ここ数年で急速な発展を遂げている深層学習は, ニューラルネットワークを多層に積んだ構造を持つ. 計算機の性能向上により, 深い層, 複雑な構造を設定することが可能となり, それによって, 強い非線形性の表現や複雑な事象への応用に成功した. 従来の機械学習では, 特徴抽出を明示的に人が行うが, 深層学習ではコンピュータが自発的に特徴を学習する. この高い汎化能力から, 多くの課題・問題に応用されている. 水象においては, 様々な物理要素が相互に複雑に絡み合い, これら要素が各条件下で異なる物理特性を持っていることや, カオス性によって, 物理法則に基づく現象のモデル化が困難であるという側面がある. Shen(2018)1) によれば, 「他の分野と比較して, 水文学においては深層学習が広く使用されていない」ことから, 深層学習の導入により, 上記だけでなく, 多くの水文学における課題を解決できる可能性がある. 中根・若槻2) は, 長期の雨量時系列を入力とすることで, ダムへの流入量や河川水位の推定を, 増水期・渇水期ともに連続的に行うことができることを明らかにした. 本研究では, これまでの研究を基に, 四万十川のような大河川においても,長期の雨量時系列を入力とした深層学習モデルが有効であることを示す.
(1)Shen, C. (2018)., A Transdisciplinary Review of Deep Learning Research and Its Relevance for Water Resources Scientists., Water Resources Research, Volume 54, Issue 11, https://doi.org/10.1029/2018WR022643.
(2)中根英昭・若槻祐貴; 環境分野への深層学習応用研究の立ち上げについて,高知工科大学紀要15巻(1),111-120(2018).
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