日本集中治療医学会雑誌
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総説
拡張不全による心不全
磯部 光章
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2009 年 16 巻 4 号 p. 439-445

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抄録

心不全は,心臓のポンプ機能の低下とそれに基づく水分の体内貯留が本態である。最近の臨床的観察から,心収縮機能低下を伴わない拡張機能障害によっても心不全が惹起されることが明らかにされてきた。この病態は心不全症例の約40%を占め,予後は収縮不全症例と変わらない。背景因子としては高血圧,糖尿病,肥満が重要である。また,高齢者や女性に多く発症する。現在,救急搬送される心不全患者の多くが「拡張不全による心不全」になりつつある。従来,afterload mismatchとされてきた症例の多くが拡張不全であることが明らかとなったためである。誘因として過剰な水分摂取が多い。急性期治療は収縮不全と大きく変わるところはないが,利尿薬への反応はより速やかである。拡張機能の臨床的評価は,心エコー法や組織ドプラーにより行われる。急性期治療の後に血圧の適正化,心房細動患者ではリズムあるいは心拍数のコントロール,適切な利尿薬の使用,虚血合併例では虚血の解除が行われる。急性期を脱した後の薬物治療に関しては,十分なエビデンスがあるとは言えない。

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© 2009 日本集中治療医学会
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