抄録
症例は37歳の女性。急性心筋炎の診断で他院に入院したが循環状態が悪化し,大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping, IABP)を挿入され,当院に搬送された。多臓器不全,ショックの状態で,気管内挿管,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入し,持続的血液濾過透析を開始した。PCPSを4日間続けたが心機能の回復がみられなかったため,第5病日に左心補助人工心臓(left ventricular assist device, LVAD)を装着した。右室の運動も不良で右心補助人工心臓(right ventricular assist device, RVAD)を追加した。その後,心機能は徐々に改善し,術後11日目にLVAD,RVADから離脱,術後14日目にIABPから離脱した。術後24日目に人工呼吸器から離脱し,間歇透析に移行,術後29日目にICUを退室,術後49日目に透析から離脱した。経過中に右脳梗塞を生じたが回復し,術後102日目に軽快退院した。IABPやPCPSでも治療に抵抗性の重症心不全に対し,補助人工心臓は有効な治療手段である。合併症や臓器障害が進行する前にその導入を検討するのが望ましい。