気候変動により全球における洪水リスクは増加する ことが懸念されているが、将来の洪水災害リスクは地域ごとに増減傾向が異なるため、その空間分布と時系列変化を適切に評価する必要がある。本研究では、陸面モデルと全球洪水氾濫モデルによる過去再現実験を用いて洪水の確率年数に対する洪水氾濫面積と洪水暴露人口のルックアップテーブルを作成し、バイアス の大きい気候モデルで算定される河川流量からも、洪水暴露人口を算定することができる手法を提案した。20世紀の最後の30年は、平均の年洪水暴露人口は世界人口の0.1%にあたる600万人程度であった。これに対し、21世紀の最後の30年には将来の温暖化シナリオの程度に応じて、3倍から13倍にあたる0.2-0.8億人(世界人口の0.4-1.2%)になることが判明した。また、陸上の世界平均気温が1度昇温すると洪水暴露人口は0.2億人となり、2度で0.3億人、4度では0.6億人となる。洪水暴露人口は年々変動が大きく、同じ世界気温に対するばらつきも大きいことから、気温変化や洪水リスクの増加が顕著になる前に、適切なリスク対策をする必要があることが示唆される。