水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2017年度研究発表会
選択された号の論文の112件中1~50を表示しています
I. 口頭発表
【水資源・水環境政策・都市水文】9月19日(火)9:30~11:00
  • ジュリアン ブランジェ, 花崎 直太
    p. 1-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    Launched in 2012 by Potsdam Institute for Climate Impact research, the Inter-Sectoral Impact Model Intercomparison Project (ISI-MIP) aims to establish a long-term, community-driven process of cross-sectoral climate-impact model. The three scenarios provided by ISI-MIP2b were implemented into the H08 model, a global scale water resource model.
    The different general circulation models (GCMs) had significant effects on the outputs of the H08 model such as ET and river discharge. The effects of the RCPs were consistent across the different GCMs and the simulations using RCP6.0 always produced clear increasing (surface runoff, subsurface runoff, discharge, ET) or decreasing (water recharge) trends as well as extrema values. Future research directions include: (1) a region based data analysis to better characterize the effect of different combinations of GCMs and RCPs, (2) a Bayesian change-point analysis to compare change-point models, and (3) the investigation of the targeted 1.5 °C increase on global water resources.
  • 新田 友子, 芳村 圭, 木口 雅司, 鈴木 健太郎, 竹村 俊彦
    p. 2-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    短寿命気候汚染物質(SLCP)は,大気中での寿命が数日から数十年と比較的短く,気候を温暖化する効果を持つ物質である.これらは,大気汚染物質として,健康や農業,生態系への悪影響も合わせ持つ.SLCP削減を通じた地球温暖化緩和策は世界的に注目されている反面,その気候影響は未解明な部分が多く,特に降水量や気温の変化に伴う水資源の変化や洪水・渇水といった水災害への影響まで見積もった研究は未だかつてない.本研究では,全球エアロゾル気候モデルMIROC-SPRINTARSの感度実験の結果を用いて陸面オフライン実験を行い,SLCPのひとつである黒色炭素と,寒冷化の効果を持つ短寿命の大気汚染物質である硫酸塩について,陸域水循環への影響を調べた.その結果,黒色炭素と硫酸塩で流出量と蒸発散への影響は異なることがわかった.さらに,一人当たりの水資源賦存量を用いて高い水ストレス下にある人口の変化について調べ,降水量や気温変化に見られたような排出量の増減に対する線形的な変化は見られなくなることが示された.
  • 花崎 直太, 周 茜
    p. 3-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    2℃目標達成のための一つの技術として、二酸化炭素回収貯留付きバイオ燃料生産技術(以下BECCS)は有力な技術と考えられている。バイオ燃料を大量生産するには広大な農地が必要であるが、灌漑を行って単収を高められれば必要な土地を少なくすることができる。バイオ燃料を大量生産する際の灌漑の持続可能性および効果について、全球水資源モデルH08と単純な土地利用シナリオを利用することで検討した。
  • フジャナザロフ ティムール, Tanaka Kenji, Touge Yoshiya, Tanaka Shigenobu
    p. 4-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    Demand for water resources has been increasing over last decades. Over stress of the water resources availability it is important to define water efficiency (crop to water demand) and water availability for agricultural crops. Available productive area and its water demands will assist for planning efficient water management techniques and investigate appropriate irrigation methods to maximize outcomes of the main and market oriented crops. Therefore knowing crop water requirement is important step to water resources management under climate change scenarios. Current research suggests that river flow is decreasing and traditional irrigation strategies could not cover today's irrigation area. The analysis of water consumption by various types of crops will be important in the future projections. In this research water demand and analysis of the possible water resources distribution in the case study of Zeravshan river basin to achieve positive water management nexus for both countries were analyzed.
  • 田村 恭斗, 吉谷 純一
    p. 5-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    渇水指標は,利水計画の目標レベルや渇水深刻度の評価に使うことが期待される.しかし,水文気象条件が大きく異なる地域,例えば,首都圏とカリフォルニアの過去の渇水事象の深刻度を比較できる同一の尺度はない.この問題意識から,日本と世界各地の目標レベルや深刻度の相互比較を可能にする目的で,PDSIを利根川水系の渇水事例に適用し渇水指標としての有効性を確認したものである.
     PDSIに加えて,貯水率や降水量の平均からの偏差を指標とみなし,利根川水系の渇水事例に適用した.これらの指標は,月単位で計算を行い,取水制限率を渇水被害の深刻度と仮定し,3つの指標と深刻度の相関を分析・比較した.その結果,どれも渇水指標として不適合であるという結果となった.
  • リ ユ, 田中 茂信, 田中 賢治
    p. 6-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    For areas that are urbanized rapidly, the practice of Low Impact Development (LID) has gained an important place in stormwater management and urban planning due to its capability and beneficial effects in restoring the original hydrological cycle. The performances of LID alternatives can vary substantially due to different climate conditions. In this study, the SWMM 5 model was applied to simulate the performances on water balance and flood control of these LID alternatives by using 17 years GSMaP rainfall data (from 2000 to 2016) for Tianjin City. A new evaluation method was proposed in this study including the efficiency index for water balance (Iw).It showed that rain harvest system presents comparative advantage in controlling water balance for high imperious urbanized area, then it is porous pavement, and the last is bio retention. This information about the performances of each LID alternative can help decision makers develop a better storm management strategy
【気候変動・地球環境(1)】9月19日(火)11:10~12:10
  • ネルワラ パンデュカ, 芳村 圭, 平野 淳平, 市野 美夏
    p. 7-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    Reconstruction of historical climate is essential for a better understanding of the future climate. However, only a limited number of observations are available before the 19th century. Historical documents such as personal diary records can be used as an alternative. Even though they have higher temporal resolution respect to other proxies, it is quite challenging to incorporate that information in climate model due to the high uncertainty present in those data. Here we use the Global Spectral Model (GSM) of National Centres for Environmental Prediction (NCEP) as the climate model, along with a local ensemble transformed Kalman filter (LETKF) as a data assimilation technique to investigate the possibility of assimilating different climate variables through idealize experiments. In order to investigate the influence of uncertainties associated with the historical documentations deteriorated JMA data were used. We could show that it is possible to improve the model performance by assimilating various information such as cloud amount, precipitation, and solar radiation.
  • 北野 慈和, 山田 朋人
    p. 8-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    中緯度における気象擾乱がもたらす極端現象の要因の一つとして,大気ブロッキングが挙げられる.ブロッキングは,移動性高気圧よりもスケールの大きな高気圧が高緯度側に張り出し,大気中上層において通常とは逆転した南北ジオポテンシャル高度勾配,温位勾配が一地域に一定期間(多くの研究では5日程度)継続した場合同定される.また,ブロッキングの強度は,ブロッキング高気圧と周囲との気圧差やブロッキング高低気圧間に形成される東風の強さで定義される.本研究は,Rossby (1950)が提唱し,Armi (1989),Riffler (2005)により室内実験・現実大気のデータで検証された偏西風が有する比エネルギーの理論を用い,ブロッキングの流れ場が有する比エネルギーの大小からブロッキングを物理的に定義することを目的とする。ジェット気流が有する比エネルギーの式を現実大気場に適用可能とし、ブロッキングが発生するために必要な同エネルギーの下限値を導き出した。
  • 板谷 知明, 芳村 圭
    p. 9-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    気候変動の影響を研究するために使われている全球気候モデル(General Circulation Model: GCM)は空間解像度が低いため,GCMの出力のダウンスケーリングが行われてきた.特に,領域気候モデル(Regional Climate Model: RCM)による力学的ダウンスケーリングは,物理的基礎があるため,温暖化時の予測に信頼がおける一方,計算コストが大きいという欠点があった.RCMの低コスト化を試みた既往研究はあるが、決定的な手法はまだ存在しない.本研究では,近年開発が進み,画像認識や音声認識で非常に高い精度を持つことが報告され,水文気象学を含む様々な分野での応用も始まっているニューラルネットワーク(Artificial Neural Network: ANN)の新しい技術である深層学習を用いた水文気象場のダウンスケーリング手法を開発することを目的とする.
