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ある流域面積に対して起こりうる最大洪水ピーク流量の推定に洪水比流量曲線が用いられる。より正確な洪水比流量曲線を求めるために必要なDAD(面積雨量-面積-降雨継続時間)式の適応性について検討し、この結果に基づいて推定した洪水比流量曲線を用いて将来の確率洪水比流量の変化を調べた。解析対象資料には,岡山県吉井川流域(2110km2)を対象に、現在の雨量データには1988年~2000年の13年間のレーダー・アメダス解析雨量データを、将来のデータには気象庁により開発された地域気候モデルである雲解像領域大気モデルによる2075年~2099年の25年間の出力雨量データを用いた。これまで用いてきた4定数のHorton-Sherman型のDAD式と6定数型のDAD式とを比較した結果,6定数型のDAD式の方が適応性が高いことが確認された。また,現在と将来の確率面積雨量を比較した結果,降雨継続時間が1時間の場合、将来の確率面積雨量は流域面積にかかわらず現在よりも増加することがわかった。4時間の場合、現在と将来の確率面積雨量の大小関係は流域面積によって異なった。20時間の場合、流域面積が約800km2以下であれば,将来の確率面積雨量は現在よりも減少したが、それ以上では現在よりも増加した。6定数型の確率DAD式を用いた200年確率洪水比流量曲線の現在と将来を比較したところ,洪水比流量は、流域面積にかかわらず将来の方が現在を上回った。その増加率は流域面積が大きくなるに従い小さくなるが、80 km2程度以上になると再び増加率が大きくなった。