は全体の82%と.殆どの家屋が2階部分の浸水を免れている.「避難した」と回答したのは42%と半数にも満たない理由は,2階部分の浸水を免れた点が大きいと考えられる.   市民の水害対応としては「土嚢積み」が最も多く,次いで「家具のリフトアップ」を行ったという回答が多かった.リフトアップは 2階部分に浸水が及ばなかったため,有効な水害対応であったと言える.   既往洪水のうち被験者の半数以上が1995年洪水を記憶していたが.それ以外については,10名以下の回答数で,発生年もばらばらであり,既往洪水への認識に大きなばらつきがあることが分かった.   「今回の水害の一番の原因は何と考えるか?」という質問に対して,最も多かった回答は「森林伐採」であり,続いて「ダム操作の失敗」,「流域管理の失敗」と人為的な原因を挙げる回答が多かったが,台風,大量の降雨,それによる洪水流など,自然的要因とする回答もほぼ同数程度存在することが分かった.
  • 増本 隆夫, ボンテップ ジュティテップ, 皆川 裕樹, 堀川 直紀
    セッションID: 33
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2011年に発生したタイ国チャオプラヤ川流域の大氾濫をとりあげ,大きく報道された都市部の大氾濫に対して,水田地帯の洪水貯留が全体の氾濫現象の中でどのような役割を果たしたかについて検討を行った。その結果,水田地帯が受け持った氾濫水貯水の効果を具体的に数値で示した上で,同様な大氾濫を被った水田地帯が都市部の氾濫水の貯留や氾濫水の遅延化に大きく貢献し,下流バンコクの氾濫被害を軽減したことを示した。
  • 堀川 直紀, 皆川 裕樹, 増本 隆夫
    セッションID: 34
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    タイ国Chao Phraya流域では2011年の洪水を契機として多目的貯水池の運用を含む洪水対策の検討が行われている。この大規模貯水池はこれまで流域の乾期水田灌漑用水の主要な水源として機能してきた。このため、流域の総合的な管理計画の策定においては乾期水田灌漑の特性を把握することが重要である。主要な貯水池であるBhumibolダム及びSirikitダム掛かりの灌漑地区を対象として乾期水田灌漑の実態把握を行った。その結果、以下の事項が明らかとなった。①水管理の改善により乾期水田作付面積が過去20年間に約二倍に増加し、現在も増加しつつあること。このため、コメの生産において乾期水田作は現在では雨期水田作と同じ程度の重要性を持つこと。②乾期水田作を実施するために必要な貯水量を推定したところ、現時点では洪水調節容量の増大と乾期灌漑用水の増大は共に可能であること。③2011年の洪水においては最近20年間において雨期一作から雨期乾期作に移行した地域で被害が生じていること。④見かけ上の単位面積当たり乾期水田用水需要の減少に計画外作付が関連しており、この値を水資源計画を策定するには乾期水利用の実態把握が必要であること。
  • マテオ チェリー, 花崎 直太, 小森 大輔, 田中 賢治, 芳村 圭, 木口 雅司, 沖 大幹
    セッションID: 35
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2011年8月から12月にかけて、タイ国を襲ったこれまでの観測史上最大の洪水は、損失額が1兆4,300億バーツと非常に大きな被害をもたらした。さらに、今次の大水害で冠水した工場の大半は日系企業であり、グローバリゼーションが進む今日において、今次の大水害はタイの国内問題にとどまらず、サプライチェーンを通じて日本のみならずグローバルな産業活動を行っている世界全体の問題であることが明らかとなった。 2011年の雨季総降水量は1,439mmで例年の143%と過去に類をみない降水量を記録した。結果として、チャオプラヤ川上流に位置する2大ダム(総貯水量230億m3)にて100億m3貯留したものの、総氾濫水量は約150m3と未曾有の大洪水を記録した。 将来においても今次の洪水と同規模の洪水の発生が十分予測され、タイ政府は次の洪水災害に備え、チャオプラヤ川上流に位置する2大ダムのダム操作を含めた抜本的な治水対策を検討している。さらに、ダム操作を検討するにあたり、雨季の洪水だけでなく乾季の渇水も同一に検討する必要がある。 そこで、自然の水循環と人間の水利用を統合的に扱える全球水資源モデルH08が2大ダムの効果的なダム操作方法を検討するために最適であると考え、H08モデルの対象領域を全球からチャオプラヤ川流域に設定し、パラメータの最適化を行った。その結果、年・月・日スケールで高い再現性を示した。
  • Chuanpongpanich Supatchaya, Tanaka Kenji
    セッションID: 36
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    Chao Phraya is the main river basin of Thailand. The most important of the river is supporting over 90% farm land and rice field of the land area; therefore, flood control and management of the Chao-Phraya river basin become an important issue for Thai water authorities. Thus, the mathematical models have been integrated to prepare flood information for an early flood warning system.This study purposes to provide the flood forecasting information for an early flood warning system. Finally, integrated model can estimate the accurate water level in the main channel.
