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アマゾンを含む世界中の多くの地域で干ばつの頻度が増大すると予測されており,水ストレス下で植物の光合成が抑制される可能性がある.光合成が抑制されると,地球規模の炭素循環や人間活動に大きな影響を与えうるため,水ストレスと光合成動態の関係がさかんに研究されている.生態系が受ける水ストレスを降水量を用いて表現する従来手法では,降水以外の水量,例えば地下水,土壌水分,表面水および生物圏に蓄えらえた水分などを考慮できないという限界があった.そこで本研究では,これらの水量を含む陸域貯水量TWS(Terrestrial Water Storage)を用いて,水ストレスと陸域生態系の光合成動態の関係性,またその地域特性を,直接観測データに基づいて解明することを目的とする.本研究においては,人工衛星GRACEが観測した地球の重力場を変換した陸域貯水量TWS,さらに光合成動態としてSIF(solar-induced chlorophyll fluorescence)を用い,短波放射データを加え,これらの直接観測に基づいたデータの相関をとった.解析結果として,光合成動態が水によって制限される地域と放射によって制限される地域に大別できることを示した.さらに,水・放射に対する感度の組み合わせは,年間平均光合成量によって分類できることがわかった. 本研究では,降水量を用いて水ストレスを表現する従来手法に代わり,陸域総貯水量TWSを用いて,陸域生態系の水ストレスをより直接的に表現した.