日本集中治療医学会雑誌
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総説
新型インフルエンザとacute respiratory distress syndrome (ARDS)
今井 由美子大戸 貴代久場 敬司
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2010 年 17 巻 1 号 p. 11-17

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抄録
2009年4月,メキシコと米国で,これまで検出されていなかった新しいタイプのブタ由来のH1N1新型インフルエンザ(2009年H1N1)ウイルスの感染者が報告された。その後,2009年H1N1は瞬く間に全世界に広がり,世界的大流行(パンデミック)を起こしている。これまでのところ,2009年H1N1は弱毒型であるものの,季節性インフルエンザよりは毒性が強いとされている。海外では集中治療を必要とする重症例が多数報告されている。日本においてもその数は海外に比べて明らかに少ないものの,2009年秋以降,患者数の爆発的増加に伴い急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)をはじめとした重症例の報告が相次いでいる。その中には,体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation, ECMO)を必要とするような最重症例も含まれている。このような状況を背景に,2009年H1N1ウイルスの特徴および臨床像,特に国内外の重症例に焦点を当てて述べる。次いで,インフルエンザウイルスがARDSをはじめとした重篤な呼吸不全を引き起こす分子機構に関して,宿主応答の観点から最近の知見を中心に述べる。
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© 2010 日本集中治療医学会
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