    本研究では,ある時刻tのGCMの気象場を入力に,同じ時刻tのRCMの気象場を予測させた.予測するRCMの気象場の変数は,6時間毎の地表面2m気温と降水とし,それぞれ別々のネットワークを学習させた.ネットワークの入力変数は,GCMの地表面2m気温または降水に加え,500hPaのジオポテンシャル高度,200hPaと850hPaの風速u,vの6変数を使用した.ネットワークは,入力層,2層の中間層および出力層からなる4層フィードフォワードネットワークとした.
    データは,Suzuki-Parkerら(2014)による,20世紀20年分とRCP4.5における21世紀20年分のマルチGCM・マルチRCMアンサンブルシミュレーションから,GCMはMRI-CGCMを,RCMはRSMを用いた出力結果を使用し,20世紀のデータで自己符号化器を使った事前学習と学習を行い,21世紀のデータで評価を行った.
    結果は,地表面2m気温と降水ともに,RCMの細かい空間変動やピーク値の大きさは表現できていないところもあるものの,おおまかな気象場は予測できていた.しかし,評価データで精度が落ちる場合があった.
    本研究では,深層学習を用いた水文気象場のダウンスケーリングの枠組みを構築した.今後は,学習データに20世紀と21世紀の両方のデータを使用したり,ネットワークの改良を行ったりしてダウンスケーリングにおける深層学習の有効性の検証を続けていく予定である.
  • 小坂田 ゆかり, 中北 英一
    p. 10-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    近年,2014年8月の広島豪雨など梅雨前線に伴う集中豪雨が多発しており,地球温暖化による梅雨豪雨の将来変化予測研究が精力的に行われている.梅雨前線は太平洋高気圧などマクロスケールの現象に大きく影響を受けて形成されるが,集中豪雨自体はメソβスケールで生じている.そのため,地球温暖化による梅雨豪雨の将来変化についても,マクロだけでなくメソβを含めたマルチスケールから梅雨豪雨を捉えることが重要となる.
     そこで本研究では,メソβとマクロの両視点から梅雨豪雨を捉えて将来変化予測を行い,先行研究を含めて一連の手法を整理することを目的とした.メソβスケールからは5kmの高解像度領域気候モデルNHRCM05を用いて,降雨出力から直接,目視により梅雨豪雨事例のみを抽出した.マクロスケールからは,20km解像度の全球気候モデルMRI-AGCM20を用い,20km解像度でも充分に表現可能な大気場の指標に関する将来変化解析を行った.NHRCM05から抽出した梅雨豪雨と対応する大気場パターンの発生頻度解析を行うことにより,メソβの現象をマクロから捉えることを試みた.手法としてはSOMというクラスター分類法を用いた.この時,用いた大気場指標をより正確にクラスター分類し,梅雨豪雨をもたらす特徴的な大気場を明確に抽出するため,SOMの改良を行った.
     メソβの解析の結果,将来気候の7月上旬と8月上旬において,5%有意で梅雨豪雨の発生頻度が増加することが明らかになった.また,地域別で見ても,日本の全ての地域において梅雨豪雨の発生頻度は増加し,現在集中豪雨の発生が少ない日本海側の地域においても集中豪雨の発生が有意に増加するという結果を得た.一方マクロの解析の結果,集中豪雨を多くもたらす特徴的な大気場を抽出することができ,その大気場の発生頻度が将来気候において有意に増加することを示した.また,SOM手法の改良により大気場がより正確に分類されるようになった結果,改良前よりも将来気候における大気場の変化をより明確に捉えることができるようになった.将来有意に増加する大気場は,張り出した太平洋高気圧に沿って水蒸気フラックスが日本海側に吹き込むという特徴をもつ.このことはメソβスケールからの解析で得た日本海側で集中豪雨が増加するという結果と整合的で,メソβの現象をマクロからも捉えることができたと言える.
【気候変動・地球環境(2)】9月19日(火)13:10~14:10
  • 正木 隆大, 田中 賢治, 田中 茂信
    p. 11-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    本研究では,気候変動リスク情報創生プログラムでデータ提供されている気候モデルである,解像度20kmのMRI-AGCM3.2Sの情報を用い,陸面過程モデルSiBUCに入力し,複数の未来のシナリオについて,気候変化がもたらす陸域水文諸量の変化の不確実性を評価した.陸面過程と河川流下過程の要素をもつ分布型水文モデルにより陸域水循環解析を行った.陸面過程にはSiBUCを用い鉛直方向の水収支を求め,河川流下過程Hydro-BEAMにより空間的・時間的変動を追跡した.ここでSiBUCの出力である表層流出と基底流出を引き継ぐことで結合し,Hydro-BEAMにおいてkinematic wave式を用いた河川水量追跡を行った.解析期間は現在気候を1979年~2003年,将来気候を2075年~2099年とし対象領域は日本全域とした.現在気候は1種類,将来気候は4種類用いた.また河川流量解析では3000km2以上の集水面積を持つ18水系および筑後川水系の25年平均月流量を比較した.SiBUCの結果から降雨量については,北日本や近畿と中国地方の日本海側,九州の西側はどの将来シナリオでも,降雨量が増加していることを示したが,逆に関東以西の太平洋側では,減少傾向にあることを示した.関東以西の内陸部では,同じ地域内でもばらつきがあり,増加か減少するかは,シナリオ間で異なることがわかり,増減についての不確実性が大きかった.流量については東日本から北日本にかけての川は12月から4月において現在気候に比べて将来気候は流量の季節変化が小さくなった.この変化は,雪による影響である.現在気候では,冬の間に降り積もった雪が雪解け水として,4月前後に一気に川に流れているためだが,将来気候では積もることなく解ける雪が増加したためである.北海道では将来において気温が上昇しても雪が一気に解けるほどの気温にならないために,冬から春にかけての季節変化の変化が他の雪国の川に比べて小さい.河川流量季節性の現在と将来の変化度合いを,Nash係数を用いて検出した.現在気候で降雪量が多い地域では,変化が大きいことを示しており,一方北海道の標高の高い地域や,関東の利根川流域周辺,九州地方は変化が小さいことを示した.
  • 星野 剛, 山田 朋人
    p. 12-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2016年8月,4つの台風が北海道に相次いで接近・上陸し,全道各地に記録的な大雨をもたらした.これにより,氾濫や橋脚の流出などの大雨による被害が広域的に発生し,北海道だけでなく全国的にも前例のないほどの極めて深刻な水害となった。この記録的豪雨の背景には気候変動の影響が考えられ,気候変動へ適応した新しい水防災対策の構築が喫緊の課題として顕在化した.本研究ではこの新しい水防災対策を構築する上で基礎となる気候変動による流域内の降水量の変化を明らかにすることを目的に,気候予測データベース(d4PDF)に基づいて流域内の降水量を評価した.
     十勝川流域において流域平均3日降水量,流域平均10日降水量を調べたところ,どりらも温暖化により降水量が増大する傾向にあり,気候変動により大雨の高頻度化および激甚化が引き起こされることが示唆された.また,流域平均10日降水量も増大していたことから気候変動を踏まえた水防災対策の構築するに当たっては土壌水分量の考慮の重要性がより一層高まるものと考えられる.
  • 合田 昌弘, 嶋寺 光, 松尾 智仁, 近藤 明
    p. 13-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動による洪水・渇水リスクの増加が懸念されており,適応策を講じるために水文予測研究が重要になりつつある.本研究では,将来の洪水・渇水予測における力学的ダウンスケーリングの効果を評価することを目的とし,淀川流域を対象として全球気候モデル出力と気象モデル,水文モデルを用いたシミュレーションを行った.力学的ダウンスケーリングを行う場合と行わない場合の計算を行い,これらの結果の比較によって力学的ダウンスケーリングの効果を評価した.その結果,力学的ダウンスケーリングは,ローカルスケールの気象の再現に有効であると考えられる一方で,その将来予測に対する影響は大きく,モデルの特性や計算結果の妥当性に注意を払う必要があることが示唆された.
