抄録
【目的】肺毛細管楔入圧(pulmonary capillary wedge pressure, PCWP)が正常な急性心筋梗塞患者におけるモニターとしての胸郭インピーダンス法の有用性の検討。【方法】36例のPCWPが正常な急性心筋梗塞患者を対象。胸郭内水分含量(thoracic fluid content, TFC)およびPCWPを胸郭インピーダンス法および肺動脈カテーテルを用いてそれぞれ測定した。心係数(cardiac index, CI)を胸郭インピーダンス法および肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法によって同時に測定した。TFCとPCWP,両測定法で得られたCI,TFCとCI,PCWPとCI,の相関を検討した。【結果】TFCはPCWPと正の相関を示した(r=0.45, P=0.0036)。両測定法で得られたCIには正の相関が認められた(r=0.68, P=0.000057, Bland-Altmanプロットでは両者の差の平均±2SDは−0.10±1.26 l·min−1·m−2)。TFCとCIの間には相関は認められなかった。PCWPとCIには負の相関が認められた(胸郭インピーダンス法によるCIでr=−0.49, P=0.0067, 肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法によるCIでr=−0.47, P=0.0096)。【結論】PCWPが正常な急性心筋梗塞患者では胸郭インピーダンス法により肺内水分状態および心拍出量のモニターが可能であり,これらの患者群での臨床上有用なモニターとして,選択肢になる可能性が示された。