抄録
血球貪食症候群は,高サイトカイン血症により組織球が異常に活性化・増殖し,血球貪食像を呈する病態である。ウイルス性感染や悪性腫瘍に合併することが多いが,近年は他の様々な病態に合併することが明らかになってきている。症例は62歳,女性。発熱,下痢,嘔吐を主訴に受診し,来院時はショック状態であった。入院後も水様便を繰り返し,播種性血管内凝固症候群,急性腎不全,横紋筋融解症などに陥った。フェリチンが異常高値であり,骨髄生検で血球貪食像を認めたため,血球貪食症候群と診断した。ステロイド投与にて速やかに全身状態は改善した。後に便培養からAeromonas hydrophilaとBacillus cereus,Staphyrococcus aureusが同定された。本症例では,細菌性腸炎の経過としては典型的ではなかった。フェリチン異常高値が血球貪食症候群と診断する端緒となった。細菌感染症においても,適切な全身管理・抗菌薬投与にかかわらず,状態の改善がみられない場合や汎血球減少を認めた場合では,血球貪食症候群も鑑別診断の候補として考慮する必要がある。