抄録
【目的】敗血症性ショックの治療において,バソプレシンの有効性が報告されている。バソプレシンは強力な血管収縮作用を有するため,安全性確立のために重要臓器の血流評価が必要である。我々は,非侵襲的なパルスドプラエコーを用いて肝・腎の血流評価を行った。【方法】ノルエピネフリン抵抗性の敗血症性ショック患者10名に対して,バソプレシン0.016 U·min−1を持続投与し,投与開始前および投与中の肝・腎血流を測定した。測定項目は収縮期最大流速と末梢側の血管抵抗を表すresistive index(RI)とした。【結果】投与前値と比較して投与中は,門脈血流速度で105±48%(平均値±標準偏差),肝動脈の収縮期最大流速で101±24%,肝動脈のRIで98±10%,腎葉間動脈の収縮期最大流速で114±43%,腎葉間動脈のRIで100±5%の変化がみられ,著しい血流速度の低下あるいは血管抵抗の増加は認められなかった。【結論】敗血症性ショック患者におけるバソプレシンの少量持続投与では,血管収縮による肝・腎の著しい血流低下は認められなかった。