  • 小林 健史, 浅沼 順, 会田 健太郎, 開發 一郎, Davaa Gombo
    p. 14-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    衛星土壌水分観測の地上検証においては,面観測である衛星観測と,点観測である地上観測という異なるスケールの観測を比較するため,土壌水分の空間変動,更にはその時間特性の理解が検証において重要である.本研究は,約100㎞の空間スケールの乾燥地域において,土壌水分の空間分散の時間変動について調べ,湿潤過程においては降水によって空間分散が増加し,乾燥過程においては蒸発散によって減少する,湿潤過程と乾燥過程で非対称な空間分散の時間変化を経ることが明らかになった.更に,その変動量は空間平均土壌水分量によって変化することが明らかとなった.
     本研究対象地域であるモンゴル草原は,年降水量約100mm程度の乾燥地域であり,また深層土壌への降下浸透,地表面流出による水の水平方向の移動もほとんど無いことから,大気との水交換に関係する土壌は表層のみであると考えられる.つまり,本研究の結果は,本対象地域における土壌水分の空間分散は,降水の空間パターンによって増加,形成され,土壌乾燥の進行に伴い,その空間分散は消される,そのような単純化が可能であることを示している.
  • LE VIET MINH, Sugita Michiaki
    p. 15-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    In 2016, Vietnam was hit by the most affected area due to the combination of low flow, rainfall shortage, and saline intrusion. This study calculated standardized drought indices as Standardized Precipitation Index (SPI), Streamflow Drought Index (SDI), and Standardized Precipitation Evapotranspiration Index (SPEI) for different time periods of 1 month, 3 months, 6 months, And 12 months. Afterwards, the results of as historical drought impacts as the influence, The promising results calculated as SDI-6, SPI-6 (January to June) and the number of hours recording salt concentration higher than 1 ppt for the dry season (January to May) were used to carry regression analysis.
  • 徳田 大輔, 金 炯俊, 山崎 大, 沖 大幹
    p. 16-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    地球システムの動態把握には炭素や窒素といった物質循環が重要であり,河川による物質輸送過程は水温の影響下にある.これらの将来予測や人間活動の影響評価といった外挿推計を行う為に,本研究では全球規模で河川水温を計算するオイラー的決定論モデルを開発した.このモデルは1次元の質量,運動量,熱量保存則を解く.前2者は既往の河川流下モデルから,流出水温は既往の陸面過程モデルから計算され,熱フラックスは気象外力データを用いて計算される.又河氷の生成,融解過程については水の過冷却を無視した熱量,質量保存則によって計算される.このモデルの検証は全球の月平均河川水温データによって行われた.その結果,中緯度地域では河川水温が良好に再現される一方で,低緯度地域の氾濫河川については氾濫原での熱収支を,高緯度地域の結氷河川については河氷の存在を考慮することで河川水温の再現性が向上したことが確認された.本モデルは河氷の断面,上下流分布やアイスジャムの影響,地下水と河川水の相互作用等について簡略化した扱いを行っているが,対象とする現象によってはこれらの物理過程を改善する必要がある.
【水災害】9月19日(火)14:50~15:50
  • Chu MinhThu, Sugita Michiaki
    p. 17-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    Gia Lai province which is one of the important areas for coffee production in Vietnam has been frequently affected by droughts. However, very few studies on droughts have been conducted for this province. This study studied drought in Gia Lai province by using 2 drought indices. They are Standardized Precipitation Index (SPI) and Crop Drought Index (CDI). Then the relationship between some drought indices and crop yield residuals (spring paddy rice and coffee) of Gia Lai province for the period of 2000 - 2010 was investigated to determine the appropriate index for monitoring agricultural drought. The results show that CDI is better than SPI as it could capture the drought events and had a strong correlation with crop yield residuals. CDI was proved that its values in the mid stage of crop growth season can be used to detect agricultural drought in the study area.
  • 佐山 敬洋, 寶 馨
    p. 18-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    洪水によって浸水が発生した際に、「いま・どこで・どのような浸水が発生しているか」という情報は、自治体による災害対応や、住民の安全な避難行動にとって基本的な情報である。河川管理者による現行の洪水予測は、降雨から河川流量や水位を予測することに主眼が置かれており、堤防決壊などに伴う洪水氾濫が発生した場合には、どのように浸水が広がるかを推定することは実現できていない。本研究では事前に複数の条件(破堤地点・越流量・粗度係数等)で多数の氾濫シミュレーションを実行し、それらのシミュレーション結果とリアルタイムで入手される浸水情報を統計的に同化することによって、リアルタイムの浸水ハザードマッピングを実現する方法を提案する。
  • 恒藤 博文, 近者 敦彦, 中村 要介, 佐山 敬洋, 三宅 慎太郎
    p. 19-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は兵庫県に位置する中山間地の千種川を対象とし,RRIモデルを用いて河道改修効果を定量的に評価することを目的とした.また,構築したRRIモデルを用いたリアルタイム氾濫予測の実用性についても言及している.
    RRIモデルの構築にあたっては,100mメッシュの空間解像度とし,地盤高は基盤地図情報数値標高モデル5m・10m,土地利用は国土数値情報土地利用細分メッシュデータを用いた.構築したRRIモデルは,千種川の治水基準点において予測精度の高い水文モデルであることを証明した.
    千種川における河道改修効果は,2009年8月洪水を対象とし,RRIモデルの河道モデルを改修前後の断面に変更し,それぞれのシミュレーション結果を比較することで評価した.
    その結果,河道改修によって浸水区域や浸水深は半減し,浸水ボリュームは1/3に低減した.
    一方で,京都大学防災研究所が中心となり,DIASのフィジビリティスタディとしてXRAINと千種川RRIモデルを用いたリアルタイム氾濫予測システムを構築した.今後,精度面や実用面を検証したうえで兵庫県氾濫予測システムにおける次世代のモデルとしてRRIモデルの活用が期待されるところである.
  • 渡部 哲史, 木村 匡臣, 西原 是良, 五名 美江, 乃田 啓吾, 中村 晋一郎
    p. 20-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    豪雨災害が中山間地に与える長期的な影響について理解することは,中山間地域の持続可能性や国土管理のあり方を考慮する上で極めて重要である.本研究では2009年8月に発生した台風9号により兵庫県佐用町で発生した豪雨災害に関する長期的な影響を調査した.本邦において毎年のように発生する豪雨災害への適切な対策を考えるためには,災害が社会にもたらす影響を正確に把握することが不可欠である.豪雨災害の影響としては,人命や資産が洪水や土砂により受ける短期的な影響と,その短期的な被害が災害後も継続的に地域社会へ変化を及ぼす長期的な影響の2つが考えられる.前者に関しては,災害直後は社会的な関心も高いことから,様々な専門家により複数の視点から調査が行われている.一方,後者に関しては,具体的な影響が明確ではなく測定することが難しいことや,時間の経過とともに被災地外から被災地への関心が薄れることもあり,必ずしも十分な調査が行われているとは言えない.中山間地域では少子高齢化,産業の衰退,耕作放棄地の増加等,急速な社会変化が進行しており,これらの変化を踏まえた上で今後の流域管理,治水事業のあり方を模索する必要があるだろう.今回の調査結果から,同一町村内においても長期的な影響の表れ方が地域により異なること,またそれらの地域差には従来から進む過疎化の進行度合いが関連していることが示唆された.今回のヒアリング調査からは,同じ町内でも被害の傾向やその影響は地域により大きく異なるという印象を強く受けた.被害の影響を考慮する際には,町という単位では必ずしも十分に傾向が把握できないことが想定される.中山間地域の今後のあり方を考える上では,その地域の状況をできるだけ適切に地域外の人に伝えることが重要である.しかし、被害の局所化は、被害認識の共有や発信の妨げとなるだろう.近年市町村合併による行政機能の縮小が,こうした傾向に拍車をかける可能性もある.住民参加によるネットワークを用いて災害の情報を共有・発信することは,災害に関する研究が今後取り組むべき重要なテーマの一つであろう.
【降水(1)】9月20日(水)9:35~10:50
  • 佐藤 浩一, 橋本 健, 松田 浩一, 牛尾 知雄
    p. 21-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    近年,局地的豪雨により甚大な被害が発生している.このため豪雨が発生する地域と強度をできるだけ早くかつ精度よく予測し,危険度情報として提供することが求められている.本論文では,大阪大学に設置されているフェーズドアレイ気象レーダ(以下,PAWRデータと表記)の反射強度観測値(Z)を用いてXRAIN(R)と高度,先行時間を考慮した関係把握を行った.次に,関係把握の結果を踏まえZR式による降水量予測手法について提案を行った.対象とした局地的集中豪雨は,上池田地上観測所において,2014年9月10日23時から約3時間継続し,11日0時から1時のピーク時間降水量が115mm/hrとなった雷雨性豪雨とした.その結果は、以下の通りである.
