水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2021年度研究発表会
セッションID: OP-10-04
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気候変動・地球環境(3)
d4PDFデータを用いた機械学習によるバイアス補正・ダウンスケーリング手法の開発と気候変動評価
*吉兼 隆生芳村 圭
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抄録

近年,気候変動による自然災害リスクの増加が指摘されている.災害対策を講じる上で地域特性を反映した予測情報が不可欠である.そのためには,地域の気候変動を詳細に予測する必要がある.一般に,気候予測モデルから地域詳細な情報を得るためにダウンスケーリング手法が主に用いられる.ダウンスケーリングには数値モデルを用いた力学的手法と統計的手法があるが,問題も多く指摘されている.力学的ダウンスケーリングでは高解像度にするほど膨大な計算機資源が必要となり,局地的な降水特性を再現可能な解像度で実施することは極めて困難である.統計的手法では地形など局地的な影響を反映できないため,降水頻度などの空間分布の補正が難しい.近年,機械学習を用いた手法が試みられている.機械学習を用いることにより,局所的な影響を反映して高精度でのダウンスケーリングが可能である.一方で,長期的な変化を推定するにはデータのサンプリング期間が短すぎるため,気候変動の特徴を認識するには不十分である.また,手法が複雑になることにより,問題点を特定して修正し,改良することが困難になる.これは手法に対する信頼性の低下につながる.信頼性を高めるためには,簡単な手法を構築して結果を解釈可能にする必要がある.一般に数値モデルは,約5倍の格子間隔以上の気象現象を再現可能である.例えば,格子間隔が20km以下のモデルは,100km四方の領域の現象を再現できるとされている.このことから,詳細な空間分布の特徴はそれぞれ全く異なるものの,気象パターンを通じて,降水分布の観測値とシミュレーション値の間に何らかの関係があることが想定される.本研究では,それらの関係性を機械学習で認識することで,ダウンスケーリングおよびバイアス補正手法を開発した.一方,同等以上の解像度を持つモデルは,同じ特徴を持つ降水系を再現できることが前提となっている.したがって,気象予報モデルが生成する降水分布のシミュレーションと観測値との関係を認識したパターンは,気候モデルなどの別のモデルにも適用できる可能性がある.本研究では,認識されたパターンを,Database for Policy Decision-Making for Future Climate Change (d4PDF)に適用し,本手法の有効性を示した.また領域気候変動の影響を調査した.

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