気候変動・地球環境1:国内(9月28日12:40~13:40)
  • 丸谷 靖幸, 中山 恵介, 仲江川 敏之, 駒井 克昭, 岡田 知也
    セッションID: 37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年,降水量の変化,気温上昇などの気象変化が顕著になっており,その影響が水質環境に影響を及ぼす可能性が示唆されている.この気象変化は,風に対しても生じる可能性があり,例えば強風の発生頻度の変化が考えられる.東京湾は閉鎖性内湾であり成層が発達し易く,鉛直方向の物質輸送が抑制されることで,底層付近に貧酸素水塊が発生し易い状態にある.そこで,本研究ではMRI-AGCM3.1S, MRI-AGCM3.1H, MRI-AGCM3.1LとCMIP3の8つのモデルの将来予測値を利用することで,地球規模での環境変動の影響により,東京湾のDO 濃度回復に大きな効果のある南西風(KEw)にどのような影響を与えるか評価を行うため,将来東京湾で発生する風の発生傾向の変化について検討することを目的とする.その結果,DO 濃度回復に大きな効果のある100 m2/s2以上のKEwが発生する日数の増加はMRI-AGCM3.1Sのみで生じており,その他のモデルでは現在と将来でKEwの発生回数に大きな変化がないことが分かった.
  • 福林 奈緒子, 新田 友子, 沖 大幹, 瀬戸 心太
    セッションID: 38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     気候変動による水害リスクの増大が指摘されている.適応策立案支援のために有効な水害リスクの簡便かつ正確な推定法を開発することが重要である.福林・沖(2012)は,簑島(2010)およびOkazawa et al. (2011)を参考に,日本における内水被害リスク推定手法を開発した.この手法では,外力となる毎日の日降水量を,年最大日降水量から超過確率を求める極値統計の手法を用いて,超過確率相当指数(EPI;値をwで表す)に変換して用いる.ここで,年最大日降水量はガンベル分布に従うとして,分布パラメータは1976~2010年のアメダス雨量データを用いて緯度経度0.1°ごとに推定している.次に1993~2009年における雨量データと水害統計から,内水災害についての条件付き災害発生確率Pc(w)および災害1回当たりの被害額期待値(損失関数;L(w)で表す)を,EPIの関数として求める.上記研究では,Pc(w)およびL(w)は日本全域で同じ関数であるとしているが,実際には地形などの自然条件や人口などの社会条件に強く影響されると考えられる.本研究では,脆弱性の指標を用いることでPc(w)およびL(w)の精度を向上させ,内水被害リスクの地域分布を正確に表現することを目的とする.また,気候変動による内水被害リスク変化の算定を試みた.
