水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会/日本水文科学会 2023年度研究発表会
セッションID: OP-10-01
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口頭発表(一般セッション)
損失能という降雨損失システムを備えた流出モデルの洪水予測への適用
*早川 信光
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抄録

令和3年7月にダムの「事前放流ガイドライン」が出されたが、現状の洪水予測技術で事前放流が安全確実に実施できるか疑問である。 開発した流出モデルには、損失能と呼ばれる降雨損失システムが内在しており、本論文はこのモデルが洪水予測に適しているかどうかを検証することを目的としている。 検証するため、重大な欠測がなく水収支がとれており流入変動が激しくない 7 ダムを選定した。解析は、ダウンヒルシンプレックス法により、計算流量と実測流量のカイ二乗誤差を最小にする方法とした。 この方法でパラメータを解析した結果、野村ダム、美和ダム、大渡ダムでは、カイ二乗誤差は0.025以下と良い結果を得た。また、このモデルは、流域面積が約300km²であれば適用可能であり、600 km²以上にも適用できる見込みが得られた。 洪水予測では、流域固有のパラメータと予測計算開始時点の土壌の状態を表す損失能初期値を必要とする。 損失能初期値は予測開始の約3週間前から予測開始までの降雨と流量のデータを使用して分析する。この損失能初期値と流域固有のパラメータを用いた洪水予測の結果は良好であった。 損失能という降雨損失システムを内在する本流出モデルは、パラメータが23と多いものの長期に渡って利用できるパラメータであるため、損失能初期値のみを解析すれば簡易予測モデルとして利用できる。

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