日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
細菌性腸炎を契機に血球貪食症候群を呈した一例
小林 かおり吉田 暁宮島 衛広瀬 保夫野本 優二新國 公司高井 和江
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2011 年 18 巻 1 号 p. 83-87

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抄録
血球貪食症候群は,高サイトカイン血症により組織球が異常に活性化・増殖し,血球貪食像を呈する病態である。ウイルス性感染や悪性腫瘍に合併することが多いが,近年は他の様々な病態に合併することが明らかになってきている。症例は62歳,女性。発熱,下痢,嘔吐を主訴に受診し,来院時はショック状態であった。入院後も水様便を繰り返し,播種性血管内凝固症候群,急性腎不全,横紋筋融解症などに陥った。フェリチンが異常高値であり,骨髄生検で血球貪食像を認めたため,血球貪食症候群と診断した。ステロイド投与にて速やかに全身状態は改善した。後に便培養からAeromonas hydrophilaBacillus cereusStaphyrococcus aureusが同定された。本症例では,細菌性腸炎の経過としては典型的ではなかった。フェリチン異常高値が血球貪食症候群と診断する端緒となった。細菌感染症においても,適切な全身管理・抗菌薬投与にかかわらず,状態の改善がみられない場合や汎血球減少を認めた場合では,血球貪食症候群も鑑別診断の候補として考慮する必要がある。
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© 2011 日本集中治療医学会
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