抄録
細菌のDNAは炎症反応を引き起こす。免疫担当細胞は,細菌DNAに頻回に現れる塩基配列であるCpG motifをToll-like receptor 9(TLR9)を介して認識する。【目的】細菌DNAによるinterleukin-12(IL-12)産生を,マウス肺を用いて検討する。【方法】DNAまたは合成した短塩基鎖(oligodeoxynucleotide, ODN)を肺に注入し,16時間後,肺胞洗浄を行い,IL-12濃度をenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)にて測定した。【結果】細菌DNA[Escherichia coli(E. coli) DNA]を肺に注入すると肺胞洗浄液中のIL-12濃度は増加した。これに対し,ほ乳類のDNA(子牛胸腺DNA)を肺に注入してもIL-12産生はみとめられなかった。一方,CpG motifを含む合成短塩基鎖(CpG ODN)を気管内投与すると,E. coli DNA投与時と同様にIL-12産生増加がみとめられた。CpG motifを含まない合成短塩基鎖投与では,IL-12産生はみとめられなかった。TLR9によるCpG motifの認識を抑制する塩基(suppressive ODN)を投与すると,E. coli DNAまたはCpG ODNによるIL-12産生は抑制された。【結論】肺において細菌DNAがIL-12産生をもたらすこと,これにはTLR9による細菌DNAの認識が関わることが実験的に示唆された。