水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2016年度研究発表会
セッションID: P25
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【降水】
SOM及び積雲発生初期の大気場情報に基づいた豪雨の発達リスクに関する研究
*三村 昂大岡田 翔太鈴木 善晴
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抄録

近年,我が国ではゲリラ豪雨とも呼ばれる,局地的豪雨が急激に発達する事例が増加しており,都市河川の氾濫や土砂災害などに伴う人的被害が頻発化する傾向にある.このような局地的に発生する豪雨は時間・空間スケールが極めて小さく,各々が独立した発達システムを持つため,気象モデルを用いた旧来の予測システムでは予測が難しい.このような問題に対し,国土交通省ではXバンドMPレーダ(以下,MPレーダ)を用いた観測網X-RAINを整備し,豪雨の監視体制を強化するなどの対策に力を入れている.しかし,ゲリラ豪雨が発生・発達するメカニズムはまだ十分に明らかにされておらず,その予測には多くの課題が残されている. そこで本研究では,MPレーダからの偏波レーダ情報(レーダ反射因子ZHH,ZVV,反射強度偏波比ZDR,比偏波間位相差KDP,偏波間位相係数ρ HV),及びMSM(メソ数値予報モデル)のGPVデータより算出した大気場指標(CAPE,SSI,K指数,可降水量,相対湿度,バルクリチャードソン数,風の収束及び渦度の)を用いて様々な局地的豪雨を対象に発生・発達構造の解析を行った.また,「積乱雲のタマゴ」の発生・発達可能性を評価するため,自己組織化マップSOMを使用したクラスタ解析を行い,発達事例・非発達事例の特徴の違いについて解析・検討した.  マップを作成した22 パターンの全体的な傾向として,偏波レーダ情報ではZDR,KDP,ZHH,ρHV,大気場指標ではCAPE,K指数,相対湿度を入力データとしたときに判別精度が高かった.ゆえに,これらの大気場情報との間にタマゴの発達・非発達との関連性が強いと言える. また,最も判別精度の高いもので78.8%という判別し度を得ることができ,更なる検討は必要であるものの,判別手法として有効であると考えられる. 今後の課題として,SOM に入力する偏波レーダ情報,大気場指標等のデータの組み合わせを検討することで,「積乱雲のタマゴ」が発達するか否かをより高い精度で判別し,局地的豪雨の発達可能性の定量的評価につなげていくことが必要である.

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© 2016 水文・水資源学会
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