日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
三環系抗うつ薬の大量服用後発症した急性呼吸促迫症候群の1例
伊藤 敏孝武居 哲洋
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2011 年 18 巻 2 号 p. 221-225

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抄録

【はじめに】三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressant, TCA)大量服用による急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)の1例を経験したので報告する。【症例】34歳,女性。クロミプラミン3.5 g(70 mg/kg)を服用から約4時間後に搬送された。意識レベル以外,バイタルおよび一般検査結果に異常は認めなかった。服用から11時間後に意識は回復したが,SpO2 94%と低下した。服用から20時間後,突然血圧とSpO2の低下を認めた。集中治療室に入室した。入室時,呼吸循環不全の状態であった。CRP高値のため,ARDSは誤嚥が増悪因子の一つと考え抗菌薬を投与し,炎症所見は改善したが,呼吸状態は改善しなかった。第12病日からメチルプレドニゾロン500 mgのパルス療法を3日間施行した結果,呼吸状態は改善し,第14病日に抜管した。第22病日,軽快退院した。【考察】TCAによるARDSの報告は海外では散見される。TCAによる肺傷害の動物実験での報告もある。【まとめ】TCA大量服用時,急性呼吸不全の発症に留意する必要があると考えた。

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