目的 : 本邦において2001年以降, X連鎖無ガンマグロブリン血症 (XLA) の臨床的特徴に関するまとまった報告は少なく, 当院におけるXLA患者の臨床的特徴と診断, 治療の実態を後方視的に比較検討した.
方法 : 2023年4月から2024年3月までに当院で診療したXLA患者10例を対象に, 診断時年齢, 家族歴, Ig (Immunoglobulin) 補充療法の開始時期と補充状況, 感染症への罹患状況などを後方視的に調査した.
結果 : 対象患者10例の診断時年齢の中央値は2.80歳で, 家族歴を有する患者は5例であった. Ig補充療法開始時年齢の中央値は2.85歳で, 投与経路として60%がSCIg療法であった. 家族歴を有する患者は家族歴を有しない患者より早期に診断, Ig補充療法が開始された (p=0.047). Ig補充療法後に中耳炎および肺炎の発生率は減少したが, 副鼻腔炎, 結膜炎, 皮膚感染症は依然として認めた. Igの投与量の中央値はIVIg療法群では904.2 mg/kg/月, SCIg療法群では626.35 mg/kg/月であったが, IgG値はそれぞれ862 mg/dL, 1,064 mg/dLであった.
考察 : XLAの診断時年齢は若年齢化していたが, 家族歴を有さない例では診断, 加療が遅れ, 気管支拡張症を呈する例も認めた. SCIg療法はより少量で十分なIgG値を得ることができ, 患者の生活の質の向上に寄与する可能性がある. 今後は拡大新生児スクリーニングの普及により, 家族歴のない無症状例に対しても早期診断が進むことが期待される. さらに大規模な研究による詳細な検討が必要である.
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