    (1)局地的集中豪雨の早期探知 大雨(洪水)注意報が発令される48分前に50dBz以上の反射強度が発生しており,豪雨発生の兆候が確認できた.(2)反射強度とXRAINの関係把握 降水量がピークとなる5分前における高度3,000mでの反射強度の分布はXRAINの分布と相似形となった.また,高降雨強度範囲におけるPAWRデータとXRAINの相関係数は,全体的に0.8以上となっており,その中で高度2,000~4,000mにおける先行時間が4分の場合が最もXRAINとの相関が高くなる結果となった.(3)予測雨量としての精度検証結果 先行時間を考慮した反射強度Zと降水量Rの関係は反射強度が30dBzにおいて変化点が生じ2つの関係式で表される結果となった.①この関係式を用いて反射強度から算出された降水量、②XRAIN,③高解像度降水ナウキャスト及び④降水短時間予報の予測雨量を比較した.PAWRデータの反射強度とXRAINの関係は立ち上がりについて概ね一致しており,波形の時間変化は概ねXRAINと相似形であった.これに対して高解像度降水ナウキャスト(5~30分後予測値)は立ち上がりが遅れており,降雨ピーク付近では低下傾向にあり過小な予測を与える結果となった.一方で、降水短時間予報(1~6時間後予測値)は全体的に強降雨が捉えられていない傾向が確認された.今回対象とした雷雨性豪雨のような突発性の高い豪雨については、三次元的な降水雲を観測することが出来るPAWRデータの予測が有用であることが分かった.
  • 上嶋 一樹, 山口 弘誠, 中北 英一
    p. 22-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年,ひまわり8号の打ち上げによって静止気象衛星の性能が飛躍的に向上し,時間・空間ともにゲリラ豪雨のような短時間かつ局地的な現象を解像できるようになってきた.加えて,偏波機能を有するKaバンドレーダーが開発され,雲粒子に関する知見がますます増えていくと期待されている.
    そこで,将来,静止気象衛星ひまわり8号やKaバンドレーダーから得られる観測情報に気象モデルをデータ同化することを想定し,本研究ではその第一段階として理想実験の枠組みでアンサンブルデータ同化実験を行い,ゲリラ豪雨の発達初期段階の情報を同化することによって,ゲリラ豪雨の発達期や成熟期に対してどのような影響があるかを明らかにすることを目的とした.
    観測システムシミュレーション実験(OSSE)のもと,実際に夏季沖縄で発生した大気不安定による対流性降水システムを対象として,真の大気場を作成した.同化する疑似観測値を作成するにあたり,ひまわり8号で観測される輝度温度およびKaバンドレーダーで観測される雲水混合比を想定した.同化無し予測,雲頂温度CTTの同化,雲水混合比qcの同化,CTTとqcの両者を同化,の計4つの予測計算を行い,真の大気場との比較を行った.また,データ同化システムとしてCReSS-LETKFを用いた.
     地上降雨開始のタイミングの再現性を最も向上することができたのはCTTのみを同化した実験であり,地上降雨強度の最大値の再現性を最も向上することができたのはCTTとqcを同化した実験であった.
    CTTを同化したことによって雲頂部における温位が減少し上昇流が発生するという関係性を再現でき,またqcを同化したことによって積乱雲のコア部で凝結が発生して温位が上昇し同時に上昇流が発生していることを再現することができた.さらにCTTとqcの両者を同化した実験ではお互いの良い面が反映されて,上述したように地上降雨強度の再現性が高くなることを示した.
    今後の課題として,本研究で明らかにしたことを実際の観測値を用いてデータ同化実験を行い,ゲリラ豪雨予測精度の向上をはかる.特に,放射計算といった効果的な観測演算子の構築が大きな課題である.
  • 鈴木 賢士, 中川 勝広, 金子 有紀
    p. 23-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2014年2月に打ち上げられた二周波降水レーダ(DPR)を搭載した全球降水観測計画(GPM)主衛星は高緯度地方を含む広範囲の降水を観測することができる。GPM/DPRのプロダクトに降水タイプ判別があるが,高緯度地方の降水雲は季節によっては地上から雲頂に至るまで固相のみ(雨滴を含まない)で構成されるため,このような降雪雲の降水タイプ判別はまだ十分ではない。本研究では,降水粒子の液相と固相を映像として区別でき,さらにはそれらの重量も計測できる地上設置型降水粒子撮像・重量計測システム(G-PIMMS)による固体降水の連続直接観測を石川県立大および金沢大において2016年12月から実施した。この観測期間中,2017年1月25日午前5時23分(日本時間)に金沢上空をGPM/DPRが通過した。このとき,地上では降水が観測されており,地上降水粒子直接観測結果とGPM/DPRの降水タイプ判別の比較検証を行った。
  • 新保 友啓, 中北 英一, 佐藤 悠人, 山口 弘誠, 坪木 和久, 篠田 太郎, 大東 忠保
    p. 24-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    昨今の都市域で多く発生している急激に発達する積乱雲が局所的に集中豪雨をもたらし急出水やアンダーパスや地下空間の浸水などが発生し人的被害や経済的な被害をもたらしている.こうした災害を軽減するために積乱雲の早期探知に関する研究が進展し,Xバンドレーダを用いた早期探知システムが開発され実用化され始めている.一方でさらに早期での探知を目指して雲レーダを利用して雨粒ができる前の雲粒の塊を探知する研究が進められている.KaバンドレーダではXバンドレーダよりも20分程度早くファーストエコーを捉えることができることが示されている.これらの研究は発達を早い段階で探知しレーダ反射因子の特徴を捉えたものである.そこで,本研究では積乱雲発達初期の雲の内部の特徴をさらに明らかにすることを目的として積乱雲の早期探知能力の検証やレーダ反射因子による解析に加えて,ドップラー風速を利用して雲粒子の解析を行った.現業用気象レーダで雨粒を捕らえる前に雲レーダにより積乱雲発達の危険性を評価する可能性を見出すものであり,本研究の成果は次世代のゲリラ豪雨早期探知の足がかりとなると期待される.まず早く探知できることを別事例で確認し,雲の発生高度と関わりの深いLCLと初探知高度との比較を通して雲粒子の生成発達とKaバンドレーダで観測される高度の関係性を確認しそのメカニズムを解明した.また,積乱雲の発達に関係する鉛直渦度について解析を進め従来のレーダで確認されていたよりも前段階の雲レーダのみで観測される雲粒が生成する段階でも高い渦度の存在を確認し,危険性予測への可能性を示した.さらにXバンドレーダで観測されていた鉛直渦管が連なった構造である渦管構造についても1事例であるがKaバンド レーダのみで観測されている段階で確認することができた.
  • 堀池 洋祐, 山口 弘誠, 古田 康平, 中北 英一
    p. 25-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年,線状メソ対流系による豪雨災害が日本各地で増加する傾向にある.このような豪雨災害の被害を減少させるためには,数値予報モデルを用いた高精度な予測情報が求められている.モデルを用いた短時間降水予測では,最適な初期値を与えることが予測精度向上に大きく影響する.そのため,データ同化は最適な初期値を与えるための有効な手法の一つである.線状メソ対流系の初期の同化による発達の予測はある程度成果が出始めているが,気象レーダーを用いたデータ同化によるメソ対流系の発生段階の予測に取り組んだ既往研究はほとんどない.本研究では,中国地方4基・近畿地方4基のXRAINから得られるレーダー反射強度ZHHから推定した雨水混合比qr,偏波レーダーから推定した固相降水粒子混合比を同化することでメソ対流系の発生段階における予測精度向上を狙う.
