抄録
症例は59歳,女性。左肺腺癌に対して胸腔鏡下左肺下葉切除術を受けた。手術終了2時間後に血圧低下を認め,腹部造影CTでの脾臓からの造影薬の血管外漏出像により,脾破裂に伴う出血性ショックと診断し,緊急で経カテーテル的動脈塞栓術を施行した。塞栓術後の血管造影で動脈相での血管外漏出像は消失したが,門脈相では血管外漏出像を認めていたため,緊急で脾臓摘出術を施行した。脾臓には,病理学的にうっ血所見は認めるものの動脈瘤や腫瘍の転移を認めなかった。胸部外科術後に脾破裂を生じた症例は過去に2例報告されており,いずれも左開胸による肺葉切除術後であった。いずれも脾破裂の原因や機序は不明である。胸部外科術後であっても,出血性ショックをきたした場合は,腹腔内出血を疑う必要があると思われる。