抄録
日本の山岳域において,積雪は「天然のダム」と言われているように,春先の融雪水は貴重な水資源となっており,特に灌漑用水の重要な供給源となっている.温暖化等の気候変動に伴う降雪,積雪量の減少や融雪時期の早期化は,下流域の農業用水の利用に大きな影響を及ぼす可能性がある.そのため,積雪水資源量の空間・時間分布の将来評価が必要とされている.
気候変動リスク情報創生プログラムで提供されている気候モデルには,60km,20km,5kmといった様々な解像度のモデルがある.多くのアンサンブル数を有する60kmGCM出力を有効活用し,水資源量の将来予測における不確実性の幅を定量化することが求められている.2015年に公開されたd4PDFは,多数のアンサンブル(最大100メンバ)を活用することで,気候変動による影響について確度の高い結論を導くことを可能とした.
本研究では,創生プログラムで提供されるd4PDFを活用して,将来の積雪水量及びその不確実性を評価する方法について検討した.
最終的に得たいのは,細かな解像度で評価された年最大積雪水量及びその不確実性の情報である.以下の流れでアプローチする.
・d4PDFの60kmGCM出力値(冬期平均気温,冬期降水量)と20kmまたは5kmの標高データから,年最大積雪水量を推定できる方法を検討する.
・60kmアンサンブルメンバーから得る冬期平均気温,冬期降水量の頻度分布を活用し,年最大積雪水量の頻度分布に変換する方法を検討する.
将来の積雪水量推定におけるd4PDFのアンサンブル情報の活用法を検討した.
今後,さらなる検討を行い,将来における積雪水量の不確実性の幅を定量化する