水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2022年度研究発表会
セッションID: PP-1-20
会議情報

ポスター発表
降水形態の変化が黒部川のNO3-Nに与える影響評価に関する基礎的検討
*松浦 拓哉手計 太一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本研究の目的は,気候変動による降水形態の変化が黒部川から富山湾へ流出するNO3-Nに与える影響を明らかにすることである.富山湾は全国屈指の好魚場であるが,近年,富山湾の栄養塩が減少傾向である.その要因は気温上昇による降雨形態の変化によって,積雪が減少し,河川に直接流下することにより,地質由来の栄養塩が減少したことが挙げられる.富山県域の積雪深は統計的有意に減少傾向であることがわかっており,将来,河川から富山湾へ流出する栄養塩が減少することが推測される.以上を鑑み,本研究では降水形態の変化が黒部川から富山湾へ流出するNO3-Nに与える影響を検討した. 本研究で使用した降水量,気温,日射量はCMIP6をベースにしたCDFDM手法による日本域バイアス補正気候シナリオデータである5).このデータでは,5つのGCM (MIROC6,MRI-ESM2-0,ACCESS-CM2,IPSL-CM6A-LR,MPI-ESM1-2-HR)について,Historical (1900~2014年),RCP2.6,RCP4.5,RCP8.5シナリオ (2015~2100年)のデータが提供されている.空間分解能は1 km,時間分解能は1日である. 本研究では分布型水循環モデルにNO3-N原単位モデルを結合させることで,数値実験をした.その結果,気候変動により,積雪水量が50 % (223 mm)減少し,消雪日が30日早期化することがわかった.降雪が降雨に変化し,降雨が直接河川に流出することで,冬季の表面流出量は増加し,その結果,NO3-Nが 0.7mg/L低下すると算出された.また,5~6月の融雪時期は表面流出量のピークが15日早期化し,この時期のNO3-Nは1.5 mg/L増加することがわかった.

著者関連情報
© 2022 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top