水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2016年度研究発表会
セッションID: 33
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【水災害・流域水管理】9月17日(土)9:00~10:30
平成27年9月関東・東北豪雨に伴う茨城県常総市における溢水量の推定と大型土嚢の効果
*中村 要介近者 敦彦土屋 十圀
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抄録

本研究では,平成27年度9月関東・東北豪雨を対象とし,水理解析モデルを構築して,茨城県常総市の若宮戸地先における溢水量を推定することとした.水理解析モデルは,河川シミュレーションソフトiRICのNays2DHを利用し,水海道水位観測所から鎌庭水位観測所までの約16.4kmをモデル化した.利用したデータは,国土地理院数値標高モデル5mメッシュとし,低水路の粗度係数を0.020,高水敷を0.025,また,被災直後のオルソ画像より植生を考慮した.水理解析モデルは,洪水痕跡水位と計算水位を比較し,誤差の平均値が0.3m以下,自然堤防の溢水時刻が国土交通省の調査報告資料とほぼ一致しているため,その妥当性を示すことができた.
上記の水理モデルを用い,当時の再現計算を行った結果,若宮戸地先の上流側25.35k(背後地にソーラーパネルが設置されている地点)でピーク102m3/s,下流側24.75kでピーク380m3/s,若宮戸地先全体として481m3/sと推定された.このとき,国土交通省の資料より,常総市の氾濫水量が約3,400万m3と推定されていることから,概ね1/3が若宮戸地先からの溢水によるものと考えられる.
一方で,今次災害では河川管理者によって25.35kに大型土嚢が設置されており,その効果を把握するために,大型土嚢がなかった場合を想定して,再計算を行った.その結果,大型土嚢がない場合には9/10 4:50から溢水が開始され,大型土嚢がある場合(実際)には9/10 5:50から溢水が開始され,その差1時間浸水開始時刻を遅らせる効果があったものと考えられる. 

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