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近年、整備水準を上回る甚大な洪水被害が日本各地で発生しており、将来においては、その発生頻度がさらに増加することが予想されている。したがって、今後、物理的に起こり得る最大クラスの気象をより正確に予測し、それに対する減災対策を講じることが重要となる。これに対し、洪水災害のような低頻度の現象の将来変化を推定するため、地球温暖化に資するアンサンブル気候予測データベースd4PDFが作成された。d4PDFは、最大100メンバの超多数アンサンブル気候予測実験によって、台風や集中豪雨などの極端気象の将来変化を確率的かつ高精度に評価することが期待されている。しかし、その極値雨量に関する全国的な再現性については、十分に議論されていない。本研究では、日本全国の109個の一級水系を対象として、d4PDFの過去実験から算出した極値雨量を観測データであるレーダーアメダス解析雨量から算出した極値雨量と比較し、再現性を評価した。その結果、d4PDFによる極値雨量の再現性には、地域や水系の流域面積に応じた傾向が見られることが分かった。