水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2021年度研究発表会
セッションID: OP-2-04
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気候変動・地球環境(2)
極端気象リスク境界の提案と逸脱する地域・人口の推計
*佐野 太一沖 大幹
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抄録

人為起源の気候変動は、異常気象の発生頻度と規模に影響を与えている。我々は、人類がすでにその下に置かれたことのある極端気象リスクは相対的に適応が容易であるという仮定をおき、将来人類が直面する気象リスクがこれまでに人類がその下に置かれたことがあるものかどうかという点に焦点を当て、将来の極端気象を分類した。本研究では、20年に一度の極端な日最高気温と日降水量に関する人口の2次元ヒストグラムの外縁部を、極端気象リスク境界と定義し、その外部に位置する極端気象リスクの組み合わせはこれまで人類が誰もその下に置かれたことがなく、相対的に適応が困難なリスクと考えた。

RCP8.5-SSP5シナリオのもとでは、今世紀末までに南アジア,アフリカ大陸北部などで世界人口の30%以上が気候リスク境界を逸脱し、これまで人類がその下に置かれたことがないような極端気象リスクに曝されることが予測された。一方で、RCP2.6-SSP1シナリオの下ではその人口は世界全体の約16.3%ととなることが予測された。

さらにニューデリーやムンバイ、東京など世界全体の極端気象リスク境界を逸脱するほか、その他の大都市を含む多くの地域も、地球全体にとっての気候リスク境界内に留まるものの、地域ごとの気候リスク境界を逸脱することがわかった。これは多くの都市において、文化や経済状況の類似性の高い周辺地域のみから知識や経験の移転を行うのみでは適応は容易にはならない可能性を示している。極端気象リスクに対する適応の困難さを分類し、その地理的な偏りや人口を明らかにした本研究は、極端な気象リスクに対する一般市民の認識を洗練させ、より効率的な政策立案につながると考えられる。

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