主催: 水文・水資源学会/日本水文科学会
会議名: 水文・水資源学会/日本水文科学会 2023年度研究発表会
開催地: 長崎
開催日: 2023/09/03 - 2023/09/06
歴史上,旱魃・長雨は人々の生活に多大な影響を与え,数々の古文書記録に記されている.またこれらの記録から災害の周期性を検討した研究も行われている.しかしながら古文書記録は書き手の主観が混じった定性的なデータであることが多く,記述が断続的な期間も多い.またどのような気象現象が旱魃・長雨と判断されたかを客量的に評価する研究は進んでいない. そこで本研究では,岐阜県東濃地方を対象として,定量的な古気候代替データである樹木年輪酸素同位体比を用いて,歴史資料における旱魃や長雨の記録の客観的評価を試みた.
歴史資料として東濃地方の市史・町史等21点を収集した.また樹木年輪酸素同位体比は岐阜県瑞浪市大湫町のスギ(Cryptomeria japonica)から409年分を連続的に測定した.特に樹木年輪酸素同位体比は1年輪を主に6分割することで,数週間単位の時間分解能を得た.
これらのデータを比較した結果,酸素同位体比が旱魃・長雨の影響を反映していたことや,当該年の前数年間と比較した梅雨の降水の過多が,旱魃・長雨の判断要因になっていた可能性が示された.
このように本研究では,樹木年輪酸素同位体比の活用が,歴史資料の非連続性・非客観性を補完する際に有効な手段であることが示唆された.