抄録
症例は50歳代,女性。歯科治療後の顔面浮腫にて当院救急外来を受診した。当初,薬剤アレルギーを疑いそれに準じた治療を行ったが,治療効果は認めなかった。問診による既往歴,家族歴からhereditary angioedema(HAE)を疑い,compliment component 4(C4)濃度,C1-esterase inhibitor(C1-inh)濃度・活性を測定し,HAE-type I の確定診断を得た。入院中にトラネキサム酸の投与と退院後にダナゾールによる長期予防対策を行い,その後,約1年間の外来フォローを行ったが重篤発作を認めていない。更に,同一家系内での死亡事例の存在が判明したため,【症例2】として調査した。本邦においても,欧米地域で実施されているHAEの疫学調査やHAEに関する診断・治療・予防情報のフリーアクセスシステムの整備,加えて急性発作時にC1-inh補充製剤の緊急投与を可能とする供給体制の早期構築と運用が必要である。