抄録
ピーク血清CK値が50,000 IU·l−1を超える横紋筋融解症例の大多数が,急性腎不全を発症するとされる。我々は,低ナトリウム血症とエタノール誤飲をそれぞれ原因とし,ピーク血清CK値がそれぞれ541,300 IU·l−1,621,912 IU·l−1と著しい高値を呈した重症横紋筋融解の2症例を経験した。細胞外液の大量輸液にて尿量の確保に努め,慎重に腎機能をモニターしたが,経過中一度も腎不全を合併することなく軽快しえた。2症例のAcute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアは,それぞれ11点,2点と軽症であり,経過中にsystemic inflammatory response syndrome(SIRS)を合併したのは2症例とも入院初日のみであった。横紋筋融解症における急性腎不全の発症は,筋融解の程度よりもAPACHE IIスコアに示される発症時の重症度や,その後のSIRSの持続に示される全身性炎症反応の期間に依存している可能性が示唆された。