積雪寒冷地にとって融雪水は貴重な水資源である.このため,ダム管理の現場では,毎年,流域の積雪包 蔵水量を推定する.この際,積雪相当水量は標高の増加とともに線形に増加する性質を利用するのが一般的である.しかし,森林内と森林外は積雪の特徴が異なり,積雪相当水量と標高との線形の関係は,森林限界以上の高標高帯のような森林外では成り立たない.
筆者らは,航空レーザ測量を用いて北海道中央部の大雪山系に位置する忠別ダムの森林限界以上の高標高帯(森林外)における積雪分布を計測し,地形との関係を分析した.結果,積雪深と地上開度との間に線形の関係があることを明らかにした.さらに、同ダムで毎年実施されている積雪調査の結果についても、森林外に位置する地点の積雪深及び積雪相当水量は地上開度との間に線形の関係があることを報告している.
本研究では,筆者らが明らかにした森林内と森林外の積雪の特徴を踏まえ、流域を森林内と森林外に分けて,定山渓ダムの積雪分布を推定した.結果,森林内と比較して,森林外においては積雪深及び積雪相当水量が小さくなることを反映した積雪分布を再現することができた.本手法を用いてダム流域の積雪分布を定性的に再現することが可能であると考えられる.しかし,推定した積雪相当水量について,水収支を真値として評価した場合,流域全体を森林と仮定した場合よりも誤差が大きくなった.定性的な精度を高めることが今後の課題である.