日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
大動脈閉塞バルーンカテーテルにより救命しえた腹部刺創の一例
加古 裕美坪内 宏樹西田 修中村 智之栗山 直英山田 美智原 嘉孝田村 哲也
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 15 巻 2 号 p. 219-222

詳細
抄録

腹部刺創による出血性ショックにて,橈骨動脈圧と大腿動脈圧をモニターしながら大動脈閉塞バルーンカテーテル(intra-aortic balloon occlusion, IABO)を用い,長時間の遮断でも大きな合併症なく救命しえた。症例は32歳,女性。包丁による腹部刺創で,来院時Japan coma scaleIII-200。収縮期血圧50 mmHg台とショック状態だったが,急速大量輸液とIABOによる大動脈遮断により一時的に循環を保てるようになり,緊急手術を行った。下大静脈・門脈といった静脈系の損傷だったが,IABOは有効で,IABOバルーン容量を減らすと血圧が低下したため,外科的止血の進行にあわせて,橈骨動脈圧と大腿動脈圧を見ながらバルーン容量を調節し,完全~部分遮断を行った。遮断は2時間弱に及んだが,術後IABOによる大きな合併症は認めなかった。腹腔内大量出血で止血までが長時間に及ぶ場合,下半身血圧もモニターしバルーン容量を調節することで,より長時間の動脈遮断が可能となる。

著者関連情報
© 2008 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top