    本研究では,2012年7月15日に京都,亀岡で起きた豪雨事例を対象とした.メソ対流系が発生した原因の一つとして,中下層の低温化の気塊が六甲山上空を通過した際に大気不安定をもたらしたと考え,メソ客観解析の気温データをメソ対流系発生前にあたる23:00-23:45に同化した.その結果,中層が低温化し,対流セルが発生した.この結果を踏まえ,雨滴の蒸発による低温化を期待してXRAINの同化を行った.結果として,六甲山系中層の温位低下と水蒸気混合比の増加が確認できた.しかし,対流不安定になるほどの気温低下は起こらず,強いメソ対流系を発生させるには至らなかった.
    そこで,六甲山でメソ対流系が発生する約5時間前に山口県で降り続いた降水が蒸発しながら東進し,中下層の低温化をもたらしていると考え,同化する時間帯をメソ対流系が発生する時間帯から大幅に早め,同化領域を山口県が含まれるように西側に広く取った.山口県沖から東進する雲をターゲットにして同化を行うことにより,中下層の低温化を引き起こし,メソ対流系初期の降水予測精度を向上させることを目指した.その結果,XRAINの同化によって中下層で低温化が起こり,低温域が六甲山域に到達するタイミングで40メンバー中の7メンバーにおいて対流セルを発生させることに成功した.今後は,雲微物理モデルスキームの改善による予測精度の向上や,アンサンブル予測情報の有効な利用手法の検討について考察していく.
【降水(2)】9月20日(水)11:00~12:15
  • 小川 まり子, 大石 哲, 阿波田 康裕, 鈴木 賢士, 中川 勝広, 山口 弘誠, 中北 英一
    p. 26-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    直接観測機器を用いた雲内部の雨滴粒径分布の把握は,雲物理と降水特性の理解や,リモートセンシングを用いた降雨量推定精度の向上として重要である.気球搭載型でありCCDカメラを備えたビデオゾンデは航空機観測よりも安全性が高いが,粒径クラスごとの観測個数が1個や2個の場合があり,ビデオゾンデで得られる粒子のサンプル数が粒径分布の推定精度に与える影響が懸念される.本研究は,ビデオゾンデ観測から得られた粒径分布とサンプル数の定量的な評価を行うことを目的とする.まず,乱数を発生させた数値実験より,ビデオゾンデのサンプル数と粒径分布パラメータの推定精度の関係を調査した.さらに,ビデオゾンデで推定された粒径分布から計算されたレーダー反射因子Zとディスドロメータから計算されたZを比較した.ビデオゾンデで4分間に70個以上の雨滴が観測された場合,300回の数値実験のうち64%以上で粒径分布の傾きパラメータを推定できていた.6事例中4事例の実際の粒径分布の推定事例において,ビデオゾンデで推定された粒径分布から計算されたZは,2.9dBZ以下の誤差の範囲内でZを推定できた.
  • 土橋 知紘, 山口 弘誠, 中北 英一, 高見 和弥
    p. 27-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    都市気象LESモデルを用いてゲリラ豪雨に寄与する渦管の解析を行った。
    水平渦管から鉛直渦管が生成するため、今回鉛直・水平両方の渦管に焦点を当てて
    解析を行った。
  • 大屋 祐太, 長尾 賢汰, 山田 朋人
    p. 28-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    複数のドップラーレーダと変分原理を用いることによって大気の三次元場の議論が可能になる.本研究では,気象庁によって設置・管理されている2基のCバンドレーダを用い,2014年9月に札幌圏で発生した線状降水帯を対象に降水を伴う気象場を分析した.三次元的な風速場の解明によって線状降水帯などの予測及び対策を可能にし,大規模災害を防ぐことに役立つと考えられる.
     使用した手法は,航空機搭載型のレーダによる観測のため考案され,その後地上レーダに特化した手法である.同手法は3項からなる二次元変分法を用いて計算する。 3項はそれぞれ極座標系から直交座標への内挿を行う項,質量保存項,平滑化項である.
     解析対象は,札幌近郊に住む90万人に避難勧告が出され北海道で初となる特別警報となった2014年9月11日の豪雨である.観測結果を同化し日本付近の大気場を補間した気象庁数値モデルと比較した場合,レーダ解析の結果からはより詳細な風速ベクトルを検知でき,線状降水帯の南東に位置の降水域で大気の水平鉛直循環を発見した.また強い反射強度を示す部分では上昇気流が発生し深い積乱雲の構成に寄与していることも示唆された.
  • ハルジュパ ウエンデイ, 中北 英一, 隅田 康彦, 山口 弘誠
    p. 29-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    To fix paralax errors in Himawari - 8 observation, a parallax equation is calibrated by 16 Humawari - 8 and XRAIN data to detect the generation of Guerilla - heavy rainfall by using real observation result. (Rapid Development Cumulus Area) RDCA (Rapid Development Cumulus Area That concepts cumulus cloud development That area 10 km 2 and within one hour. That 's all, it' s not exactly the same as that of the concept, Rapid Development Cumulus Area (RDCA) concept, Rapid Development Cumulus Area (RDCA) And Radar echoes, The RDCA concept can detect detect signal of rainfall earlier than radar first echo.
  • 谷田貝 亜紀代, 増田 南波, 田中 賢治, 樋口 篤志
    p. 30-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2016年6月に開始したAPHRODITE-2は、極端現象評価や、災害との対応、予報の改善、衛星プロダクトの補正などのため、日界を丁寧にチェックし、補正アルゴリズムを構築し、sub-dailyグリッドデータの作成を経て日界補正を行っている。日本域について(APHRO_JP)日界補正チェックの後Sub-dailyプロダクトを公開予定である。ここにはAPHRO_JP捕捉率補正結果について報告した。なお、アジア地域データは、9月11-14日にワークショップを行い、収集されたデータによりプロダクト改良の後今年度内にプロダクト公開の予定である。
【研究グループ発表】9月20日(水)15:35~16:20
  • 田中 智大, 丸谷 靖幸, 田上 雅治, 綿貫 翔, 池内 寛明
    p. 31-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    水文水資源学若手会(以下若手会)は,主に水文・水資源学会に所属する博士課程学生・20代から30代の若手研究者を中心に構成されている研究グループである.本若手会は2009年から活動を開始しており,多分野との交流および研究面での意見交換や共同研究の議論を積極的に進めている.この活動で得られた研究者間のつながりや自身の研究に対するフィードバックは大きく,水文・水資源研究に関わる現在未参加,未加入の研究者がより魅力を感じられるように本活動を展開することが重要であると考えている.一方で,このような活動を続ける中で,水文・水資源研究をキーワードにして多分野の研究者が集まることに対し,どの程度の関心が寄せられ,どれほどの展開を見込むことができるかを知りたいという想いもあった.若手研究者による多分野交流や研究者間ネットワークの構築を基本的な活動としたうえで,その活動の根本にある本学会・学会誌の意義について現状の認識を調査することは,今後も本学会に携わっていく若手研究者として重要な活動ではないかと考える.これらの背景を踏まえ,本グループ活動では,水文・水資源研究をキーワードにした異分野交流やネットワーク構築を目指し,若手研究者が自由に議論する機会を設けること,およびアンケート調査を通して若手会の基礎である本学会・学会誌の現状を把握することを目的とする.以上の目的を踏まえ,2016年度は,1)総会・研究発表会前に研究アプローチに着目した討論会を開催するとともに,福島県の猪苗代湖に端を発する安積疏水関連施設の現場見学会を実施した.さらに, 2)水関連分野研究コミュニティによるテーマ勉強会の開催し,研究内容や今後の展望に特化して一人40分から60分程度の発表・質疑を行い,参加者の専門分野の研究について詳細まで共有した.また,3)本学会員の学会に対する認識に関するアンケート調査を実施した.以上の活動を通して,研究活動とより密接した形で研究者間ネットワークの構築を図ることができた.また,学会の現状に関するアンケート調査から,分野融合や研究者ネットワークの構築に関して,さらに精力的に,もしくは少し視点を変えた取り組みが必要であることが示唆された.今後は,これまでの活動を踏まえ,若手研究者のネットワーク構築のための活動をさらに展開したいと考えている.
