日本集中治療医学会雑誌
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14 巻, 4 号
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今号のハイライト
総説
  • 内野 博之, 牛島 一男, 平林 剛, 石井 脩夫, 芝崎 太, 黒田 泰弘
    2007 年14 巻4 号 p. 527-550
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    集中治療における脳保護の成否は, (1) いかに早期に脳への血流を再開させ, エネルギー代謝を改善することができるか (脳機能回復を念頭に置いた脳蘇生法) と, (2) 血流再開後にいかに脳を保護できるか (脳神経障害から脳を保護する治療法の適用) の2点が大きな柱となるものと思われる。すなわち, 心停止後の頭蓋外臓器の機能を脳に有利になるような方法で管理し, かつ頭蓋内の恒常性を維持することをその意図とすることをその主目的としている。神経集中治療における救命救急処置法の改善および脳保護法の進歩や脳指向型集中管理法が併用され, これまでは回復が難しいと思われてきた神経機能回復に光明を見い出すことができるようになったが, 人の脳神経細胞障害のメカニズムは複雑かつ多要素で, 神経機能回復を目指した治療を開始するまでの時間が極めて短く, 虚血性脳神経細胞障害を完全に抑制できる状況とは言い難い。本稿では, 虚血性神経細胞障害における細胞内カルシウム動態とフリーラジカルの関与を紹介し, 細胞死に深く関わるミトコンドリア機能不全とカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の重要性を概説する。
解説
  • 高内 裕司, 今中 秀光, 竹内 宗之, 西田 朋代, 橘 一也, 中谷 武嗣
    2007 年14 巻4 号 p. 551-554
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    2006年末までに20例の心臓移植を経験したので, その術後急性期管理について報告する。原疾患は19例が拡張型心筋症で, 18例で左心補助人工心臓が装着されていた。ICU入室直後から9例でイソプロテレノールを投与するとともに, 全例で心臓ペーシングを行い心拍数を調節した。全例でドパミンなどのカテコラミンとヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドを投与した。肝腎機能に問題のない症例ではシクロスポリン (またはタクロリムス), ミコフェノール酸モフェチル, メチルプレドニゾロンの三者併用免疫抑制療法を行い, 肝腎機能障害を呈した症例ではムロモナブ-CD3で免疫抑制を導入した。全例バイオクリーンルームに収容し, カテーテル類の早期抜去に努めた。全例順調に回復し, 平均8日でICUを退室した。心臓移植術後の治療は, 除神経心に配慮した呼吸・循環管理と腎機能の保護が肝要となる。
  • 横内 光子
    2007 年14 巻4 号 p. 555-561
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    心理測定尺度とは, 心理現象を測定する方法の1種であり, いわば, 目に見えない心理現象を把握するための「心の物差し」である。心理測定尺度では, いくつかの質問に対する回答を得点化することによって, 心理現象の個人差を把握することが可能となる。尺度の開発では, 心理現象を理論的構成概念として明確に定義し, それを反映する質問項目を設定するために一定の手続きが必要となる。心理現象は, 直接見ることができないだけに, その尺度が正確かつ適切に目的とする心理現象を測定できるか否かが特に重要となる。この尺度の精度や適切性の指標となるのは「信頼性」と「妥当性」である。本稿では, 臨床・研究で心理測定尺度を有効に活用するために必要な基本的知識について, 尺度の作成過程と信頼性・妥当性を中心に概説する。
原著
  • 北脇 丈博, 内野 滋彦, 上岡 栄司, 上原 淳, 間藤 卓
    2007 年14 巻4 号 p. 563-569
