p. 64-
昨今,2014年の広島豪雨や平成29年7月九州北部豪雨のような,梅雨期の線状降水帯豪雨による中小規模河川の氾濫や土砂災害が頻発している.防災の観点でいうとリアルタイムに豪雨の発生,継続,またその雨量を予測することが重要である. また,近年では線状降水帯のスケールの現象の予測にもアンサンブル予測が利用できる状況になってきた.本研究では線状降水帯豪雨の発生,継続のリアルタイム予測のためのアンサンブル予測情報の高度利用手法を考える.
線状降水帯豪雨といった予測困難な現象に対するアンサンブル予測では,予測が更新されてもアンサンブル平均が現実に近づかない特徴(パターン1)と,ばらつきが小さくならない特徴(パターン2)が表れると仮説を立てた.線状降水帯豪雨が起こる時間帯や量の予測に向けて,降水に先行する物理量である水蒸気予測情報におけるこれらの特徴の表れ方を調べる.対象事例は平成29年7月九州北部豪雨である.線状降水帯豪雨が長時間停滞した福岡県朝倉市周辺だけでなく,朝倉への水蒸気流入の上流側である,朝倉の西に位置する地点の予測情報も調べた.パターン1は豪雨であった朝倉市周辺で強く見られた.パターン2は朝倉市周辺の他、水蒸気流入の上流側でも見られた.これらの特徴は豪雨の時間帯と対応してみられていた.