日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
敗血症の治療中に低リン血症を呈した神経性食思不振症の2例
島田 忠長織田 成人貞広 智仁仲村 将高安部 隆三奥 怜子篠崎 広一郎平澤 博之
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 17 巻 2 号 p. 197-202

詳細
抄録

神経性食思不振症(anorexia nervosa, AN)は時に致死的となりうる病態であり,その集中治療には特別な配慮が必要である。今回,敗血症の治療経過中に,低リン血症を呈したANの2例を経験した。症例は55歳女性と31歳女性で,両者とも自宅にて意識レベルが低下し,当院に搬送された。来院時ショック状態であり,低血糖補正後も意識レベルの改善がなく,ICUに入室した。両者とも敗血症を呈していたにもかかわらず,血中interleukin-6濃度は高値を示さなかった。また,来院時は高リン血症を示すも,栄養開始後に血清リン値は激減し,体内のリン不足が明らかとなった。経過は良好で,第5病日に一般病棟へ転棟した。ANでは,炎症に対する生体反応の低下が推測され,注意を要する。また,体内のリン不足が必ずしも血清リン値に反映されるとは限らないため,AN患者の栄養管理には投与エネルギーの制限,連日の血清リン値測定,および的確なリンの補充が重要であると考えられた。

著者関連情報
© 2010 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top