抄録
(1→3) -β-D-グルカン (以下, β-D-グルカン) 高値が遷延した食道手術後の深在性真菌症の2例を経験した。どちらも術後に, 発熱, CRP値上昇とともに培養でCandidaが検出され, β-D-グルカン高値により抗真菌薬の投与を開始したが, β-D-グルカン値はその後も上昇した。やがて臨床症状は軽快し抗真菌薬の投与を中止したが, β-D-グルカン高値は遷延した。抗真菌薬中止後, 臨床症状の再燃やβ-D-グルカン値の再上昇はみられなかった。今回経験した2症例においてβ-D-グルカン高値が遷延した原因としては, 真菌感染の継続あるいは偽陽性が考えられたが, そのいずれかは不明であった。しかし, 今回の2例および過去の報告より, 臨床症状の改善とβ-D-グルカン値の明らかな減少傾向がみられる場合, 必ずしもβ-D-グルカンが正常値まで回復していなくても, 抗真菌薬投与の中止は可能と考えられた。