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近年,大都市圏の市街地では都市化による地表面被覆の人工化,温室効果ガスや人工排熱の急激な増加等により,ヒートアイランド現象が顕著となっており,市民環境が著しく損なわれている.その対応策の一つとして,現象緩和に向けた水と緑のネットワークの創出が望まれる.一方,特に問題が深刻な既成市街地においては水辺や緑の空間が乏しく,土地利用が高度化されているため,水と緑のネットワークを創出するには様々な制約・困難が存在する.本報では,東京の高度に密集した市街地における水と緑のネットワークの再生に向けて,既往研究で言及の少ない法制度面における管理体系を主な視点として,過去に下水道幹線化された36答申河川を対象として再開渠化の考察を試みた.その結果として表面形態からの検討ではなく,現在でも河川法と下水道法との重複管理が行われている河川法による下水道幹線の占用区間を再開渠化するのであれば,法的な制約が非常に少なく復元の可否を検討する際の一つの重要な鍵となることを明らにした.