  • 常松 展充, 大楽 浩司
    セッションID: 39
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    三つの地域気候モデル(NHRCM、NIED-RAMS、T-WRF)による将来気候予測実験の結果(2081-2100年)と現在気候再現実験結果(1981-2000年)を用いて、日本列島における夏季降水量の将来変化を地形との関係から分析した。その結果、特に山地の南側から西側にかけての地域で降水量の増加が顕著であることが示された。また、降水量の増加幅を標高帯ごとに解析した結果、標高の高い地域のみならず、平野部など標高の低い地域においても降水量の増加が顕著であることが示された。このことは、気候モデルの予測どおり今後さらに地球温暖化が進行した場合、山地における大雨が大きなトリガーとなって起こる河川洪水だけでなく、平野部に多く立地する都市の内水氾濫の発生ポテンシャルも増大することを示唆している。
  • 小槻 峻司, 田中 賢治, 小尻 利治
    セッションID: 40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動が大きな問題となっている現在,その影響を解釈・翻訳し,社会に伝える事は科学の重要な使命である.気候変動が水需給バランスに与える影響評価研究は,特定の流域に対しては多くなされてきたが,日本の全流域を対象としては行われていない.本研究では,稲成長・水文陸面・灌漑・河道流下・ダム操作の5つのモジュールから成る水資源モデルを開発し,日本全域に適用して検証を行った.また,MRI-AGCM20から出力される,気象強制力7要素のデータを用いて解析を行い,気候変動が日本の食糧生産・水需給に与える影響を推計した.得られた主要な成果は以下の通りである.ⅰ) 現在・近未来・世紀末の解析を行った結果,降雪量の多い地域で流況変化が大きく,12月から3月にかけての流量増加や,融雪期である4月から5月の流量低下が予測された.ⅱ)水ストレス変化をCDW指標により計算した結果,世紀末では水資源量は増加するにも関わらず水ストレスが増加する地域も多く,単純に水資源量の増加が水ストレス緩和に帰結しない事を示した.ⅲ)温暖化が日本の米収穫量に与える影響を推計した結果,北日本・東日本では,近未来・世紀末に進むにつれ,収量の増加が見込めることが分かった.ⅳ) 各都道府県における収穫を増加させる策として,耕作の早期化が良いとの知見を得た.耕作の早期化を図る事により,中日本・西日本において,収量増加が見込める事が分かった.特に九州地方では,田植日の変更により,収量の増加とともに水ストレスの減少が予測された.
気候変動・地球環境2:国際(9月28日13:50~15:20)
  • 渡部 哲史, 鼎 信次郎, 瀬戸 心太, 平林 由希子, 沖 大幹
    セッションID: 41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    大気大循環モデル(GCM)を用いた気候変動予測研究により,気候変動の影響評価研究が多くの分野で行われている.水資源量や水災害のマネジメントの分野でも, GCMから得られた予測情報を活用することにより,多くの知見が得られている.これらの研究では、解像度の変換およびGCM出力値と観測値との間の差を補正することが一般的である。補正手法には大きく分けて2つの種類があることがこれまでの研究によって明らかとなっている。2つの手法の最も大きな違いは,GCM出力値が示した現在期間の値と将来の値の差(将来変化量と定義する)と、補正結果の値で求めた将来変化量が一致するか否かである。将来変化量が両者で一致しない手法の場合、各GCMで求めた予測差のGCM間の標準偏差(以降GCM間のバラツキと定義する)が補正の前後で変化する。つまり、補正手法を適用することにより、GCM が示す将来変化量に対してGCM間の予測のバラツキという点で、将来予測の不確実性を増加させる可能性がある。この2つの手法で予測結果のバラツキを比較したところ、両者の間に明らかな差が見られた。この結果により補正手法を適用することによって生じる、将来予測情報のGCM間のバラツキの増減、つまり将来変化量に関するGCM間の不確実性の増減が明らかになった。一方の手法では補正により将来変化量がGCM出力値から求めたものと補正結果から求めたもので一致せず、そのバラツキは補正前に比べて増加することがわかった。今回は個々のGCM出力値の結果に注目せず、全てのGCM出力値を利用するという前提があるため、特定のGCM出力値や特定の地域に限定すると異なる結果となる可能性は大いに有る。それらに対するさらなる調査が今後の課題である。
  • 佐藤 雄亮
    セッションID: 42
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    水災害リスクが気候変動下で将来的にどのように変化するかを定量的に把握する必要がある.そこで本研究では,陸域水循環に対する人為的な寄与を考慮したオフラインシミュレーションを行い,気候変動により将来的に水災害リスクがどのように変化するのか評価する.本発表では特に渇水に着目する.本研究では陸面過程モデルMATSIROに人間活動モジュールを統合したモデルHiGW-MAT2)と河道モデルTRIPを使用する.HiGW-MATには人間活動として作物成長,貯留池操作,環境用水,取水に関する過程が組み込まれている.入力データは再解析ベースのデータを元にGCM出漁にバイアス補正を行って作成した. その結果,ヨーロッパから中東にかけて,北米,南米南部とアマゾン川流域以外の 南米北部,および中央シベリア北部タイミル半島付近では顕著な流量の減少が示された.一方,アフリカ南部,東南アジアおよび豪州,南米南部の一部などでは温暖化の影響により流量が増える結果となった.渇水については中東や米国,チリなど平均流量が減少するような地域の大河川については20年平均で年間100日以上も渇水日が増加しており,リスクの増加が示されているが,温暖化に寄って渇水流量が増加してリスクが緩和される地域もある. 温暖化に起因する流量の変化量とHIの効果による変化量を比較すると,インド北部で同程度となる他は,影響が大きな所でもその効果は温暖化の効果の1割程度の割合となった.大河川流域では貯留池による流量調整や灌漑の効果により渇水リスクは緩和されるが地域も確認できたが,河川流量が減少すると予測される地域においては取水が河川流量をさらに低下させる可能性を示している.
