抄録
熱帯雨林機能の評価は、世界的にも重要な課題と目されており、数々の数値実験や衛星データを使った広域マッピングなどが世界中でおこなわれているが、水の影響を定量評価するのに、数値モデリングによる解析や、年・月単位降水量・土壌水分等との単なる相関解析だけでは不十分である。現地測定に基づくガス交換の動的変動に関する詳細な情報に基づいて生態系の反応特性を定量化する作業が不可欠であるが、そのような情報はこれまで限られてきた。15年に及ぶ連続した生態系フラックスデータを有し且つ情報を発信している熱帯雨林サイトは世界中でわずか数箇所であるが、本研究ではそのうち1つ、半島マレーシアのパソ森林保護区における長期観測を元に、熱帯雨林における蒸発散の恒常性について報告する。