抄録
【目的】高齢者における開腹手術では術後に高率に譫妄が生じる。本研究では周術期理学療法が譫妄抑止に対して有効か検討した。【方法】対象は,2002年から2009年までに待機的に上部開腹手術を施行した338例とし,2004年より理学療法が介入した202例を実施群,介入前の136例を非実施群とした。検討項目は譫妄発症率,発症日,有病期間とした。【結果】術後譫妄発症率は実施群16例(7.9%),非実施群35例(25.7%)であり,実施群において有意に減少した。譫妄発症日は実施群で術後1.5±1.1日,非実施群で術後2.5±1.7日と非実施群で有意に遅く,有病期間は実施群1.1±0.4日,非実施群2.1±1.5日と非実施群で有意に遷延した。多重ロジスティック回帰分析では,譫妄発症に影響した因子は周術期理学療法〔odds ratio(OR)0.20,95% confidence interval(CI)0.10~0.39,P<0.001〕,年齢(OR 1.09,95%CI 1.05~1.14,P<0.001),脳血管障害の既往(OR 3.52,95%CI 1.43~8.70,P=0.006)であった。【結論】周術期理学療法は譫妄の発症率を減少させ,また遷延化を予防する効果があると示唆された。