2024 年 3 巻 1 号 p. 16-20
新生児スクリーニング(newborn screening:NBS)はおよそ20疾患を対象に公費負担として行われているが,各自治体によって独自に対象疾患を拡大しているのが実状である.宮崎県では,2020年4月から先天性免疫異常症(inborn errors of immunity:IEI)とライソゾーム病を任意で追加している.今回,われわれは宮崎県で実施したNBSによりB細胞欠損症(B-cell deficiency:BCD)を同定した.症例はkappa-deleting recombination excision circles(KRECs)が低値を示し精査対象となった.当科で行った複数回のCD 19陽性B細胞の測定で,一貫してB細胞割合が2%未満でありBCDの診断に至った.診断後は免疫グロブリン補充療法を行いながら,1歳5か月となる現在まで重篤な感染症を合併することなく経過している.自験例のようにNBSを契機としたBCD診断,さらに免疫グロブリン補充による予防介入の報告は本邦初と考えられる.IEIのうちで重症複合免疫不全症とBCDは,重篤な後遺症をきたす例,さらに診断されることなく死亡する例も存在し,早期の診断と治療介入が特に重要である.IEIをNBSの対象疾患として導入することの費用対効果は,世界中で証明されている.今後,日本でもIEIがNBS公費負担の対象になることが期待される.