日本免疫不全・自己炎症学会雑誌
Online ISSN : 2435-7693
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
巻頭言
総説
  • 加藤 喬, 佐々木 泉, 改正 恒康
    2024 年 3 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2024/02/02
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル 認証あり

     COPA症候群は,間質性肺炎や関節炎などを呈する常染色体顕性(優性)遺伝性の自己炎症性疾患である.細胞内におけるタンパク質の輸送に関与する遺伝子であるCOPA遺伝子のバリアントが疾患の原因であることが2015年に報告されたが,詳しい病態は明らかになっておらず,治療法も確立していない.近年,COPA症候群の遺伝子バリアントを導入した細胞株やモデルマウスを用いた解析により,COPA症候群の病態に細胞内DNAセンサー経路の過剰な活性化が関与していることがわかってきた.筆者らも,本邦で同定された,新規のCOPA遺伝子バリアントを導入したマウスにおいて,患者病態を再現させることができた.ここでは,患者の遺伝子バリアントを導入したモデルマウスを用いた解析を中心に,細胞内DNAセンサーシステムの破綻をきたす自己炎症性疾患の病態について最近の知見を概説する.

  • 清水 正樹
    2024 年 3 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2024/02/02
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル 認証あり

     マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome:MAS)は,リウマチ性疾患に続発する二次性の血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)と定義され,免疫系の異常活性化とサイトカインストームとも呼ばれる炎症性サイトカインの過剰産生状態を基本病態とし,臨床的には,発熱,肝脾腫,血球減少,肝機能障害,高フェリチン血症,凝固障害,NK細胞活性の低下,骨髄での組織球の増殖と血球貪食像を呈する致死的な炎症病態である.MASはほぼすべてのリウマチ性疾患に続発するが,最も頻度が高い原因疾患は全身型若年性特発性関節炎(systemic juvenile idiopathic arthritis:s-JIA)である.s-JIAに続発するMAS病態では,IL-18の過剰産生により二次的に生じたNK細胞異常がMASの準備状態を形成するとともに,IFN-γの誘導とIL-10の産生抑制を介してMAS病態の形成に寄与していることが推測されている.血清IL-18値が異常高値を示しMASの臨床像を呈する先天性免疫異常症であるNLRC4異常症,X-linked inhibitor of apoptosis(XIAP)欠損症,neonatal-onset cytopenia with dyshematopoiesis, autoinflammation, rash and HLH(NOCARH)症候群の発見によってMASにおけるIL-18の重要性はさらに注目されるようになった.一方で,IL-18の過剰産生のみではMASの発症リスクの増加を説明できない可能性も示唆されており,この複雑な炎症病態の更なる病態解明が望まれる.

症例報告
  • 松本 昂之, 西村 豊樹, 山元 綾子, 澤田 浩武, 盛武 浩
    2024 年 3 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2024/02/02
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル 認証あり

     新生児スクリーニング(newborn screening:NBS)はおよそ20疾患を対象に公費負担として行われているが,各自治体によって独自に対象疾患を拡大しているのが実状である.宮崎県では,2020年4月から先天性免疫異常症(inborn errors of immunity:IEI)とライソゾーム病を任意で追加している.今回,われわれは宮崎県で実施したNBSによりB細胞欠損症(B-cell deficiency:BCD)を同定した.症例はkappa-deleting recombination excision circles(KRECs)が低値を示し精査対象となった.当科で行った複数回のCD 19陽性B細胞の測定で,一貫してB細胞割合が2%未満でありBCDの診断に至った.診断後は免疫グロブリン補充療法を行いながら,1歳5か月となる現在まで重篤な感染症を合併することなく経過している.自験例のようにNBSを契機としたBCD診断,さらに免疫グロブリン補充による予防介入の報告は本邦初と考えられる.IEIのうちで重症複合免疫不全症とBCDは,重篤な後遺症をきたす例,さらに診断されることなく死亡する例も存在し,早期の診断と治療介入が特に重要である.IEIをNBSの対象疾患として導入することの費用対効果は,世界中で証明されている.今後,日本でもIEIがNBS公費負担の対象になることが期待される.

編集後記
feedback
Top