2013 年 20 巻 1 号 p. 118-123
診療報酬制度において医療サービスが適正に評価されることは,効率的で質の高いサービスを継続的に提供するために不可欠である。そこで,日本集中治療医学会社会保険対策委員会では,既存データを用いて集中治療領域の収入と原価を比較し,集中治療領域の診療報酬が適正か否かを検討した。また,施設・患者要因の視点を考慮した解析も実施した。その結果,ICUは基本的に原価割れした状態であり,当学会認定研修施設,入院中死亡症例や血液・造血器・免疫臓器疾患のmajor diagnostic category(MDC)13,小児疾患のMDC15,敗血症をはじめとしたその他の疾患のMDC18の症例で,赤字額が特に大きくなる傾向があった。高額な医療資源が投入されるICUにおいて,適正な診療報酬体系が構築されていない場合,重症患者をはじめとした社会全体への影響度は大きい。適正な診療報酬体系の構築に向け,当学会も主体的かつ適切に行動する責務がある。