抄録
直接観測機器を用いた雲内部の雨滴粒径分布の把握は,雲物理と降水特性の理解や,リモートセンシングを用いた降雨量推定精度の向上として重要である.気球搭載型でありCCDカメラを備えたビデオゾンデは航空機観測よりも安全性が高いが,粒径クラスごとの観測個数が1個や2個の場合があり,ビデオゾンデで得られる粒子のサンプル数が粒径分布の推定精度に与える影響が懸念される.本研究は,ビデオゾンデ観測から得られた粒径分布とサンプル数の定量的な評価を行うことを目的とする.まず,乱数を発生させた数値実験より,ビデオゾンデのサンプル数と粒径分布パラメータの推定精度の関係を調査した.さらに,ビデオゾンデで推定された粒径分布から計算されたレーダー反射因子Zとディスドロメータから計算されたZを比較した.ビデオゾンデで4分間に70個以上の雨滴が観測された場合,300回の数値実験のうち64%以上で粒径分布の傾きパラメータを推定できていた.6事例中4事例の実際の粒径分布の推定事例において,ビデオゾンデで推定された粒径分布から計算されたZは,2.9dBZ以下の誤差の範囲内でZを推定できた.