  • 瀬戸 心太
    p. 32-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1997年~2015年に運用された熱帯降雨観測衛星(TRMM)および2014年から運用されている全球降水観測計画(GPM)主衛星には,降水レーダが搭載された.TRMMには一周波レーダ(PR)が搭載されたが,GPM主衛星には二周波レーダ(DPR)が搭載され,降水強度・雨滴粒径分布の推定精度の向上が図られている.衛星観測による降水データ(以下,衛星降水データ)として,マイクロ波放射計を主に利用した降水マップ(GSMaP,IMERGなど)の普及が進んでいるが,衛星搭載降水レーダには,鉛直分布の推定が可能である,また,地表面状態への推定精度の依存性が少ないといった利点があることから,将来的には,衛星搭載降水レーダとマイクロ波放射計による高精度かつ高頻度な降水データが提供することが期待される.
    衛星降水データは,水文・水資源学の多くの分野と密接な関係を持つものであるが,データの精度や利便性の問題などから,十分に活用されているとは言い難いのが現状である.データを利用した研究例の紹介,データ利用のための講習の実施,データマニュアルの拡充などにより,衛星から観測推計された降水データの利用促進を図ることが本研究グループ設立の目的である.
  • 渡部 哲史, 木村 匡臣, 五名 美江, 中村 晋一郎, 乃田 啓吾, 西原 是良
    p. 33-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動による自然環境の変化のみならず人口減少などの社会経済の変化が大きい中山間地域においては,分野融合や行政及び地域住民との協働の上に成り立つ研究が重要である.このような考えから,工学,農学の諸分野を専門とする研究者による研究グループを立ち上げ,水循環をはじめとする環境,防災に関する課題を中心に,日本の中山間地域を取り巻く多様な課題に広く関心を持つと共に,それらに関する行政や地域住民の方々の意見を踏まえた研究を実施してきた.具体的には,1)水害の長期的な影響に関する調査,2)水害常襲地域における土地利用の変化に関する調査,3)ため池に関するワークショップの3点に取り組んだ.本活動の主な狙いは,この活動により研究を大きく進展させることというよりも,関連する学術分野の研究者や行政,民間の関係者とのネットワークを広げることで達成できることは何かという点について検討することであった. 未だ具体的な研究計画としては不十分な面も残るものの,今後の活動の核となるべきキーワードを得られたことは大きな成果であった.なお.従来からの活動成果をまとめ,調査報告原稿を本学会誌に投稿する段階まで至ったことは特筆できる成果であろうと考えている.
【流出・水文統計】9月21日(木)9:00~10:30
  • 岡田 拓巳, 許士 達広
    p. 34-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    水文確率値の算定において、どのような確率モデルが良いか、その算定方法はどの方式が良いか、それを何で評価するかについては、色々な技術が提案されてきたが現在も課題となっている。本研究では水文確率の最適値の算定に最も重要な「何をもって最適とするか」という根本的問題の判断基準について、回帰分析に用いられる予測誤差を用いて、確率分布の適合性と変動性の両方を考えた指標を検討する。
  • 近森 秀高, 吉村 裕也
    p. 35-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    全国15個の各地域における50~60年間の最大面積雨量のDAD関係に基づいて,地域別に最大洪水比流量曲線を推定し,これまで地域最大洪水比流量の推定に用いられてきた洪水比流量曲線と比較した。その結果,北海道南部地域,山陰地域などで推定された洪水比流量曲線が,従来用いられてきた角屋・永井やクリーガーによる洪水比流量曲線を上回る場合が見られ,将来のダムの安全性に関する検討の必要性が示唆された。 全国15個の各地域における50~60年間の最大面積雨量のDAD関係に基づいて,地域別に最大洪水比流量曲線を推定し,これまで地域最大洪水比流量の推定に用いられてきた洪水比流量曲線と比較した。その結果,北海道南部地域,山陰地域などで推定された洪水比流量曲線が,従来用いられてきた角屋・永井やクリーガーによる洪水比流量曲線を上回る場合が見られ,将来のダムの安全性に関する検討の必要性が示唆された。
  • 兎澤 知浩, 山崎 大, 沖 大幹
    p. 36-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、全球陸域モデルの枠組みで降雨流出過程を物理的に表現することを目的としている。降雨流出過程の地球システムに寄与する影響は無視できないが、全球規模でそれを物理的に表現したモデルは少ない。本研究では、流域スケールで降雨流出過程と氾濫現象を一体的に解く特徴を持つRRI(降雨流出氾濫)モデルにFLOW手法と呼ばれるアップスケール手法を適用する。再現実験の精度を落とすことなく計算効率を向上させることで、RRIモデルでは実現できなかった全球規模で斜面プロセスを物理的に解く陸域モデルの開発を試みた。鬼怒川洪水の再現シミュレーションによってモデルの妥当性を検証したところ、低解像度のRRIモデルよりも流量の再現性が良くなり、また計算コストも改善された。低水時の地下水スキームや熱収支を考慮した詳細な陸面プロセスを組み込むことで、本モデルは統合的な全球陸域モデルとなる。本研究はその基盤となる第一歩である。
  • 藤村 和正, 井芹 慶彦, 鼎 信次郎, 岡田 将治, 村上 雅博
    p. 37-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    より高い精度で洪水流量を算定し,河川整備計画や洪水時のダム管理に反映させることを念頭に置き,任意(未知)の洪水に対して適切なp値とk値の特定を試みた.早明浦ダム流域を対象とし、30年間の水文データを1986年~2000年までの校正期間(15年間)と2001年から2015年までの評価期間(15年)に区分し、それぞれ22個の対象洪水を抽出した。そして、校正期間では、p-k値を変動させて多数回の洪水流出解析を行い,Nash係数(NSE)の分布図を作成し,全対象洪水のNash係数分布図を平均化して流域代表値としての貯留関数パラメータ、p-k値を特定した。評価期間では、そのp-k値を用いて長期流出解析を行い、長期ハイドログラフから22個の対象洪水を抽出し、Nash係数により誤差評価を行った。
    本研究により,Nash係数分布図を重ね合わせることにより,流域代表値としての貯留関数パラメータを表すことがでた.そして,その値を長期流出解析に適用したところ,洪水流出に対して概ね良好な再現性を得ることができた。
  • 吉田 武郎, 中野 孝教, 申 基澈, 土原 健雄, 宮津 進, 皆川 裕樹, 久保田 富次郎
    p. 38-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    灌漑が盛んな流域では河川からの取水と河川への再流入が繰り返され,流域の水循環に大きな影響を与える.農業用水の循環の解明のために水素・酸素安定同位体比をトレーサーとした数多くの観測が行われてきたが,水田地帯では農業用水と降水が混合し,同位体分別効果により安定同位体比が時間的に変化するため,流出過程を直接的に評価するには新しい手法の開発が必要になっている.
    本研究では,ストロンチウムの安定同位体の存在比(87Sr/86Sr,以下Sr同位体比)に着目した.Sr同位体比には,その時間変化を無視できること,同位体分別効果が小さいといった特徴を持つ.Sr同位体比の水文分野への適用例は近年数多くなされているが,農業用水など人間活動の影響を強く受ける水環境への適用は少なく,その水文トレーサーとしての可能性は未知である.
    鬼怒川扇状地には五行川に代表される湧水を起源とする河川が多く見られ,地表/地下水の交流現象が盛んな典型的な水田灌漑地域である.本研究では五行川を中心にSr同位体比の水文トレーサーとしての利用可能性を検討した.灌漑期と非灌漑期に,五行川の11kmの区間を対象に,およそ500 m間隔で採水・流量観測を行った.また,56地点の井戸において,不圧の浅層帯水層の地下水位を測定するとともに地下水面付近の水を採水した.
    Sr同位体比-1/Sr図上において,五行川の水は最上流から最下流までほぼ直線的にプロットされ,流下に伴ってSr同位体比と1/Sr が単調に減少した.この直線の延長に,五行川上流を流れる幹線用水と下流端近傍にある湧水がプロットされる.このことから,五行川は幹線用水と扇状地を伏流した地下水が混合して生じた河川で,流下と共に扇状地からSr同位体比が低くSr濃度の高い地下水が付加されたという概念モデルが考えられる.
