水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2022年度研究発表会
セッションID: OP-11-03
会議情報

水資源・水環境政策
世界はなぜ脱炭素に向けて舵を切ったのか?気候変動問題認識のパラダイムシフト
*山崎 大北 裕樹木野 佳音坂内 匠野村 周平神戸 育人庄司 悟金子 凌芳村 圭
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

国際社会はパリ協定で気温上昇を産業革命前比2℃未満に抑えると合意し,近年は脱炭素をキーワードとし た目標が次々発表されている.脱炭素の実現は京都議定書に基づいたこれまでの気候変動対策に比べ遥かに野 心的で社会構造の大転換が求められるが,企業が組織する経済団体からも反発ではなく脱炭素に協働するとい う発表が相次いでいる.本研究は,気候科学の知見・各国の経済政策・企業と投資家の取り組み・NGO等の活 動に着目してこれまでの動向を調査し,どうして世界は脱炭素に向けて動き始めたのか?という背景を俯瞰的 視点から明らかにする.文献調査の結果,気候科学の発展が国際合意に影響をしたことに加えて,企業に気候 リスク情報の開示を求めるTCFDといった新たな気候変動対策ツールの整備が脱炭素の動きを後押しているこ とが確認できた.また,民間企業でも気候リスク低減と経済的利益がTCFD等を通して結びつき,「気候変動 対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という当事者意識のパラダイムシフトが起きている ことが示唆された.これらの気候変動対策をサポートする社会情勢の変化を背景として,世界は脱炭素に向け て舵を切ったと考えられる.

著者関連情報
© 2022 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top