日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
アナフィラキシーショックの治療にβ遮断薬が影響を及ぼし心肺停止に陥った1症例
永野 達也伊関 憲仁木 敬夫杉浦 明日美二藤部 丈司川前 金幸
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2010 年 17 巻 2 号 p. 207-210

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抄録

アナフィラキシーショックからの蘇生治療に難渋し心肺停止に至った1症例を経験した。症例は65歳の男性。ハチに刺されショック状態となり,当院救急部に搬送された。7ヵ月前に急性心筋梗塞の既往があり,β遮断薬を内服していた。アナフィラキシーショックに対してエピネフリンの筋注や静注を行ったが治療に反応せず,心静止となった。心肺蘇生とエピネフリンの追加投与により自己心拍が再開し,2ヵ月後に独歩退院した。本症例では心肺停止の原因として,ハチ毒による冠血管攣縮と,β遮断薬の内服がアナフィラキシーに対するエピネフリン治療に影響を及ぼした,という2つの病態が考えられた。β遮断薬内服中の患者がアナフィラキシーショックに至った場合には,通常の2~5倍量のエピネフリン投与が必要であると言われている。

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© 2010 日本集中治療医学会
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