    灌漑期における排水路の水は地点よって水質が異なるが,近傍の田面水に比べてSr濃度は高く,Sr同位体比は低い傾向を示した.水田部の土壌水も深部ほどSr濃度が高く,Sr同位体比が低い傾向がみられた.これらのことから,田面水が地下を通過する水に低いSr同位体比をもつ土壌や岩石から溶出したSrが付加された可能性が非常に高い.
    以上より,五行川の河川水は二つの流出経路をもつ端成分の混合によって構成され,Sr同位体比によりそれぞれの寄与率を定量化できる可能性がある.
  • 小林 彩佳, 柴田 幸之介, Nguyen-Le Dzung , 山田 朋人
    p. 39-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2016年8月の約2週間に4度の台風による豪雨で,北海道内では年降水量に匹敵する降雨量を記録し,河川氾濫や土砂災害等の甚大な災害が発生した.台風10号の大雨により, 南富良野町では堤防決壊及び河川氾濫が発生した. 本研究では, 南富良野町を含む空知川上流部に位置する金山ダムを対象流域とし,台風10号時の降雨流出特性を述べる.

     河川整備計画や防災対策は主に地上雨量観測値を用いて行われている.雨量計とは,地上に到達した雨滴を直径20cmの転倒マスで計測するものである.北海道の一級水系流域においては114km2に1つある計算となる.しかし,豪雨をもたらす積乱雲の空間スケールが数kmであり,山間部は地形による降雨強度の時空間的なばらつきが大きい特徴を有することを考慮すると,雨量計の存在する位置により総降雨量の観測値にばらつきが生じる. 一方, レーダー雨量計は面的かつ高解像度での観測が可能だが,間接的に降水強度を推定していることなどにより, 精度限界が存在する.これら2つの観測手法を組み合わせた解析雨量が存在する.解析雨量はレーダーで観測した面的なデータを,地上雨量との比較で補正したものである.本研究で用いる降雨データは,国交省C-band,気象庁C-band,地上雨量計(アメダス及び国土交通省保有のもの)及び解析雨量である.

    本研究は,降雨観測位置による不確実性について検討し,それらが対象流域に与える不確実性を定量化,さらには気象モデルによる2日前からの気象予測結果と比較, 検討をした.
【河川・湖沼・地下水】9月21日(木)10:40~12:10
  • 竹島 滉, 芳村 圭
    p. 40-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    土壌が湿潤状態にある時、ピーク流量に寄与するのは洪水到達時間内の降雨となるが、日本の河川においてその時間は概して短く、それに比して計画降雨継続時間が過剰に長い場合が多い。本研究ではこの点について定量的な調査に基づいて問題提起を行う。
    まず、日本の一級水系の流量観測所の上流域について、洪水到達時間を網羅的に調査し、洪水到達時間と地形特性との基本的な関係を検証した。その結果平均洪水到達時間は流路長によっておおよそ表現できることが明らかになった。次に各流域の平均洪水到達時間とその水系の計画降雨継続時間を比較検証し、その結果およそ9割の流域で計画が2倍以上の長さとなっていることが分かった。
  • 吉谷 純一, 武村 宏亮
    p. 41-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    千曲川洪水予測システムによる洪水予測の精度向上策のため,千曲川上流の塩名田観測所流域(流域面積1,179 km2)での過去の洪水予測を再現し,その精度向上を検討した.予測精度は,ピーク流量発生時刻を正しく再現できるパラメータ調整により,相対誤差を約半分にできることを示した.さらに,パラメータ調整が不十分な場合は,フィードバックなしにすることで相対誤差を小さくできることを示した.
  • 仲 浩明, 田中 茂信, 田中 賢治, 佐山 敬洋
    p. 42-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    研究では堤防改修や近年増加している局地的集中豪雨を考慮した浸水想定域図作成にむけて,これまでは流域面積の大きな河川に主に用いられてきたRRIモデルを京都府南丹市園部川に適用し2013年の洪水氾濫を再現行い,解析を行った.桂川中流域の右支川園部川流域(流域面積:127 km2)では,2013年と2014年に台風による大雨で氾濫が起きた.2013年には横田地区で堤防から越水が発生,右岸では堤防の機能を有する盛土が決壊した.これにより,横田地区で浸水被害が発生した.その後,決壊した箇所に堤防が引き堤され,順に下流へと堤防が延伸されたが2014年の台風でも同様の地区において越水が起こり,浸水被害が発生した.RRIモデルは,降雨を入力データとして河川流出から洪水氾濫までを一体的に解析するモデルである.入力地形データの作成に当たり,国土地理院の基盤地図情報数値標高モデル(20mメッシュ)を用いた.またそのデータより落水方向・集水面積データを作成した.土地利用は国土数値情報の土地利用細分メッシュデータより農地と都市域と森林に分類した.河道粗度は0.028m-1/3・s とし,河道幅と深さについては,園部川流域内5地点においてまず河道幅と深さを測定しそれをもとに断面積と流域面積の関係式を作成した.氾濫が生じた横田地区に関しては式と大きく川幅がずれている箇所においてはそのセルごとに河道幅と堤防高さを設定した.入力降雨はレーダー・アメダス解析雨量を用いた.2013年の洪水氾濫に関して,河川における水深と浸水範囲で良好な再現結果を確認した後に,同等のパラメータで新たな堤防や仮想降雨の降水量の入力データを用いて解析を行った.比較的大きな流域の河川に用いられていたRRIモデルを中小河川に適用し,園部川領域において横田地区における氾濫をある程度RRIに再現した.改修された堤防により浸水範囲は大幅に減少するが,長期間の雨が降った2013年台風18号とは違い,短期間に集中豪雨が降ると大規模な氾濫が起きる危険性があることが本研究により明らかとなった.昔と現在の堤防や川幅をもう一度測量し,過大評価している箇所に関しては標高データの誤差を修正することで今後解析の精度を高める.
  • 阪田 義隆, 濱原 能成, 丸井 敦尚
    p. 43-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,水循環を評価する指標あるいはシミュレーションの初期値としての領域スケールでの平均的な透水係数を求める手法として,河川の逓減解析に着目する.降雨後一定期間を経過した後の河川流量の逓減過程は,その上流全体の河川への地下水流出に係わる表層付近の平均的な透水性を反映し,水循環分析に必要な透水性に相当すると考えられる.逓減特性から流域の透水係数を推定する理論解は得られているが,その計算には流域の地形・地層情報も併せて必要であり,どのようなデータセットを構築すれば妥当な推定が可能かの議論は進んでいない.そこで本研究では,多様な地質・地形条件を有する北海道を研究対象とし,自然流況として観測される河川流量データを用いた逓減解析を行う.その逓減特性と地理地盤情報システム(GIS)上で国土数値情報ならびに三次元水文地質モデルとを組み合わせることで,流域スケールの透水係数の推定を行い,その結果について考察した.解析は,北海道の126流域において実施し,それらの透水係数を各流域での表層で最も出現頻度の高い地質毎に集計した.その結果,逓減係数の対数比は,各流域の透水性を反映し,3オーダーの幅で変化し,推定した透水係数は全般に古い時代の地層ほど透水性が低くなる傾向が見られた.その値は完新統(H)および上部更新統(Q3)で大きく,また幅が広い傾向があり,流域を構成する地質の影響を受けやすいと考えられる.一方,中部更新統から漸新統(Q2~N1)は10-6 m/s前後1オーダーで安定していた.また基盤(B)では漸新統に比べ再び透水係数が高くなり,かつ推定値の幅も大きい.古い地層である基盤では風化層が発達し,それらが完新統から上部更新統のような帯水層として流出に寄与していると推測された.
  • 伊藤 祐二, 安藤 潤, 村田 龍星, 宇野 賢志, 籾井 和朗
    p. 44-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    鉛直1次元数値モデルによる感度解析により,池田湖では気象要素の中で大気放射量Raが湖面蒸発量Eの最大の駆動力であることを明らかにした.しかし,この場合のRaは潜在的な駆動力に過ぎず,Eの実際の年変動または長期変化に最も影響を及ぼす気象因子は時間変動が比較的大きい日射量Rsである.Eの年変動に及ぼす最大の気象因子がRsであることは,湖の形状に関わらず少なくとも北緯30~45°の多くの湖に共通すると考えられる.しかし,Eの長期変化については,地域によってはRaまたは気温Taの変化率が大きく,それらの影響が大きくなる可能性もある.Eに及ぼす気象影響度は気象要素の潜在力と時間変動の大きさによって決まる.特に気象変動は取り扱う時間スケールと対象とする地域によって様々であることから,そうした気象変動の時空間特性を踏まえた解析が重要と考える.
