主催: 水文・水資源学会/日本水文科学会
会議名: 水文・水資源学会/日本水文科学会 2023年度研究発表会
開催地: 長崎
開催日: 2023/09/03 - 2023/09/06
近年始まった気象制御に関する研究は,豪雨や台風による被害の軽減に大きく貢献することが期待される.ただし気象制御技術が市民に受容され,適切に活用されるためには,工学・理学的な技術開発に加え,倫理的・法的・社会的問題の解決が極めて重要である.著者らは気象制御における法的課題に着目し,KJ法を用いてそれらの課題の洗い出しおよび位置付けの整理を行った.その結果,法的課題は気象制御に対する社会的合意を得るために提供されるべき情報の一部であり,気象介入効果の不確実性や負の結果費用に関する議論の基盤となる情報としても機能すると結論づけられた.また,気象制御には異常気象発生から制御の実施判断までのスピード感や,個人での因果関係の立証が困難といった特徴があることから,既存の法制度の枠組みを超えた制度設計が必要である可能性が示唆された.
以上を踏まえ,著者らは今後,気象制御に必要な制度設計の基盤となる既存の法制度を調査し,候補を絞った上で,それらの既存の法制度と気象制御に必要な制度との相違点を具体的に検討する予定である.