流域圏を構成する自然環境・生態系・生物多様性の保全と適応的管理,人間社会の持続的発展の両立のためには,相互に影響しあう様々な現象について統合的に評価し,より良い流域圏の保全を目指していく必要がある.本研究では流域圏を構成する森林において,森林生長モデル,降雨流出モデル,生物多様性評価モデルを用いて森林機能の統合評価を試みた.1)森林管理を行わない,2)生産優先林に対して間伐を行う,3)生産優生の高林齢林を伐採,再植林する,4)環境優先林を広葉樹林化する等の森林施業を組み合わせた複数の森林管理シナリオを想定し,洪水抑制機能,渇水抑制機能,生物多様性機能,及び森林管理コストの評価を行った.特定のシナリオが全ての森林機能で良い評価を示すのでは無く,各シナリオでそれぞれ長短が存在するため,ある特定の機能だけで最適なシナリオを選択する事はできない事が示唆された.