  • 石崎 安洋, 塩竈 秀夫, 江守 正多, 横畠 徳多, 野沢 徹, 高橋 潔, 小倉 知夫, 吉森 正和
    セッションID: 43
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
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    降水量は、温暖化の影響評価や適応策を考える上で最も重要な変数の一つである。この降水量の変化は、温暖化の影響に加えて、エアロゾルの排出量の違いによっても引き起こされる。一般に、温暖化の影響評価や適応策を考える際には幅広い範囲の排出シナリオの結果が必要となるが、大気大循環モデルを用いて様々な排出シナリオで予測を行うには膨大な計算機資源が必要となる。パターンスケーリングは、このような幅広い排出シナリオに基づいた将来予測を行うために非常に有益なツールである。パターンスケーリングにおける重要な仮定は、大気大循環モデルの結果から全球上昇気温で規格化された空間パターン(スケーリングパーン)がRCPs間のエアロゾルの排出量の違いが降水量スケーリングパターンに与える影響を調べた。全球平均気温1度あたりの硫酸塩エアロゾルと炭素性エアロゾルの排出量は、北米東部やヨーロッパ、東アジア、南米、アフリカの中央部で優位に異なっていた。一方、全球平均気温1度あたりの降水量の変化は北米東部、東アジア、ギニア湾周辺でRCPs間に優位な違いがみられるが、ヨーロッパや南米の中央部では見られなかった。エアロゾルに大きな変化があった地域では、ヨーロッパを除いて、基本的に全球平均気温1度あたりの降水量変化のRCPs間の違いと全球平均気温1度あたりの蒸発量変化のRCPs間の違いがつりあっている。また、いずれの地域においても、全球平均気温1度あたりのエアロゾルの排出量の減少率がRCP8.5のほうが小さいため、RCP8.5のほうがRCP2.6よりもエアロゾルの影響が大きい。このため、全球平均気温1度あたりの地表面の上向き短波放射の変化はRCP8.5のほうがRCP2.6と比べ大きく、全球平均気温1度あたりの潜熱、顕熱、長波放射の変化もRCP8.5ではRCP2.6と比べて小さい。海上では主に、全球平均気温1度あたりの地表に到達する日射量の変化のRCPs間の違いは、全球平均気温1度あたりの潜熱の変化のRCPs間の違いによって補償されている。一方、陸上では、潜熱だけでなく顕熱と長波放射の変化の違いも重要である。南米中央部で、エアロゾルの減少率にRCPs間で優位な違いがあるにもかかわらず、降水量の変化に違いが表れなかったのは、大部分が陸上であったためである。


  • 張 勇, 平林 由希子, 劉 巧, 藤田 耕史
    セッションID: 44
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
  • 山崎 剛, 鄭 峻介, 杉本 敦子, 太田 岳史
    セッションID: 45
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    陸面モデルとシベリアのルーチン気象データセット(BMDS ver.5)を用いて,1966-2008年の東シベリアタイガ林の土壌水分長期シミュレーションを行った.土壌初期値の影響は約8年で消えた.結果は年輪同位体比から復元した結果とよく対応した.土壌水分には10年程度の周期が見られ,2006,2007年は過去最高レベルであった.
  • 花崎 直太
    セッションID: 46
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    地球温暖化による水資源への影響を地球規模で予測し、適切な適応策を立てることは重要である。これに関して、これまでに多くの報告書や論文が出版されてきた。しかし、先行研究には3つの課題がある。第1に、先行研究の多くが年単位で水資源の評価をしていることである。第2に、先行研究の多くが気候と人口以外の要素を現状で固定して評価を行っていることである。第3に、先行研究はNakicenovic and Swart (2000)による社会経済・排出シナリオ(以下SRES)およびそれに基づく気候シナリオCMIP3を利用していたことである。現在、SRESに代わる新しいシナリオRCPが整備されつつある。本報告では、これらの問題に対応した新しい全球水ストレス評価の検討結果を報告する。
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