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    [目的] 持続腎臓代替療法 (continuous renal replacement therapy, CRRT) の抗凝固薬として, 本邦で多く使用されるメシル酸ナファモスタット (nafamostat mesilate, NM) と, 国際的に一般的なヘパリンとを比較する。[方法] NMを第一選択とした2003年4月~2004年3月 (前期) と, 低用量ヘパリンを第一選択とした2004年4月~2005年3月 (後期) にCRRTを施行した症例とをretrospectiveに比較検討した。[結果] 施行回数は前期50回, 後期101回。フィルタ寿命は前期34.6時間, 後期18.6時間で有意差を認めた。両群とも抗凝固薬に起因する出血性合併症はなく, 輸血の必要量も同程度であった。また実施コストは, 前期が後期に比べ1日当たり5万円以上高額であった。[結論] NMはヘパリンに比べフィルタ寿命が長かったが, 出血性合併症の発生には差を認めず, コストは高かった。
  • 林 浩伸, 川口 昌彦, 井上 聡己, 瓦口 至孝, 多林 伸起, 谷口 繁樹, 平井 勝治, 古家 仁
    2007 年14 巻4 号 p. 571-576
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 胸部大動脈瘤手術後の脳障害は未だ重大な合併症であり, その対策が急務である。今回, 我々は低体温併用選択的脳分離体外循環下での大動脈弓部置換術後の症候性脳障害発生とその関連因子について遡及的に検討した。方法 : 対象は低体温併用選択的脳分離体外循環下で大動脈弓部置換術を施行された25症例。術後の症候性脳障害の有無にて2群に分類し, 症候性脳障害発生と関連する術前・術中・術後因子について検討した。結果 : 術後症候性脳障害は6例 (24%) で発生し, うち4例 (16%) は一過性であった。脳障害群では, 術前よりの虚血性心疾患合併率が有意に高かった。また, 脳障害群では術中の最低鼓膜温が有意に低く, 人工心肺時間, 大動脈遮断時間が有意に長かった。フェンタニル総投与量は脳障害群で有意に多かった。結語 : 大動脈弓部置換術後の症候性脳障害は高率に発生し, その関連因子として術前虚血性心疾患, 最低鼓膜温, 人工心肺時間, 大動脈遮断時間, フェンタニル総投与量が認められた。
  • ―改訂CDCガイドラインを検証する―
    牧野 有里子, 端野 琢哉, 南 和香葉, 池田 嘉一, 佐藤 善一, 山下 智之, 別役 聡士, 藤森 貢
    2007 年14 巻4 号 p. 577-583
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    【目的】我々は, 2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC) によって発行された血管内留置カテーテルに関するCDCガイドラインの改訂版に従って, 当ICUの感染予防策を変更した。中心静脈カテーテル (central venous catheter, CVC) に関する主な変更点は, 定期入れ替えの廃止と挿入時の高度無菌遮断予防である。変更前後でのCVC由来の感染および感染以外の合併症の発生率の差を調査した。【対象と方法】感染予防策変更前1年間, および変更後1年間にICUに入室しCVCを挿入された変更前80人 (A群) と変更後73人 (B群) を後向きに調査した。【結果】患者背景に有意差を認めなかった。平均CVC留置期間はB群で有意な長期化が認められた。CVC感染, CVC挿入に伴う合併症を両群1例ずつ認めた。長期間の留置による抜去時の止血困難や, 血栓形成はなかった。【結語】CDCガイドライン2002に沿ったCVCの定期入れ替えの廃止はCVC感染の発生率を上昇させず, 感染以外の合併症の発生率も変化させない。
  • ―心臓血管外科術後の患者での検討―
    今中 秀光, 竹内 宗之, 井口 直也, 市川 眞紀子, 高山 千尋, 赤枝 慎介, 水野 裕美子, 西田 朋代
    2007 年14 巻4 号 p. 585-592