  • 吉田 奈津妃, 沖 大幹
    p. 45-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    流域モデルの応答には流域の初期の水文状態が主要な影響を与えると指摘されている.水文シミュレーションには,流域の初期状態の不確実性低減は特に重要であり,土壌水分分布と地下水位深さを的確に与える必要がある.グローバルな水文シミュレーションにおいて初期値を求める初期値化の際には,土壌水分が平衡に達したかどうかの判断には、年間の変化率が敷値以下である格子点が特定の割合以下であるといった判定基準が広く用いられてきた.これに対し,初期値化に要する計算時間を減らす試みがなされ,ハイブリッド法により初期値化の期間を劇的に減らせることが示された.ところで,初期値化の本質は気候条件がわかっているときに,陸面過程の土壌水分の平衡状態がどのように決まっているかという水文学の根源的な問いを含んでいる.気候条件から土壌水分の平衡状態がどのように決まっているのかを整理し,土壌水分の平衡状態を気候条件から直接推定する手法を提案したい.そのために本研究では,気候によって決まる土壌水分および地下水位の平衡状態を判定する新しい定義を提案し,土壌水分に影響を与える地下水位の精度および流出量の検証を行うことを目的とする.そこで,地下水位の動的表現を組み込んだ陸面水文モデル(MAT-GW)による地下水位,流出量を対象とし,観測データと比較し検証を行った.気候外力は雨量,雪量,風速,下向き長波放射,雲量,下向き短波放射,気温,表層大気圧,比湿を与えた.平衡状態を判定する新しい基準としてRCC(relative change of climatology)を考案し,同じような気候(30年間の繰り返し)によって決まる地下水位の平衡状態を気候学的平衡地下水位として定量的に定義した.その結果,地下水位は湿潤な地域では平衡に達しやすく,乾燥地域では平衡状態になるまでに長時間を要することを明示した.また平衡状態となった地下水位は今回検証に用いた観測のある地点のうち9.4%では±20%誤差内の精度であること, 年間平均の流出量は観測と整合することが確かめられた.今後は,地下水位を観測よりも浅く推定している地点と深く推定している地点において,観測地点の標高を考慮した検証を行い,地下水位の推定精度を向上させるために必要なプロセスを特定する予定である.
【水質水文】9月21日(木)13:10~14:25
  • 久保田 富次郎, 濵田 康治, 人見 忠良
    p. 46-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    千葉県北西部に立地する利根川水系の印旛沼は、流域の都市化や農業系排水などの影響により富栄養化が進んでおり、湖沼水質保全特別措置法の指定湖沼の一つとなっている。農林水産省では、2010年より印旛沼周辺の農業水利施設の更新とともに水質保全への寄与が期待される循環灌漑施設の整備を行う印旛沼二期農業水利事業に着手している。本研究では、本事業により整備された循環灌漑施設の稼働により、施設周辺の水質および水文へ与える影響について、現地調査から検討を行った。その結果、循環灌漑導入後には、灌漑ブロック内の全窒素濃度の減少と全リン濃度の増加が見られた。前者は、水田の窒素除去機能の向上による効果、後者は用水の反復利用によるリン負荷の増加の影響が考えられた。
  • 天野 弘基, 中川 啓
    p. 47-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,島原市及び雲仙市の河川42地点において,硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素,コプロスタール(5β(H)-Cholestan-3β-ol),コレスタノール(5α(H)-Cholestan-3β-ol)を用いた汚染評価を実施した.2地点の河川水からは,研究対象地域の地下水から検出されなかった亜硝酸性窒素が検出され,いずれも水道水質基準値0.04 mg L-1を超過していた.硝酸性窒素及び亜硝酸窒素濃度は,18地点で基準値10 mg L-1を超過しており,最大で27.5 mg L-1であった.地下水と同様に,市の北部で高濃度の硝酸性窒素が検出される傾向にあった.コプロスタノールは8地点でオーストラリアにおける飲料水基準(700 ng L-1)を超過した.コプロスタノール濃度を用いて汚染源を特定できる可能性が示唆された.ステロール類の比(5β/(5β+5α))は,18地点で0.5を超えており,糞便性汚染が示された.
  • 中川 啓, 天野 弘基
    p. 48-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    硝酸性窒素汚染が深刻である島原市を対象として,河川水における硝酸性窒素汚染の現状と水質特性を把握するため,一部雲仙市を含む島原市の42地点においてサンプリングを実施した.主要成分によるヘキサダイアグラムおよびトリリニアダイグラムをプロットし,水質特性の空間分布について考察した.その結果,ほとんどがCa-HCO3型およびCa-(NO3+SO4)型に分類され,地下水の水質特性とも調和的であった.Ca-(NO3+SO4)の水質は,地下水水質と同様に,研究対象地北部に分布しており,硝酸性窒素汚染の影響を受けている.そのほか,Na-Cl型,(Na+K)-HCO3型,Ca-Cl型といった特徴的な水質を示す地点もあった.これは,海水の混入や人為的な汚染の影響を受けたものと考えられる.西川の上流においてはCa-HCO3型であるが,他の河川に比べ溶存成分が多く,周辺の人為的活動の影響を受けていると考えられる.
  • 池之上 翼, 河野 葵, 嶋寺 光, 松尾 智仁, 近藤 明
    p. 49-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    放射性セシウムの環境動態を評価するには,降雨流出過程に伴う土壌粒子の輸送を推定する必要がある.福島第一原子力発電所の西30~100 kmに位置する阿武隈川流域における侵食土壌粒子に吸着した放射性セシウムの動態を水質モデルを用いて解析した.横流入荷重の計算は,LQ式を使用する場合と汎用土壌流亡式 (USLE) を使用する場合との2つの場合で行った.結果として,2011年8月10日から2012年5月11日に海へ流出した137Csは,LQ式を用いた場合は4070 GBqであり,USLEを用いた場合は8160 GBqであった.
  • 飯田 俊彰, 岡野 祐太郎, 木村 匡臣, 久保 成隆
    p. 50-
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により,放射性物質が周辺地域に放出された.この対策として,国や自治体による除染工事が実施されているが宅地や農地などに限定され,山林や森林では住居近隣や利用者や作業者が日常的立ち入るところを除いて実施されていない.被災地には中山間地域が多く,小規模な渓流から直接農業用水を取水し灌漑を行っている場合が多いので,出水時などに渓流を経由して農地へ放射性物質が流入することが懸念されている.そこで本研究では,渓流域からの降雨イベント時の放射性セシウムの流出特性を現地観測データに基づいて検討した.また,初期沈着量,自然崩壊による減衰,流域からの流出率などを考慮することで,観測を実施していない地域での,放射性セシウムの流出を推定する方策について検討した.福島県川俣町内のある渓流を対象流域とし,観測点を設置して2016年5月30日~2017年1月7日まで,降雨イベントに伴う出水を中心に渓流水の採水と,流量,雨量の連続観測を行った.分析を行った結果,放射性セシウム濃度と流量,濁度,SSとの間に相関がみられた.また,降雨開始直後に濁質のファーストフラッシュに伴う放射性セシウムのファーストフラッシュが観測された.このことから,降雨直後の出水時の始めには,取水を慎重に行う必要があると考えられる.また,既往の研究によれば,単位SSあたりの放射性セシウム含有量は年々減少しているが,その減少ペースは自然崩壊による減衰ペースを大きく超えており,流域毎に異なっている.このことから,任意の流域の単位SSあたりの放射性セシウム含有量を検討する際には,流域の初期沈着量,自然崩壊による減衰だけではなく,流域に固有の流出率について考慮する必要があると考えられる.これらの要素を適切に推定することが出来れば,観測を行っていない流域でも単位SSあたりの放射性セシウム含有量を推定できる可能性がある.今後はさらに多くの流域で観測を進め,流域の地形・地質等が流出率に対して与える傾向について検討を進めていく必要があると考えられる.
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