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    【目的】呼吸不全に対する非侵襲的陽圧換気 (noninvasive positive pressure ventilation, NPPV) の使用が広まっている。心臓血管外科術後の急性呼吸障害に対しNPPVを施行した症例を調査し, NPPVの理由と効果を検討した。【方法】抜管後に急性呼吸障害を生じNPPVを実施した患者53例を, 再挿管を要しなかった成功群と, 再挿管を要した失敗群に分け, 患者背景, 術中情報, NPPV設定, NPPV開始前後の呼吸・循環動態を比較した。【結果】成功群30例, 失敗群23例であった。失敗群では術中出血量および輸血量が多く, 人工呼吸期間が長かった。成功群ではNPPV開始後早期に呼吸数とPaCO2が低下しPaO2が上昇したが, 失敗群では呼吸数とPaCO2の減少は軽度であった。また成功群では, NPPV開始後心拍数が減少し混合静脈血酸素飽和度が上昇したが, 失敗群では変化しなかった。ICU死亡はなく, 失敗群の3例が入院中に死亡した。【結論】心臓血管外科術後に発生した急性呼吸障害にNPPVは有用であった。成功群では早期に呼吸・循環動態が改善した。
症例報告
  • 西山 芳憲, 見上 俊輔
    2007 年14 巻4 号 p. 593-598
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    急性腹症の疑いで入院した58歳男性が心停止をきたし, 蘇生後ICUに入室した。心電図, 心エコーの所見から急性心筋梗塞と考えられた。冠動脈造影で左前下行枝の#7に90%狭窄および血栓像を認め, 血栓吸引およびステント挿入を行った。体血管抵抗の低下と代謝性アシドーシスが遷延したため, 脚気衝心を疑い, ビタミンB1を投与した。投与後12時間で代謝性アシドーシスは改善した。血圧, 体血管抵抗も順調に上昇し, 第5病日に人工呼吸から離脱した。ICU入室直後のビタミンB1血中濃度が19ng・ml -1と低値であったことが後日判明した。問診の結果, ビールを毎日大量に飲む習慣があり, アルコールの過剰摂取からビタミンB1の消耗増加をきたして脚気となったと推測された。
  • 中内 祥文, 谷口 貢, 宮村 有紀子, 林 孝浩, 宮崎 俊一
    2007 年14 巻4 号 p. 599-602
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    患者は72歳, 男性。2002年に食道扁平上皮癌にて胸骨後胃管再建術を施行された。2006年4月上旬より食事摂取時の胸部不快感が出現, 4月下旬より動悸, 呼吸困難が出現したため3日後に当院を受診した。来院時, るいそう著明で低血圧, 洞性頻脈, 低Na血症を認め, 入院8時間後にショック状態となった。その後AST, ALT, LDH, CKが上昇し, 代謝性アシドーシスが進行した。胸部CTにて両側胸水, 心嚢内に少量のガス像を認めた。アシドーシスの補正, 昇圧薬投与を行ったが, 入院より45時間後に死亡した。剖検にて胃管背側潰瘍が心膜に穿通し, 化膿性心外膜炎をきたしていた。また, 腸管は虚血性変化を呈していた。潰瘍は長径4cmで食道癌の再発は認めなかった。再建胃管潰瘍の穿通は致命的な合併症となるため, 食道癌術後の患者で胸痛や胸部違和感を訴える症例では胃管の病変も考慮し, 早期発見し, 治療する必要がある。
  • 田家 諭, 別宮 小由理, 浅賀 健彦, 岩永 康之, 小野 純一郎, 澤登 慶治, 植木 正明, 前川 信博
    2007 年14 巻4 号 p. 603-608
    発行日: 2007/10/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    (1→3) -β-D-グルカン (以下, β-D-グルカン) 高値が遷延した食道手術後の深在性真菌症の2例を経験した。どちらも術後に, 発熱, CRP値上昇とともに培養でCandidaが検出され, β-D-グルカン高値により抗真菌薬の投与を開始したが, β-D-グルカン値はその後も上昇した。やがて臨床症状は軽快し抗真菌薬の投与を中止したが, β-D-グルカン高値は遷延した。抗真菌薬中止後, 臨床症状の再燃やβ-D-グルカン値の再上昇はみられなかった。今回経験した2症例においてβ-D-グルカン高値が遷延した原因としては, 真菌感染の継続あるいは偽陽性が考えられたが, そのいずれかは不明であった。しかし, 今回の2例および過去の報告より, 臨床症状の改善とβ-D-グルカン値の明らかな減少傾向がみられる場合, 必ずしもβ-D-グルカンが正常値まで回復していなくても, 抗真菌薬投与の中止は可能と考えられた。
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